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もしかしたら。いつきと普通に恋愛して、一緒にいられると思ったんだよ。

もっと言い方があったじゃん。


なんであんなふうに言ってしまったんだろう。


なんであんなふうになってしまったんだろう。


思えばいつだって振り返った時だ。壊してしまったと気づくのは、そのきっかけになったと気づくのはいつも後だ。だから後悔というのだ。




その日、いつきに名前で呼んでいいか聞かれた。


いつも通り、何も意味がない。定期的にやってくるそれだ。雨が降って一緒に風呂に入った夜だった。そういつも通りの雨、いつも通りの夜で、いつも通りの「あおい」だった。


でもダメだった。何かがダメだったし、僕はその「何か」を知っている。


一番知っている。でも受け入れたくなかった。だっていつきが好きだから。一番大事にしたいと思った人だったから。


「ごめん無理」


早口で、反射的に言ってしまった。

ハッと気づいた時にはもう遅くて、いつきの困惑した顔が視界に入った。見たことがない顔だった。多分、彼女自身「無理」なんて言われるとは思ってなかっただろうし、僕も思わなかった。


あぁ、なんでだろう。嫌だよ。


いつきは?彼女はどうなんだろう。自覚があるのか。ないと願いたい。勘違いだと信じたい。

僕は僕を否定したい。きっと疲れていたんだと。いつきに限ってそんなことはないと。うん。絶対そうだ。そうだよ。そうでしょ。早くさ。早く言ってよ。


「我慢したるわ」って冗談ぽくさ。広島弁でおどけてよ。「じゃ」って言ってよ。


え?なんで?


なんでそんな顔してるんだよ。


ねえ…ねえ……ねえ…ねえ!!!


ああ。なんて自分勝手なんだろう。嫌だ。全部嫌だ。自分が嫌いだ。いつきも嫌いだ。自分が嫌いだ。自分が嫌いだ。


なんでこうなんだよ。岸本あおい。なんでだよ。なんで普通にできないの。死ねよ。死んでくれよ。あおい!頼むよ。もうやだよ。せっかくさ。もしかしたらさ。普通になれると思ったんだよ。


もしかしたら。もしかしたら”治って”るんだって。


それでさ。それでさ。いつきもそのうちさ。いつきも僕を”ちゃんと”好きになってさ。


それでさ。それでさ。


いつきと普通に恋愛して、愛し合って、一緒にいられると思ったんだよ。


何がダメなの。ねえ!もう誰に怒っていいかわからないよ。でもとりあえずお前は死ね。殺したい。あおい、死ね。死んで、生まれ変わって、生まれ変わってでも普通になりたい。普通になって、普通になって、愛をまっすぐ受け入れて、受け入れたいよ。

岸本あおいが嫌いだ。古賀も嫌いだ。



なんで。ねぇ、頼むからそんな顔しないでよ。


お願いだよ。本当に。もう、限界だよ。


あぁ。


あぁぁぁ。


いつき・・・


なんで、僕らはこうでないと一緒にいられないんだろう。



いつか終わるのはわかってたよ。でもあんまりだよ。


お願いだよ。


ねぇ。


ねぇ!!!!!!!!!!!!!





生活費になります。食費。育ち盛りゆえ。。