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ウクライナ 今、私たちが「できること」

みなさん、こんにちは。淡路島在住のファシリテーター、青木マーキーです。家族会議から国際会議まで、あらゆる会議の進行をするのが仕事です。実は僕、このたびのウクライナ情勢を受けて、打ちひしがれていました。

私たちファシリテーターは、話し合いができる場をつくるのが仕事です。国家間の戦争も個人間の暴力も「こんなやつとは、話し合っても意味がない」「話し合いではらちがあかない」となってから、起きるものだと思います。なので、世界のどこかで戦闘や暴力事件が起きるたびに、僕は無力感を感じるのです。私たちファシリテーターが、もうちょっと、対話や話し合いのテーブルを持てていれば、こんなことには、なってなかったのだろうか、と。自分の至らなさを痛感する日々でした。

おとといのこと、落ち込んでばかりいても仕方ないと思って、少し「できることをやろう」という気分になってきました。知り合いのNPOがウクライナから避難する母子のための食料支援寄付を始めたことを知りました。僕はそれをSNSシェアしつつ「何か、できることはないかな。一緒にやってくれる人はいませんか」とつぶやきました。

オンライン・イベントを緊急開催

すると、ファシリテーター仲間の「かなでぃ」こと、宮本奏さん(北海道在住)が、「気になっています」とコメントをくれました。あぁ、うれしいな。と思ってメッセージを送って「明日の夜、いそがしい?」と聞くと「時間あるよ」というお返事。よし、じゃぁ、僕たちファシリテーターができることをやろう、という気持ちで、急きょ企画したのが緊急開催:ウクライナ/今、私たちが「感じること」とできることという、オンライン・イベントです。

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かなでぃと30分ほどZoomで打合せて、お互いの気持ちやイメージを共有し、すぐさまFacebookのイベントページを立ち上げました。3月3日の夕方に企画して、3月4日の夜に開催するという超絶短い告知期間なので、いったい何人来てくれるかも、わかりません。そこで、5人でも100人でも大丈夫な進行案を考えました。僕が広報文を書き、かなでぃがZoomリンクをつくったり、進行表をまとめてくれました。そこまで決まってから、僕は、我が家の2階にあがって妻に報告します。「かなでぃと、明日、こんなことやろうと思っているんだけど、、」と話すと「よし、やろう!」と元気よく背中を押してくれました。彼女はここぞという時、いつも僕の背中を押してくれます。ありがとう。

つどう参加者と進め方

広報を開始すると、あっというまに30人近い方が参加意思を表明してくれました。録画なしのリアルタイムのみ開催だったので「予定があって、行きたかったけど行けないわ、でも応援している」「板書の記録だけでも見させて」というメッセージが何通も届きました。本当にありがたいです。開催直前の15分前にかなでぃとZoomで再会し、リンクをイベント・ページに貼り付けます。

どんな風にブレイクアウトルームを立ち上げるか、など、最終確認をしていると、あっというまに開催時間。つぎつぎと懐かしい顔や、初めましてのお顔がZoomに登場します。子育て中や移動中の人もいるので<耳だけ参加>もOKとしました。顔出しや声だしができない方は、名前の後ろに<耳だけ>と書いてもらいます。

まず主催する2人から、なぜ、こういう場を持とうと思ったのかをお話ししました。僕は冒頭に書いたような無力感の話を、かなでぃは「現地、ウクライナとの時差は7時間。キエフ周辺は、私が住む北海道と同じぐらいの気温だそうです。今2℃ぐらいでしょうか。避難している母子は、寒い思いをしていないか、、」といった事を言ったように記憶しています。あぁ、この人は、自分がもしもキエフにいたら、という感覚をもって、現地の方を思いやれる人なんだなぁと、心があったかくなりました。

今日、みなさんはどこから参加ですか? とチャットで聞くと、北海道、東京、埼玉、横浜、静岡、長野、大阪、兵庫、淡路島など、各地からのご参加いただいていることが、わかります。

グラウンドルールは「よくきこう」

前半のファシリテーターは僕が担当しました。会を始めるにあたって、皆で大切にしたい約束事を「グラウンドルール」と言います。まず、僕から提案をしたのは、よくきこうです。

今回のウクライナからのニュースを見て、心が揺れている人も来ているでしょう。悲しい気持ちの人がいて泣き始めるかもしれません。怒るひとや、ちょっと強い言葉を発する人がいても不思議ではないでしょう。いろんな立場を代弁しようとして声をあらげたり、モヤモヤして言葉にならない人もきっといます。どんな人がいたとしてもよくきこうを意識して、ともにこの場にいてほしいなと思います。

