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内向的な性格を受け入れられた理由

私は最近まで、内向的な性格は欠点だと思っていました。社会では内向型よりも外向型が評価されています。友達は多い方が良い、明るい性格の方が良い、静かに話すよりも大きな声ではっきりと分かりやすく話せる方が良い、協調性を求められ、学校や社会ではリーダーシップのある人が評価される。内向型の人は外向型の性格に変える必要がある、内向的な性格は欠点であるというような風潮を感じている人も多いのではないでしょうか。

今思い返すと、自分の学生時代や社会人生活は外向的に振る舞っていたように思います。「外向的」というよりも、無意識のうちに外向的に振る舞わなければならないと思い込んでいたのでしょう。学校や社会に馴染めるようにと、友達に話題を合わせなるべく明るく社交的に振る舞うようにしていました。それは、おそらく友達や学校、社会に否定されたくないという思いからだと思います。

徐々に社交的であろうとする自分に疲れてしまい、家族以外の人と不必要に会ったり話をしたりすることをやめてしまいました。今まで時々会ってお茶をしていたような友人とも連絡を取らなくなり、夫とだけ会話をするようになりました。友人がいなくなることに不安もありましたが、友人と楽しく世間話をすることに苦痛を感じてしまうので、仕方のないことだと思って受け入れることにしていました。それよりも、本やYouTube、SNSで自分の関心のある話題、社会や人の心理、世界のあらゆる国々の文化や価値観、歴史などを知っていく方が楽しいと感じていたのです。友達とはこうした話ができないため苦痛を感じるのだと考えるようになっていました。

そんな時、TEDでスーザン・ケインの「内向的な人が秘めている力」というスピーチをYouTubeで見たのです。このスピーチの中で、スーザン・ケインは「現代では社交性が評価され、内向的であることが否定される文化だが、実は内向的な人にはすごい才能と能力がある。内向性はもっと評価されるべきである」と言っています。

このスピーチを聞いたことを機に『内向型人間の時代 社会を変える静かな人の力』というスーザン・ケイン著の本を読みました。本書には、内向性についての様々な分析が書かれています。内向型人間の優れた点やどうして外向型人間が評価されるような社会になったのか、また、内向型人間と外向型人間の良さをそれぞれ生かした社会を作ることで人類は良い方向に進んでいくことなど。外向性が評価され、外向型人間が社会をリードしていくと人類は誤った方向に進みかねないとも書かれています。

内向的な人は慎重で注意深いです。たくさんの情報を瞬時に把握して自分の意見を述べたり判断をすることは苦手ですが、一つのことをじっくりと考えることを得意とします。人が多く集まる場所が苦手で、たくさんの人と社交的な楽しい話をすることにストレスを感じてしまいます。一人でゆっくりと物事を考え、一対一で深い話をしたり、親しい人のみの少人数の集まりを好みます。

そして、世界のリーダーや影響力のある人、尊敬される人の中には内向的な性格の持ち主も多いのです。ビル・ゲイツやバラク・オバマ、スティーブ・ジョブズ、ガンジーは皆、内向的な人たちです。ガンジーは人前で話すことやリーダーになることを嫌いましたが、自分の思いを成し遂げるために仕方なく人々に頼まれてリーダーになったのです。決して有名になりたい、目立ちたいという考えでリーダーになったわけではありません。

一方、外交的な人は人の多い社交的な場、パーティーなどを好みます。たくさんの人との会話を楽しみ、瞬時にいろいろな情報を把握し、その場で自分の意見を魅力的に話すことができます。頭の回転が速く説得力のある話し方ができ、多くの人の信頼を集めることができるため、リーダーになりやすいといえます。また、不安を感じたりリスクを冒すことに対して躊躇することなく、物事に積極的にチャレンジしていきます。

ですが、こうした外交的な人たちがリーダーとなって社会を動かしていくことは危険だともいえます。例えばリーマンショックですが、2008年当時、リーマン・ ブラザーズには外交的な人たちが重役についており、内向的な人たちの慎重な意見を聞かなかったとスーザン・ケインは言っています。知識量が多く思慮深い内向的な人たちの意見を聞き入れず、リスクを犯して強引に仕事を推し進めたことが経営破綻の理由になったという考えが彼女の意見です。

このような理由から社交性が評価される社会において、内向的な人たちの意見を尊重することは、人類が誤った方向に進んでいかないためにも重要です。日本もアメリカと同じように社交的な人が評価される社会です。アジア人は欧米人よりも内向的な人の割合が多いとされています。私たちアジア人にとって、こうした環境のもとで外向性を求められる社会になっていることは、生きにくさを抱える人が多い理由の一つかもしれません。

内向的な人の声が社会に求められている。社会はもっと内向的な人の意見に耳を傾けるべきである。内向的な人のアイディアは社会にとって価値のあるものである。そして、内向性と外向性の良さをそれぞれ生かし合うことで、社会は生きやすい場所になる。

革新的なアイディアや人類にとって重要な方向性を導くための思想などは、大勢が集まる会議ではなく、個人が一人になってじっくりと深く考えたときに生まれるのです。

本書を読んだことで、自分は内向型だということが分かりました。今まで社交的ではなかったり、一人でゆっくりと物事を深く考えることが好きな自分を否定的に考えていましたが、自分の性格を肯定して良いのだと思えるようになりました。自分のアイディアが社会にとって価値のあるもの…になるかは分かりませんが、自分の考えをこうしてSNSで発信し、少しでも誰かの役に立つことができたらと思っています。


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