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なんで、MATCHAに出資してくれたんですか? - レオス・キャピタルワークス 藤野英人さん

レオス・キャピタルワークスの藤野英人さんと初めてお会いしたのは、北海道の帯広です。2018年2月。野村総研主催のイベントでした。藤野さんの名前は、学生時代から知っていていました。200名以上が参加するプログラムだったので、名刺交換で終わりかなと思っていた所、チャンスが訪れました。

1次会から2次会会場への移動がタクシーだったんですね。スノーピークの山井さんと藤野さんと帯広信金の三品さんがタクシーに乗ろうとしているのを見て、これに乗れたら何か起きるのではとお思い、後ろからつけていき、腹に力を入れて、同席させてもらいました。

タクシーで藤野さんが「ベンチャーから、上場企業、ロケットにまで投資します。話はいつでも聞きますよ。」という話をしていて、一気に藤野さんが近くに感じました。勢いでエレベーターピッチならぬ、タクシーピッチをしました。帯広から戻った翌週に1時間ほどお時間をいただき、その数カ月後に出資いただきました。

今回は株主インタビューの内容の他、藤野さんに今考えていること、藤野さんにとって「言葉」とはなにか?について聞かせてもらいました。


本業は育てること

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ー 藤野さん、簡単に自己紹介をお願いします!

藤野英人と申します。本業は、資産運用業です。自分の本業は育てることだと思っています。投資というのは、ある面で会社や社会を育てていることとも言えます。

MATCHAのような未上場の会社に対しても個人的に応援しています。出資をして、のちのリターンを得ること以上に、育てることを意識しています。かなり時間を割いているのが、大学での授業です。長年、明治大学で授業を持ち、最近では早稲田大学でも教えることになりました。

余談ですが、最近はまっているのが家庭菜園です。これこそ、育てることそのものです。特に家庭菜園はすぐ結果がでる。二十日大根のように、すぐに育つ野菜もある。家庭菜園は日々やることが多くて、せっかちな人に向いているんです。これは実は、投資と企業経営に通じます。

世界中の人がコロナで影響を受けるように、野菜も天気によって大きく左右される。虫という外敵もいる。農薬を使うかどうか、手で採るのか採らないのか、面積あたりの収穫量をどう増やすか考えます。

MATCHAのようなベンチャーに投資したら結果がでるまで5年、10年かかる。1年で上場なんてない。3年で上場したら奇跡でしょう。リスク・リターンで考えると未上場のリターンがいいかというとそうではない。

青木さんや青木さんの社員が成長したり、会社が成長していくところを見たり見守ったり、関与するのが好きなんでしょうね。


社長から平社員、そして社長へ

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ー MATCHAは今7年目の会社になりました。藤野さんが、独立7年目の時の話を聞きたいです。

レオス・キャピタルワークスは2003年に設立しました。2007年ぐらいまで増収増益の企業で、あと2年くらいしたら上場できるぐらい成長していました。ゴールドマン・サックスや伊藤忠、三菱商事本体が資本を入れてくれるぐらいです。

2008年のリーマンショックの影響で、2009年に会社を手放したんです。一気にキャッシュフローが枯渇してしまい、一株1円で全部売りました。3240円です。その翌年の2010年が、7年目でした。完全に夢も希望もない状態です。役員でもなく、平社員でした。

会社を作ったときは、国民ファンドにするんだと思って立ち上げました。一回ボロボロになって、木が根こそぎ倒されたのが2009年の9月。会社を辞めようと思ったんです。

そんな時、現取締役の白水さんが、「藤野さんがしたかったのは、金儲けなのか?理想の投資信託をつくるということで、私を誘ったのではないか?嘘ですか?」そう言われて目が覚めました。

その6年後、ひふみ投信で成果を出したことで社長に戻りました。数多くの経営者に会っていますが、自分で作った会社で平社員になり、社長に出世した人は聞いたことがないです。


人が学べるのは、歴史、人、旅から

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ー 藤野さんは日々、日本や海外を飛び周っていますよね。全国の現場を通じてインスピレーションを受け、仕事に活かしている印象があります。仕事同時に旅をしてるのでは、と勝手に思っています。藤野さんにとって、旅とはなんでしょうか。

尊敬している人がいます。ライフネット生命の創業者で、立命館アジア太平洋大学(APU)の出口さん。出口さんが書いた「還暦からの底力―歴史・人・旅に学ぶ生き方 」という本を知っていますか?