そして、次にお伝えしたのは、よくはなそう。せっかくこういう機会で集ったのです。自分の今のお気持ちや、こんなことできるんじゃないかというアイデアを、無理のない範囲で、お話しください。とお伝えしました。そして最後にお互いを大切にという言葉を添えました。色んな考え方、意見でぶつかりあうかもしれないけど、そういう時こそ、自分を大切にするように、お互いを大切にして、話し合えたらいいなと僕は思います。

写真:よくきこう


前半:今、私たちが「感じること」

そこまで土俵をつくったうえで、ブレイクアウト・ルームをつくって意見交換に入りました。前半のテーマは「今、何を感じて、どんな気持ちでいますか?」を切り口に3−5人のグループに分かれて話しあいます。

お互いが、ぽつり、ぽつりと、自分が今、感じていることを話す時間。モヤモヤしている人、悲しみに打ちひしがれているひと、何をしたらいいのか分からなくて困っている人、情報過多になるのがイヤでSNSを見るのを辞めた人など、ロシアサイドの発信がほとんどないことに不安を感じる人など、いろいろな声が交わされました。なかには、冒頭、うまく言葉が出てこない人もいたようです。でも他の参加者がよくきこうという気持ちで座ってくれているので、言葉がでなくても、安心です(たぶん、きっと)。

僕自身は、Zoomのホストとして、メイン・ルームでお留守番をしていました。ファシリテーターが「待つ」時間に、参加者が口を開くことができます。僕はこの時間が、とても好き。途中で、遅れて参加する人が何人かいたので、ここまでの状況を簡単に説明し、いずれかのグループにご案内しました。あっという間に前半の45分が過ぎました。ここで短いトイレ休憩をはさみます。休憩って、大事ですね。ファシリテーターとして活動して20年になりますが、最大の学びは「休憩をケチらない」ですね。休憩の間に、人は深呼吸したり、体を伸ばしたり、飲み物を手にしてほっとひと息つけたり、新しいアイデアを思いついたり、自分の気持ちを確認したりも、します。

写真:ドリンク

後半:今、私たちが「できること」

ファシリテーターは交替して、かなでぃが後半の進行役をつとめてくれました。まずは大きく深呼吸。体を伸ばして後半「今、ウクライナの平和のために、私たちができることはなんだろう?」を切り口意見交換します。

情報提供として、僕自身がこの1週間でやってきたことを、お話ししました。僕はロシアやウクライナの基本的な地理や情勢をまったく理解してなかったので、ゼロから学ぶ必要があります。まずはYoutubeで見てよかった動画を2本紹介。

1つめは「ロシアの論理」を解説した豊島晋作さんの動画です。これは、実に見応えがあります。基本的に僕たちが見ているニュースは西側諸国が発信している情報なので、どうしても西側からの景色しか見ることができません。で、ロシア側から見たらどのように見えているのか、を知りたくて学んだ動画です。オススメ。

続いて、お笑い芸人中田敦彦さんの解説動画もすごくわかりやすかった。この両名には本当に感謝しています。

こういう基本的な背景を学ぶというのは、私たちが「できること」のひとつなんじゃないかな。学校で歴史は学んだけど、今のニュースを子どもに解説できるほどの理解はできてなかったので、大人も学び直しですね。

動画が苦手な方は、本を読むとかもありです。第2次世界大戦のころから、ロシアがウクライナをどのように扱ってきたのかが端々から伝わってくる名作。

あと、音楽プロデューサーの小巖仰さんが教えてくれた情報で、ウクライナ出身のアーティスト・カテリーナさんのCDも買いました。彼女のCDを買うとウクライナに寄付される、という活動をしています。音楽を聞く。これもできることのひとつ。

加えて、現地の声を聞く、というのもできることのひとつ。僕が調べた限りでは、日本人のジャーナリストで田中龍作さんという方が、現地キエフから、必死の発信をしています。なかなかクセのある方ですが、「いま、ホテルの近くでどかーんと爆発音」といった生々しい発信もあって、つい応援したくなりました。カンパも歓迎しているようなので小額いれておいたところ。

と、こういう感じで、僕からの情報提供をいくつかしたうえで、グループワークに入りました。私たちができることはなんだろう?で意見交換する時間です。10分ほどして、戻ってきたみなさんに聞きました。「どんなことでもけっこうです。私たちができることは、なんでしょうか?」

写真:できること板書

できること、いっぱい出てきた

で、僕が必死の思いで板書したのがこちらの写真です。

右側の音楽をきく、とか本を読む、とか、動画を見る、現地の声をきく、あたりが、僕からの例示。それ以降はすべて、参加者のみなさんから教わったものです。

ある方は「僕は渋谷でのデモに参加してきました」と教えてくれました。ツイッターだと理論武装しないとツイートしても叩かれるけど、そのデモはとても温かい雰囲気で、ウクライナ人の方とも交流でき「来てくれて本当にありがとう」と言われたことが嬉しかったというお話しも聞きました。抗議行動に参加するのもできることのひとつですね。今週末も東京や大阪でパレードなどがあるようです。

