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歯医者に行こう | 映画「夏目アラタの結婚」感想

 原作は未見。存在は知ってて、読むか迷っていたんだけど、映画になったならとりあえずそれ見てみるかって感じで見に行った。予告編もなかなか面白そうで気になったしね。

あらすじ

元ヤンで児童相談員の
夏目アラタ(柳楽優弥)が切り出した、
死刑囚への“プロポーズ”。
その目的は、“品川ピエロ”の
異名をもつ死刑囚、
真珠(黒島結菜)に好かれ、消えた遺体を
探し出すことだった。

毎日1日20分の駆け引きに
翻弄されるアラタは、
やがて真珠のある言葉に耳を疑うーーー
「ボク、誰も殺してないんだ。」
プロポースからはじまった、
予想を超える展開。
日本中を震撼させる2人の結婚は、
生死を揺るがす<真相ゲーム>の
序章にすぎなかった・・・。

公式より

 これぐらいのあらすじがいいよね。短すぎず、長すぎず、要点も抑えてある。サユリは明らかに書き過ぎだったと思うよ。

感想

 すごい良かった。思ってた以上に面白かった。正直そんなに期待してなかったんだけど、期待の何段階も上をいく面白さだった。

 12巻原作の映画化だから、ストーリーが駆け足気味になるかなと思ったけど、そんなこともなかった。ストーリー途中で終わることもなく、ちゃんと話は完結している。先が全然見えなくて、どこかへ引っ張っていってくれるストーリーもよかった。

どこへ着地するのかわからないストーリー

 ストーリがとにかく面白かった。それは原作が面白いってことなんだろうけど、それを損なうことなく映画化できてるってことだよね。マンガ12巻は明らかに2時間では収まらないから、大きくエピソードがカットされているはずなんだけど、それを感じさせなかったのはすごいよかった。

 主人公アラタは死刑囚の真珠と結婚して、真珠が隠したと思われる死体の首を探すことが目的。真珠に近づいて、信頼を得て、首の在り処を吐かせることが目的。

 当然、簡単に真珠と信頼関係を築けるわけもないし、真珠に近づけば近づくだけ、こいつは本当に殺人を犯したのか、真珠が信じられる人間なのか、他の誰かが殺したのか、どのような真実が隠れているのか、謎が次々と押し寄せてくる。真珠の死刑が確定して終わるのか、真犯人がいるのか、死刑を逃れるのか、どのような形で決着するのか全然読めなかった。だから、単純に先が気になるストーリだったから面白かったよね。

歯が汚いヒロイン

 まあ、とにかく目立ったのはヒロイン真珠の口。歯が汚い。可愛いのに歯が汚い。芸能人なんてみんなホワイトニングして真っ白の歯なのに、ここまで汚いのはびっくりする。本人の歯を汚してるのかと一瞬思ったけど、当然そんなことはなく、よく見ると歯の上に汚いダミーの歯をつけてるんだね。だから、明石家さんまのモノマネをする原口あきまさのように、ほんのちょっと出っ歯気味になっちゃってたね。気にしなければ気づかないぐらいだけど。子供時代の子役にも子供用の汚い歯を用意していたのはびっくりしたよね。芸が細かいね。

 この歯が汚いのは劇中で理由が一応出てくるけど、いったいなんの狙いがあったのか、はっきりしたことはわからなかった。育児放棄された可哀想な子という印象付けだろうか。

 まあ、とにかく汚い歯のおかげで不気味だったよね。得体の知れない感じがした。ヒロインが死刑囚なだけに底が知れない怖さがある。どれだけ綺麗事を言っても、この歯で不気味に笑うだけで信用できなくなった。歯の勝利だね。

二人のやりとり

 この物語はアラタと真珠の会話というか、対決が大きな比重を占める。二人のやり取りは常に緊張感があって良かったよね。面会室っていういつも同じ場所ではあるんだけど、ただ会話してるだけじゃなくて、細かな表情の変化や、物理的な二人の距離が何かを語っているし、二人に迫力があったし、この二人の存在感によってこの映画は成り立っていたと思う。

 特に真珠という一筋縄ではいかない、底が知れない、半分狂ってるような、わけのわからない人物を違和感なく演じきれた黒島結菜はすごいと思った。

 犯罪者と面会室で会話するという作品として、「死刑に至る病」を思い浮かべたんだけど、あれも死刑囚を演じていた阿部サダヲのとてつもない凄みによって作品のヤバさが数段階レベルアップしていた。映画を見ている最中、完全に阿部サダヲを連続殺人犯と信じて疑わないぐらいヤバかった。恐ろしかった。

 話の内容的にも、死刑に至る病に比べれば作品の狂気が薄いので、真珠に恐怖を感じるレベルではなかった。まあ、そもそもヒロインなので恐怖を感じるほど怖くするのはこの話にあってないしね。とにかく、可愛さを維持しつつ、狂気と闇と可哀想と純愛を取っ替え引っ替えする演技はすごかったし、彼女の演技がだめだったらこの映画はつまらないものになっていたのは間違いない。

おわりに

 めちゃくちゃ見ようと思って期待して待っていた作品ではなかったので、思わぬ拾い物をしたようなラッキーな出会いだった。良作だったと思う。原作も読んでみてどこ編が違っているのか確認しようと思った。おすすめの映画です。

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