人は3つのことから学ぶことができる。「歴史」「人」「旅」の3つです。歴史は過去について、人は今について、旅を通じて場所を変えて違った考え方や風土に触れていきます。

プライベートも仕事も含めて、今完全にSTAY HOMEです。それまでは年間100日以上出張する仕事を30年ほど続けていました。47都道府県はすべて周り、一番少ない県の宿泊数は、高知県で8泊。どこに言っても、お久しぶりという気持ちで回っています。

アジアや欧州に関してもほとんど回りました。アジアに関してはほとんど言っている。欧州はほとんど。アフリカはモロッコ、中東はアブダビ等。

中国に行ったのが一番最初です。大学生の時、日中学生会議で中国に行きました。天安門事件のちょうど一年前です。北京大学や清華大学が改革開放の流れがあり、民主主義に目覚めていた頃です。その翌年に天安門事件があり、会えなくなった人もいました。人生で一番学んだ先生は清華大学の数学の先生です。1時間半だったのですが、衝撃的な時間でした。

やっぱり違う場所、違う人に会うことによって、人生が切り拓けたりしますね。


日本にとって戦略的な会社

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ー 今回のインタビューの本題です。なんで、MATCHAに出資してくれたんですか?

若い人から学びたかったというのが大きい。たまたま山井さんと同じタイミングでお会いして、その後何度か会う中でビジネスのチャンスを感じました。これからの日本には、日本をより世界に開いて、世界中の人に来てもらう他、日本が生き残る道がない。それはコロナがある今でも確信している。歴史から考えても、人の交流がゼロになるのはありえない。

青木さんやMATCHAという会社がどういう風に成長していくのか。そこに期待したというのが大きいですね。MATCHAは、日本にとって戦略的な会社である可能性が高い。世界と日本をつなぐポータルとして、今後の日本の中心になっていくのではないかと思いました。


各国の人がわくわくすることを

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ー MATCHAに期待していること、まだこれやれてないことがあれば、考えをもらいたいです。

オリンピックがあるかどうか、不透明な状況があります。事業環境そのものが、何も努力をしなくて成功するわけではない。その中で、何ができるのか?

そもそもの魅力でいうと、MATCHAという会社は日本の魅力や日本の価値をもっと発信していく会社ですよね。その部分をより徹底して、コンテンツの厚みをどう作ることができるのか?それが重要になってくると思います。

今は厳しい時期だし、キャッシュ化するのは難しいと思う。ただ、厚みがあるコンテンツや魅力があるコンテンツをどのような時代でも生き残る。その部分をもっと磨いていってほしい。

また外国人と一番接している会社です。僕ら日本人の独りよがりではなく、多国籍の人に対して発信していく。日本に対して求めていることは、国によって、人によって違う。各国ごと面白さの切り口を持っていることが、MATCHAの強みだと思います。

クール・ジャパンがイケてなかったのは、日本人が考える「イケている」を推していったこと。各国の人がわくわくすることをちゃんと拾えることが、MATCHAができることだし、それは大手が参入しようと思っても中々できることではないです。

作家がファンドマネージャーをしている

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ー 藤野さんはプロの投資家でありながら、言葉のプロであると思っています。世の中の空気を絶妙に捉え、自らの言葉で世の中に流れを作っていく。藤野さんが考える「言葉」について聞きたいです。