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加えてもちろん寄付をするのもできることのひとつ。僕の知り合いのNPOで避難するウクライナの母子への食料支援寄付をはじめたのは認定NPO法人日本チェルノブイリ連帯基金です。こういう時は、信頼できるところに寄付をしたいと僕は思いますね。

子育て中の方もご参加下さっていて、子どもに本当のことを伝えられるようになるのも、私たち大人ができることのひとつ、だと教えてくれました。ある親御さんは、子どもといっしょに戦争に関する絵本を読むという行動をしたそうです。これも大事なことです。我が家にある絵本だと「アレクセイと泉のはなし」というのがいいかな、と思いました。これはウクライナにあるチェルノブイリ原発事故の影響を受けた小さな村のお話しです。とても心を打つ内容だけど、子どもが見てもわかるような写真絵本になっているので、オススメです。

それから、それから祈るというのも大切な行動です。毎日食事のたびにウクライナの平和を祈っています、という方もいました。それからジャズピアニストの河野康弘さんという方が毎日、夜8時から平和への祈りを込めたYoutubeライブ演奏をしているという情報も頂きました。こんど見てみようっと。

これは、すでにニュースでも報道をされていると思うのですが、銀座のロシア食材店の看板が壊された、という話もありました。ニュースで「ロシアはひどい」「ロシアに制裁を」という話になったときに、ロシア人個人を攻撃したりする流れになると、それはちょっと悲しいことです。身近なところで不当な差別を引き起こさない、ということもできることのひとつ。

そして、アート関係の活動をしている方もご参加いただきました。ロシアのアーティストに活動をさせないようにする、という流れも出てきているようです。しかし、こういうときこそ文化交流を絶やしてはならない、という意見もでました。

北海道は江別にある飲食店で、ロシア料理とウクライナ料理を交互に提供しはじめた、という話もききました。これ、飲食店の方ができることの一つですね。食べるを通じて、お互いのことを理解する。正義と正義のぶつかりあいだと、消耗してしまい、けっきょく平和はやってこないので、そういうアプローチもありだな、と感じたしだいです。似たような意味合いで、街角でボルシチを振る舞うという活動を紹介してくれた参加者もいました。心温まる交流ができそうでステキです。

参加いただいた方のなかで80代の高齢の方もいらっしゃいました。ご自身が終戦時に5歳だったこともあり、今回の戦争が、子どもにあたえる影響やトラウマを心配する発言もありました。その話に関連して、日本の各地にお住まいのお年寄りの話を聞くのもできることではないか、という話題にもなりました。戦争経験をきちんと引き継ぐ。私たち世代ではわかりえないことを、お年寄りから教わりたいと思います。

ある方の発言ではっとしたのは「ロシアに住む人たちも、苦しいのではないか。自分たちの大統領がこんなことを引き起こして。でもあまりにもその権力が強大なので、ちょっとあきらめてしまっているのかもしれない。そういえば、私も、日本の国のあり方や、政治に対して、あきらめかけていた。政治へのコミットをあきらめることは、ひいては、こういう事態を引き起こすかもしれない。そういういみで、日本という国をあきらめない、もできることではないか」という発言です。

平和というのは、構築するのに長い年月と努力が必要です。今、こうやってウクライナの危機がニュースになっているので、今、何か行動しないと、という気持ちが強くなっていますが、それぞれ状況がゆるさず、生活も仕事もあって、「今は動けない」という方もいるでしょう。モヤモヤして、動けない人もきっとたくさんいます。でも、それでもいい。自分ができるタイミングで、自分がしたいと思うことが見つかったときに動く、でもいいんじゃないか、という発言には心を救われる思いでした。

できることを、できるときに、やろう

というわけで、ここには書ききれないのですが、私たちができることは、たくさんありそうです。何より、打ちひしがれていた僕にとって、本当にありがたい時間となりました。ご参加いただいた皆さん、応援してくださる皆さん、本当にありがとうございます。僕は僕で、こういう場づくりを含めて、できることをやろうと思います。

そして、みなさんもどうぞ、ご自身のタイミングとやり方で、できることを、できるときに、やってみて下さい。

ウクライナのこと、みなさん、どんな風に感じていらっしゃるでしょうか?

もしもよかったら、感想やコメントをつけて、この記事をシェアして下さるとうれしいです。最後まで読んで頂き、本当にありがとうございました。


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