見出し画像

溜息をつくコンビニ店員

コンビニ店員がおなじみの客に隠れてあだ名をつけるように、客もコンビニ店員を一個人として認識している。もちろん出先のコンビニではそんなことはできないが、ほぼ1日に1回は行く会社の下のコンビニでは、店員のことを覚えている。
例えば店長は、実は休日はポーカーをやっている(会社の人がポーカーの会場で出会った)。メガネの日とメガネじゃない日があって気になる。私がいつもスイカ清算でレシートと袋がいらないことも知っている。
しかし会社の同僚とコンビニの話になると、話題になるのはほぼ1人に絞られる。「レシートの君」だ。
彼は毎日疲れている。午前中、昼過ぎは特に疲れていて、しかもそれを隠さない。レジに並ぶと、あからさまに溜息をつく。「はあっ…」と、ここまではっきりと溜息をつく人はなかなか見ないので、毎回新鮮にオッとなる。
なぜ「レシートの君」かというと、レシートの渡し方が独特だから。非常に説明をしづらいのだが、レシートを渡す時に手元で1回転を加え、レシートをぴしっ!と伸ばして文面をこちらに見せつけてくる。気にしているのは私だけではなく、同僚も「あのレシートの人!」と呼んでいた。
彼が回転を加えて見せつけてくれるレシートを、いつも私は「レシートは結構です」と断る。それでも彼はレシートを毎回渡そうとしてくる、おそらくそれはルーティーンで、彼がこちらを「レシートがいらない人」と認識してくれていないから。
彼がレシートを回転させる、あの1回転の運動の力はいつも生かされない。私は溜息をつかれながら、「スイカでお願いします」「レシートと袋結構です」とルーティーンで声を出す。
#日記 #エッセイ

サポートはよりよく生きていくためのあれこれに使わせていただきます。