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#5.留学生就職支援コーディネーター×WSD

(1)普段おこなっている活動を教えてください

大学で、留学生就職支援コーディネーターとして日本で就職を希望する外国籍留学生のキャリア・就職支援を行っています。
具体的には、インターンシップのプログラム設計やキャリア教育プログラムの企画などを担当しています。同時に、自治体と連携しながら、企業に対する外国籍社員採用・育成の研修企画へ取り組んでいます。

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(2)WSD受講のきっかけは?

■きっかけ
留学生の就職支援を推進するにあたり、日本の企業人はもとより、国内学生や地域住民の方など、留学生が日本のコミュニティへ参画できていないことへ課題を感じていました。そのような中、地元企業を取り巻く課題について国内学生と共に考察していく講義を担当することになり、お互いの違いを尊重し合うための仕掛けを大学の正課科目の中で実践していきたいと考えました。学術的知見に基づいた学習手法について模索していたところ、勤務大学の教員がWSDの存在を教えて下さり、受講に至りました。

■受講においてハードルに感じたこと
受講自体は迷いなく決めたものの、いざ通学が開始されるとレポートやチームメンバーとのオンラインミーテイングなど、想定外にプライベートでの拘束時間が発生し、常に時間に追われている感覚でした。

当時娘が幼く、母親に甘えたいピークだったので、彼女に「なぜお母さんは、自分よりも知らない誰かを優先してPC越しにお話しをしているのか」ということを理解してもらうことが最も大変でした。しかし、子供にとっては、言葉による説得よりも、必死で課題に取り組む親の背中のほうがよほど納得感あったようで、いつの間にかワークショップ演習で使う道具を色紙であやどってくれたり、子供の視点で何度もダメ出ししてくれたりと、彼女なりに母親が学びに向かう姿を受け容れたようでした。

(3)WSD受講で最も印象に残っていること

おでこシールのワークショップ(排他のワークショップ)です。
自分が貼られているシールの正体がわからない者同士が言葉を発さずに複数人と仲間づくりをするという、ごく短いワークだったのですが、人というのは他者のことは簡単に分類することができても、結局自分自身のことはよくわからないものだな、とシンプルに、かつ強烈に理解することができました。だからこそ他者からの指摘や他者との対話が自分という人間を形成していくことを、ワークショップデザイナーの存在意義とともに意味づけすることができました。

当時の講義ノートを見返すと、「協働と競争、互恵と排他は表裏一体」という文字がひとこと大きく書かれています。この学びは、自分自身が多様な背景をもつ方へのワークショップを実践するにあたって、常に心に強く留めていることばです。

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(4)現在の活動に活かしているWSDでの学び

大学のキャリアデザイン講義ではF2LOモデルの学びを実践しています。
受講以前は、学生たちの学習意欲をモチベートするために、どのような言葉を選んで発していくか、またどのようなツールをつかっていくか、などファシリテーターである自分が完璧であろうとすることにずいぶん意識が向いていたように思います。
しかし、ファシリテーター(F)、学習者(L)、対象(O)間のコミュニケーション構造の変化ついてこのモデルを通じて体系的に学んだことで、「どの場面で自分が姿を消すか」ということをプログラム設計の段階から現場判断に至るまで、意識するようになりました。

WSD受講中、小学生を対象に、アプリをつかって動画制作をするワークショップを設計したのですが、本番中にとった簡単な逐語録(テキスト化された学習者とファシリテーターの会話)も今の活動に活かされています。動画制作のように、対象が学習者へ与えるインパクトが大きければおおきいほど、学習者が対象のみに意識が向いていないか、学習者同士の関わり合い方についてファシリテーターがストーリー性を持たせているか、といった学習者の表情や息づかいを注視することの大切さを、iPad片手に夢中で走り回っていた小学生たちを思い出しながら振り返っています。

(5)これからの展望

当たり前が違う者同士が、対立することなく思うことを等身大で伝えることができている、そんな場創りの担い手になっていきたいと考えています。

短期的には、留学生×国内学生、外国籍社員×職場の上司や同僚、というように、外国籍の方が日本で学び、働きやすくなるためのワークショップを多言語で企画していきたいと考えています。

長期的には、キャリアコンサルタントとしての知見もベースにしながら、外国籍の方のみならず、障がいを持つ方、育児や介護などで勤務時間が限定される方など、多様な背景を持つ従業員同士が居場所感を持ちながら働くことができる職場づくりについて、やがて社会に出ていく学生達も交えながら自由な意見を言い合えるワークショップを企画していきたいと考えています。

留学生×国内学生、外国籍社員×職場の上司や同僚など、まさにさまざまな「結び目」として活躍している河瀬さん。ありがとうございました!

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