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観測籠球~B.LEAGUE U15 CHAMPIONSHIP 2020観戦記

先週のレビューもまだやっていませんが、本日見てきた若人の大会に感銘を受けたので先にこちらを書き記しておくことにします。

昨季までは確かお盆時期にやっていたはずのこの大会ですが、今季はお正月明けすぐのこの時期の開催となりました。受験だったり休みの都合だったりで各チーム苦労をされていたと思いますが、それでも各チームが豊田市のスカイホールに集い、熱戦を繰り広げました。

本日は最終日ということで準決勝~3位決定戦~決勝の日。自分の用件をこなした後、準決勝2試合目から見ることが出来ました。

<準決勝2 アースフレンズ東京Z U15 vs 横浜ビー・コルセアーズ U15>

1Q途中から。サイズに優れた東京Zと、大柄な選手は少ないながら非常に良い動きを見せ技術も高い横浜の戦い、かと思って見始めました。

が、ゲームを追っていくと、東京Zの選手は大柄な選手も含めて全員がボールを持てて運べて切り込めてパスも出せ、しかもスペーシングやポジショニングもしっかりしている素晴らしくオフェンシブなチームでした。エンドからのセットからとはいえ、まさかU15でエレベータースクリーンをお目にかかるとは思いませんでした。

素晴らしいスキルを軸に、質の高いアタックを見せる東京Zでしたが、この試合は横浜の選手たちの粘り強い守備が効いたか、積極的に放つシュートはどうしてもリングを通過しませんでした。それでもサイズに勝る東京Zは何度となくオフェンスリバウンドをもぎ取り、攻撃の回数を握って戦いを進めます。

一方の横浜は前述したように非常に手も足も良く動く選手たちが粘り強く守り、また隙を突いてアタックするとこちらはある程度の確率でシュートを沈めて追いすがります。質の横浜と量の東京Zという様相で進んだ試合は、残り2.7秒、横浜2点ビハインドのラストオフェンスでこの試合ほとんどなかった東京Zのローテーションミスで横浜#8菅野汰樹がコーナーでボールを受け、3Pを叩き込んで逆転。

最後の望みを託した東京Zのオフェンスはエースの#2坂本康生に託されますが、ドライブからのショートジャンパーは無情にもリングを弾きタイムアップ。42-41で横浜が競り合いを制して決勝進出となりました。

<3位決定戦 山形ワイヴァンズ U15 vs アースフレンズ東京Z U15>

昼を挟んで行われた3位決定戦は、先ほど僅差で涙を呑んだ東京Zと、準決勝1で宇都宮に敗れた山形との間で行われました。

序盤は先ほどの試合と同様、いいアタックをしつつもなかなかシュートがリングを通過しない東京Z。それに対して山形は横浜に輪をかけたアンダーサイズながら、エースである#16加藤律樹の鋭いドライブを中心にした攻めでしぶとく得点を積み重ね、1Qはほぼイーブンで終えることとなります。

加藤のドライブにファウルを重ねていた東京Zですが、途中から#35前沢光がフェイスガード気味に厳しいマークを仕掛けると、山形の攻撃のリズムを崩すことに成功。守備での成功を重ねていく中で、質の良いアタックを繰り返す東京Zは徐々にシュートタッチを掴み、#5塚本夏生の連続3Pを皮切りに徐々にリードを広げていきます。

後半に入るところで15点ほどの点差で推移。山形はなかなか攻撃の形を作ることが出来ず苦しい展開でしたが、ここで意地を見せたのはやはりエースの加藤でした。ここまで執拗にリングへのアタックを繰り返していたところから、外のシュートを放ち始めると、3本の3Pをヒット。徐々に離されて意気を失いかけたチームを必死に鼓舞します。

しかし、攻撃でリズムをつかんだ東京Zはその抵抗をものともせず、素晴らしいスペーシングから繰り出される攻撃で山形を翻弄。ただ高さだけでなく、バスケットボール自体の質で圧倒した東京Zが84-56で快勝。3位の座を掴みました。

<決勝 宇都宮ブレックス U15 vs 横浜ビー・コルセアーズ U15>

決勝の組み合わせは2年連続で宇都宮vs横浜となりました。お互いに守備自慢のチームですが、序盤は前評判通り、しかし、宇都宮のほうが守備の圧力は一歩上といった印象。横浜はなかなか良い攻撃を繰り出せずリードを許します。

