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No.598 眠れぬ夜に、堺雅人

倍返しされない、フリーライターのaoikaraです。

私がしたことなんてほんのちっぽけなので、倍返しされてもぴんってぐらいだと思われるので、映えないのできっとされないな。


眠りにくい季節になってきた。北海道でも夏の昼間は暑くて、最近は朝も暑くて、でも夜になるとぐっと気温が下がる。窓を開けっぱなしにして寝ると、体が冷えてしまうこともある。冷房つけっぱなしで寝る、みたいな感じかな、きっと。

だから夜に窓を開けて、部屋をガンガンに冷やしてから、寝具をしっかりと羽織って寝る。部屋は涼しいを通り越して、なんだったら寒い。そこを寝具で温めて、心地いいくらいで眠る。これが理想。

でも、寒すぎると体が温まらなくて眠れないし、窓を閉めた途端に湿気でもわっとして体温が上がっても眠れないし、ベストな睡眠体制を作るのがとても難しい。だからしばしば寝付けない。

昨夜もそんな“しばしば”のうちに入る夜だった。一旦は眠りに入れたのだけど、体温が上がって部屋が湿気でもわんとして、不快感から起きてしまった。嫌な夢も見ていて、夢の余韻で現実でも恐怖で震えてた。

睡眠の快適さをなんとかしたい。かといって窓を開けたら寒そうだし、とりあえずそのまま寝具をよけて寝てみる。と、寒い。寝具を羽織る。暑い、寝具をよける。この繰り返し。

暑い、寒い、の繰り返しで体は眠るどころか目を覚ましてしまう。ふっと眠りに入れたかなと思ったら、今度は何やら水が流れる音とガンガンとぶつかるような音がする。乱暴に食器を洗っているような音。なんでこんな夜中に…。

でも待って、たしか家族は私が起きているときに食器を洗っていたはず。じゃあ…これは何の音?

とか思ったら、怖くなってきて、殺人鬼が肉体を切り落として、その後処理でいろんなものを洗っているところなんじゃないか、とかいう想像が働いて、また恐怖で震えてた。翌朝確認したら「食器洗ってなかったよ」と私の記憶違いが指摘されただけなんだけど。

音が怖くて耳をふさいで、暑さと寒さで不快感マックスで、ああ眠れない。気を紛らわせようとWeb漫画を読んでみたら面白くて、最新話まで200話近く読んでいたら、1時間が過ぎていた。

まだ眠れない。少し起き上がって、水を飲んで、トイレも行って、布団に入って、眠れない。スマホは目が冴える。活字にしよう。本を読もう。でもミステリー小説とかおどろおどろしい内容ばかり。そんなのじゃない、もっと心穏やかになれるような本は…あ、見つけた。

「文・堺雅人」

もう何年も前に、一人暮らししているときに、古書店で見つけた堺雅人さんのエッセイ。裏表紙をぺらりとめくると、ちゃんと古書店の名前と値段が貼ってあった。味わい深い。

半沢直樹よりも前に堺さんが気になっていて、と書きたいのはミーハーだからじゃないよと主張したい私の自意識。

たまたま古書店で見つけて買った。帯までついている。貴重かもしれない。2004年12月から2009年1月までの雑誌連載を1冊にまとめたもの。最初に目を通してから、ずいぶんと時間が経っていた。

だから、内容はすっぽりと忘れていた、のか斜め読みしていたのか。冒頭から、とても読みやすい文章だった。広く定義を示して、そこから限定的な情景を見せて、映像の仕事の人だからかフォーカスの仕方が映像のようで、夜中の頭でも思い浮かぶほどに表現が豊かだった。

ああ、いい文章だな、いいな、と穏やかな気持ちになった瞬間、ふわりと眠気に包まれた。ほどなく、寝た。

汗ばむ体に不快感は残ったままだけど、心の中をそっと穏やかにして、眠気に誘われた。マイナスの意味で眠くなるような文章と言いたいわけではなくて、すごくいい文章で読みやすくて心地よく穏やかになって眠たくなったと言いたい。

今も枕元に置いている。


しばしば寝付けない夜はあるけれど、これからは「文・堺雅人」で眠れそうかもしれない。今宵は眠れますように。おやすみなさい。って時間には早いかしら。

2020年8月9日(日)

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