元々、小中高大と得意な科目は2つありました。それは数学と国語だったんです。この2つが圧倒的に得意でした。特に、言葉を操ることや楽しむことに興味がありました。

子供の時から本を読むことが好きで、世界の古今東西の本を何回も読んでいました。中学校1年の時は、「戦争と平和」を10回くらい読んでいた。夏目漱石や森鴎外を全部読んでいました。懸賞論文を書いて、賞をとっていました。

その頃から、平易でわかりやすい言葉で、人をやる気にさせることことが好きでした。今ファンドマネージャーと言う仕事をしていますが、次の人生を歩むとしたら、表現して何かをするのが好きなので、映画監督になりたいと思っています。総合的なところで、人と一緒に表現することに元々興味がある。

元々、文章を書く力はあったんです。今も、本業が書く仕事で、副業としてァンドマネージャーをしている感覚がある。自分の中で言葉を紡いだり、言葉の影響力を考えたり、言葉の射程距離を考えることが僕の本来の強みで、その強みを活かしてファンドマネージャーの仕事をしているのかもしれません。それによって他のファンドマネージャーと異質な結果が出ているポイントだと思っています。

なので、株の運用より、言葉の運用の方が興味があるし、好き。時代を見て、変化を捉えたり、的確な言葉で表す力を利用してファンドマネージャーというところで、世界観をひらいて、株主投資をしているところがあります。

ー どうやって言葉を磨いていくんですか?

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自分の感情や気分を別のもので表現ですることを日頃からしています。それは、ある種の芸術です。ものを書くとか、絵を描くとかも含まれます。僕のもう一つのトレーニングは楽器です。子供の頃からピアノをやっていて、感情や気持ちを音で表現するというのをやっています。

結果的に、感性を養うことにつながっています。趣味ってすごい大事で、趣味そのもので食えないかもしれないけれど、そこでの学びが本業に活きることがある。ビジネスで先生は持つことはできないけれど、趣味で先生を持つことができる。先生から学ぶことが、仕事や生き方につながります。

社交ダンスも先生についてもらっています。社交ダンスでは、男性がリードして、女性が従うというルールがある。

「リードというのはどういうふうにすればいいか?」と先生に聞くと、「リードすることは押すことでもひくことでもない。リードすることは、相手が進むスペースをつくることである。」と言っていた。

衝撃な言葉すぎて、練習を止めて、メモを取りにいったくらいです。この考えは、めっちゃ仕事に使えます。リードされる側が自然と力が発揮できる場所をつくること。まさにこれってリーダーシップです。こういうのが学びですよね。


最後に

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怒涛の50分でした。自己紹介にいきなり家庭菜園の話が来た時、一気に引き込まれてしまいました。藤野さんが家庭菜園をして、楽しんでいる様子が頭に浮かんできてしまうくらい。

レオス・キャピタルワークス、ひふみ投信は藤野さんの「言葉」から生まれた会社だと思いました。藤野さんの言葉が、レオスの会社の雰囲気を作り、いい人が集まり、良い事業が生まれてくる。

藤野さんと話すと、未来が明るく見える感じがするのは、藤野さんの言葉の魔法だなと。しっかりと藤野さんに、世の中にお返しできるように、コロナにめげず頑張っていきたいです。


MATCHAでCFOの募集をスタートしました

ちょうど先日、CFOの募集をスタートしました。藤野さんが言うように、会社の戦略的な会社になるべく、今色々と仕込んでいます。ピンとくる方がいれば、是非ご連絡いただけると嬉しいです。


今までの株主インタビュー

株主インタビューは、今回で5記事目になりました。ちなみに本インタビューの写真は、2018年4月に行ったMATCHA株主合宿で撮影したものです。先生と生徒みたいな写真になってしまいました。

photo by @yansukim


最後まで記事を読んでいだきありがとうございます。毎日更新をしているので、よかったらまた読んでもらえると嬉しいです。