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眠る前の読書逍遥

もう眠たい、瞼が重くなる。さっきから枕を背もたれにしたまま、うつらうつらしている。
急に、家のそばで救急車のサイレンが鳴ったのに驚いて目をあけた。音は遠ざかっていくので、ご近所で誰かが運ばれたのだろう。到着したことに気が付かなかったので、サイレンを鳴らさないで来て下さいって言ったのかな…とぼんやり考えながら、左手に開いたままの文庫本にまた目を戻す。ほんの一瞬、眠気も遠ざかったようだ。

寝入り端にこんなに読めもしないのに。
私の傍には手にしている文庫本の他にも、数冊の本が無造作に積まれたままになっている。寝がけの気分に相応しいと思った本を選んで読書逍遥のお供をしてもらうのだ。

置いた本が人一人分の幅を占めているので、横で寝息をたてている息子に失礼して、ゴロっと端に転がってもらう。本、私、息子の川の字。これがいつものベットの上の光景。夫と犬はベットの向かいに敷いた布団でゆったりと眠っている。

ちなみに、朝起きると乗っていたはずの本は一冊程度をのこして下に落ちるか、私の背中の下敷きになっている。開いたままのページが折れていたりすると惨めな気持ちになるけれど、本を傍らに置くことはもはや安定剤のような役割を果たしているので仕方ないと思っている。

折角ベッドまで持ってきてもその日読まない本もある。読みかけの本が家中散乱することになって夫は閉口するのだれど、それが私の性に合っているので目をつぶってもらっている。

その時の気分にもよるけれど、夜に選ぶ本は軽めのエッセイや随筆、重たくない小説が多い。今晩の選択はこの5冊。

・下着の捨てどき 平松洋子
・思い出袋 鶴見俊輔
・鳥肌が 穂村弘
・オリーブ・キタリッジの生活 エリザベス ストラウト
・こといづ 高木正勝

鶴見さんの本で戦中時代の話に想像を馳せてすぐ、平松さんの喫茶店のエッセイを読んで、明日は私も新聞の投稿欄を読みながらコーヒーを飲もうと思ったりする。オリーブが語った”夫婦の双方から見方が変わるようなこと”について、似たような沁みが心に広がっていくのに慌てて、高木さんの言葉の旋律で中和させるために優しい表紙に手を伸ばす。

文字にすると何か頭の中が忙しそうだ。でも私にはこのリズムが調和よく眠気を連れてくるので、その波に身を任せる事にしている。

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とっかえひっかえのスピードが落ちて、ああもう寝ようと思ったところで寝返りを打った息子が私にぐるんと足を絡ませてきた。
もう幼児ではない少年の頭の匂いがふうわりと漂って、私はそのまま眠りの中へ落ちていった。


最後までお読みいただきありがとうございます。
読んだ本を以下に。(穂村さんの本にいくまえに寝ていました)


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