セラムン二次創作小説『初デートに前に(クン美奈)』
とある日の休日。美奈子は彩都を呼び出して、ショッピングに連れ回していた。
目的は初デートの服装選び。来たる公斗との初デートに着ていく勝負服を、昔から一番よく知る彩都に見立ててもらおうと目論んでいた。
そこに加え、彩都は女装の麗人。最近のレディースのトレンドにも敏感。こんな打って付けの人はそういない。
「公斗はどんな服着ていても、幻滅なんかしないわよ?」
連れ回しては、あーでもないこーでもないと服を選んで試着をしては悩む美奈子にうんざりした彩都は、ため息混じりに言葉を発した。
「そんなの分かってるわよ!より可愛く見られたいし、好きにさせてやりたいのよ!」
だからもっと協力しなさいよ!と頼んでいる身のはずの美奈子が上から目線でものを言う。
態度には若干、と言うよりかなり腹が立ったが、こんなんでも乙女なのねと心の中で彩都は意外な美奈子の一面に驚いた。
「あっそ。でも私、今の公斗とは付き合い浅いからアイツの服や女性の趣味なんてはっきり言って分からないわよ?役に立てるとは思えないけど……」
前世ではずっと共にしていた。王子を差し置いたら一番良く知っているとすればそれはゾイサイトである自身だ。
しかし、転生してから共にすごしておらずほぼ他人。何も知らない。
尤も、前世も真面目で寡黙なクンツァイトの女性の趣味を知っているかと言われるとNOだ。
寧ろ、ヴィーナスを好きだっただろう事位しか分からない。真面目もここまで来たら拗らせているだけとしか思えない。
亜美に執着している彩都に人の事など言えないが。
「言われてみれば、そうだわね……」
美奈子とした事が浅はかで迂闊だったと苦虫を噛んだ。美奈子自身もそうだが、現世では最初からうさぎ達と友達だった訳では無い。
戦士として共に戦ってきたことで得た絆。年月がある。
だがどうだろうか?ダークキングダムや石となって一緒にいたからと言っても前世より期間は短い。
ましてや蘇ると思っても無かったゾイサイト達。お互いの“今”の事など話さなかっただろうし、知る由もない。
考えなくとも分かる単純な問題に、美奈子は衝撃を受けた。
「でもま、女の子の服は好きだから見立ててあげるわよ」
好きでも無い相手、いや、寧ろ嫌いな相手に時間を割いているがただ無駄に時間を費やすのも癪だと彩都はただでは起きたく無かった。
公斗の為に綺麗になりたい。彼に認められる服を着たいと悩んでいる美奈子を見た彩都は、単純にワクワクし始めた。
「助かるぅ~~~、流石は彩都っち!」
落ち込んでいたかと思えば浮上して笑顔の美奈子に、忙しい子ねと思いながら服を手に取って見立て始める彩都。
「公斗の趣味は分かんないけど、トレンドは知っているし。これなんかいいんじゃない?」
慣れたようにトップスを美奈子に合わせる。
「このトップスなら、このスカートが合うんじゃないかしら?」
テキパキと上下を合わせる。まるでショップ店員だ。
「うん。アンタにもよく似合うし、公斗も気に入るんじゃない?」
選んでもらった服を持って鏡で合わせる。
最初から自分のものだったかのようによく似合っていて、驚いた。
同時に彩都は一体何者なのかと言う疑問が沸き上がる。
しかしやはり彩都に頼んだ自分の選択に間違いがなかったと相談して良かったと確信した。
「当日はこれで行くわ!ありがとう、彩都っち」
「健闘を祈るわ」
今までは戦闘服や制服ばかりで会っていた美奈子。
初めて見てもらう私服が決まり、美奈子は自信に満ち溢れていた。
おわり