ここで横浜を支えたのが#15神戸辰郎でした。身体を張ってリバウンドを取り、スクリーンをかけてダイブし、ゴール下をねじ込んで劣勢のチームを支え続けるとチームはリズムをつかみ、今度は2Qの半分を宇都宮を無得点に抑える守備を引き出し、逆にリードを奪います。それでも宇都宮もその後はしっかりと得点を取り返し、前半は互角の展開に。

そして迎えた後半、粘り強い守備同士の我慢比べは、宇都宮に軍配が上がりました。攻め手がだんだん乏しくなってきた横浜からミスを引き出すとそこからの速い攻めでリードを奪うことに成功。また、宇都宮は#13菊田隼利が内に外にと素晴らしいアタックで加点に成功。

ここで引き離された横浜には状況を覆すすべは残っておらず、57-39で押し切って2年連続の優勝に輝きました。

<印象に残った選手>

加藤律樹(山形#16)

身長182cmで素晴らしい瞬発力、身体能力を持つだけでなく、ドリブルにシュートにと技術もしっかり。劣勢でも切れずに戦い続けたメンタルも素晴らしかったと思います。今後の肉体的な伸びにもよるでしょうが、置かれる環境と成長によっては、トップレベルまで昇り詰めてもおかしくない資質の持ち主だったように思います。

星川開聖(宇都宮#18)

身長190cmかつ厚みも十分な恵まれた体格に、外でもプレーできるだけのスキルと身体能力。MVPにも選ばれましたが、今後の成長も含め間違いなく大器と言えるでしょう。今日の1試合を見ていてもやや精神的にムラっ気を感じるプレーぶりではありましたが、そういう子が宇都宮というチームの文化に触れたのは彼の将来に良い影響を与えそうです。心身ともに大きくなって、末は代表クラスに、と夢を見たくなる選手と言えるのではないでしょうか。

菊田隼利(宇都宮#13)

星川とともに大会ベスト5に選ばれましたが、決勝のコート上で一番上手い選手は彼だったのではないでしょうか。ハンドリングが上手く、ドライブからのフィニッシュも外のシュートも正確。のみならず、ポジショニングの正確さ、守備の巧みさ、何より中学生には見えない落ち着き。決勝の我慢比べを打ち破ったのは間違いなく彼のスキルだったと思います。175cmという身長がどこまで伸びるかはもちろん分かりませんが、このセンスは今後も注目したいです。

坂本康生(東京Z#2)

今の東京Zの方針は恐らく「大きい選手をオールラウンドに育てる」ということをトップチームもU15もやっているのだと思います。その象徴だったのが彼だったのではないでしょうか。192cmという身長ながら、外から切り込み、シュートを打てるスキル。チームとしてはこういう選手をたくさん育てていきたいのでしょう。もちろんまだまだ線の細さはありますが、こういう選手が大きく育ってこそ、日本は強くなっていくのではないでしょうか。

山口隼(東京Z#20)

今日の試合、準決勝も3位決定戦もなかなかシュートが上手くいかず苦労した東京Zでしたが、そのチームを攻守に安定したプレーで支え続けたのがこの山口でした。ハンドラーとしてボールを持っても、スポットアップでボールを待っても活きるスキル、何より精神的な安定感。3位になった後に受けたインタビューでキャプテンだと判明した時にはなるほどと思わされました。

佐々木慎太郎(東京Z#99)

おそらくシューターなのだと思います。少なくとも本日は当たりを引くのに苦労しており、けして彼の日ではありませんでした。その上で、彼があれだけ自分のタイミングでシュートを打つことが許されていたこと、そして彼も打ち続けたことを鑑みると、恐らく、普段はものすごくシュートが入る選手なのでしょう。実際、入ったシュートの柔らかさにはその片鱗が伺えました。何より注目したいのは、外しても外しても打ち続けたメンタリティ。シューターに必要なのは「次から10本連続で入れればそれでいい」とばかりに打ち続ける精神力なのです。何年か後に、身体がそのセンスに追いついた時が楽しみな選手です。

3月にも試合がありますし、彼らは今後高校に羽ばたいていきます。またバスケを見る楽しみが増えた、そんな日になりました。

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