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#私の仕事「アコーディオン、足りてますか?」BGM生演奏職人

信じられないほど新しいテクノロジーが驚くほどの早さで次々とアップデートされ、世の中に情報と娯楽が溢れている現代社会。その中で世界中で生き残っているのが、今年誕生から220年を迎えた楽器「アコーディオン」ですきっと多くの日本人にとっては「小学生の時に触ったことある」と懐かしく思ったり、「のど自慢の伴奏で見た」という印象があるのではないでしょうか。またはメディアを通して横森良造さん、Cobaさん、そして桑山哲也さん、あるいは今をときめくチャランポランタンの小春さんなど、プレイヤーの顔を思い浮かべる方があるかもしれません。恐らくこの記事を目にする人の殆どがアコーディオンがどんな見た目で、どんな音がする楽器なのか、およそ想像がつくことでしょう。しかし、誰もが知っている楽器でありながら生演奏を聴ける機会が少ない楽器であるという事も言えるように思います。そう、親しまれているのに身近ではない楽器の一つだと思います。私は、そんな楽器「アコーディオン」 を弾いて、その「生演奏」をお届けする仕事をしています。

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某所プライベートイベント「暖炉の火を囲んでワインを飲む会」にて

音楽家には実は専門別に色々なタイプの仕事のフィールドがあります。皆さんがイメージしやすいものはコンサートホールで演奏会を開いたり、ライブハウスで演奏をする「演奏家」でしょうか。確かに歌ったり、楽器を演奏する姿を目にしたり、世界的なコンクールの受賞がニュースになったりしますので、その華々しい姿が印象に残っているかも知れません。逆に目にする機会が少ないものに「レコーディング」というのがあります。歌謡曲やCM、テレビ、映画などの映像に使われている音楽の録音は、様々な要求に応えられる職人的な「レコーディングミュージシャン」たちが日々行っています。けれども見えないところでの作業ですし、必ずしも名前がクレジットされないので、業界内有名人であってもレコーディング専門で人前での演奏をしていない人は、毎日のようにあちこちで音を届けていながら、一般の人々には「顔」が見えないという意味で接点が少ないかも知れません。楽器によっては、誰もが知っているあの曲やこの曲全てを、あの人が弾いているんだなと分かるくらい、ほぼほぼ1人がたくさん扱っている場合もあります。そんな「皆さんが知らない有名ミュージシャン」もたくさんいます。レッスンするのがお仕事の音楽家もいますし、作編曲やエンジニアさんなど音楽に関わる領域は大変広いです。

このような分類でいくと、私はレストラン、ホテル、パーティー会場、各種イベントやフェスティバル、ブライダルなど多岐に亘る現場で、BGMを演奏して空間を演出するのが仕事ですから、さしづめ守備範囲はテーブルミュージック」です。もちろんコンサートや歌の伴奏のステージもご依頼あればいたしますが、お客様に近い距離で、その場に応じた演奏をするのが身上です。アコーディオンは1人でメロディと伴奏が弾けて電源不要で音量が豊か。しかも持ち運びができる素晴らしい楽器で、この仕事に最適です!(ちょっと重いのが玉に瑕。私は10キロ前後の楽器を使うことが多いです)得意な分野は主にフランス、オーストリア、ドイツ、イタリア、スロベニアなどヨーロッパの民族音楽。ざっくり言うと旅番組やグルメ番組に流れて来そうな音楽が得意です。曲名をご存知なくても皆さんを音で外国にお連れしたりビールやワインが一層美味しくなるムード作りをしたりするのがこの上なく好きな事ですし、それを仕事にしていますそして、私はこの仕事が大好きです。

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某ホテル様ワイン会にて

実際の様子はこちらをご覧ください↓

このお仕事をするに当たって幾つか心掛けていることがありますが、演奏家というカテゴリーの中で一番特徴的なのはご来場のお客様の邪魔をしないと言うことが挙げられると思います。つまり「あくまでお客様が主役で私や音楽は添え物」ということです。ご歓談やお食事が目的の場所を、華やかにする事が求められますが、BGMですから決して「自分が主役になる訳ではない。それでいて存在感がなくては意味がない」と言う矛盾を上手く行ったり来たりします。そのためコンサートなどでしっかり演奏を聴いてもらう演奏家たちとはちょっとスタンスが違っていて、最大の違いは「お客様が全く聴いてなくても、反応しなくても一向に構わない」と言うのがあります。そりゃー私も人の子ですから拍手を頂いたり、楽しんでもらえたら嬉しいですけれど、「一曲毎に手を止めて拍手をして頂かなくても大丈夫ですし、お食事の手も止めて聴く必要はありません。熱々のお料理は熱い内に、冷たい物は冷たい内に美味しく召し上がってください。そして、どうぞご歓談をお続けください」というスタンスです。

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都内レストラン様の演奏にて(ギター・河野文彦氏)

そして、もう一つ私が心掛けているのは普段からなるべく曲をたくさん覚えておいて楽譜を見ない事。お店やお客様のご要望によっては歩いて会場やテーブルを廻りますし、野外だったら楽譜が風で飛んで行くようなハプニングでクライアント様やお客様にご迷惑をお掛けする訳にはいきませんから、楽譜は見ないに越した事はありません。基本的に全部暗譜(曲を覚える事)で臨みます。ですから私の頭の中には割と良く使う曲を中心に数百曲のレパートリーがいつでも弾けるようにストックしてあります(でも残念な事に、それらは弾かないとどんどん忘れてしまうので、日常的にある程度弾き続けてキープし続けなければなりません。コロナ禍で仕事がゼロになってしまって以来、スッと出て来なくなった曲が増えたので、お仕事の頻度が増えて日常が戻りますよう「出演のご依頼をお待ちしております!」

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都内にてビールイベント店内演奏。南ドイツ・オーストリアの民族衣装で

さて個人的な偏見ですが、全国にある数多くのレストランさんが素敵な空間を作り、素材の生産者や産地、季節にこだわり、創意工夫を重ねたメニューを卓越した技術で調理し、選び抜いた食器にセンス良く盛りつけて、最高のサービスでお客様に提供するのに、なぜか音楽だけは有線やCDを適当に流してOKにしているように見えます。ワインについてはブドウの畑や生産者までとことん詳しいのに、流れてる音楽についてはお料理のコンセプトとズレた物を垂れ流していたりします。それは、とても残念です。実にもったいない!なぜなら、音楽にはその場を支配する強いメッセージがあるからです。ですから可能であれば、せめて週に一回、あるいは月に一度でもお店のテーマに合う内容の生演奏を取り入れるレストランが、一ヶ所でも二ヶ所でも増える事が私の願いです。

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ホテル様お正月イベントにて

確かに、実際問題としてコストについては色々な議論があることと思いますが、私がお世話になっているフランス家庭料理店ではフランス出身のオーナー様のお考えで、かれこれ足掛け8年ほど月に一回以上は演奏を依頼して頂いていて、もうすぐ100回を迎えます。席数が少ない小さなお店ですが、こちらへのリスペクトをずっと欠かさずにいてくださいます。私もそれにお応えしてオーナーが心を込めて育てているお店が「より本物」になるように、選りすぐりのレパートリーをパリ風にお届けしています。その甲斐あって、すっかりお客様にも定着し、演奏が入る日はいつも満席になっています。お店と私の共同作業が上手くお客様に届いた例だと思います。

その何倍も大きなお店が生音楽に予算を割けないのは、プライオリティが低いからだと思うと悲しくなります。事実、今や有名なホテル様でも生演奏のピアノやハープは回数が削減されたり、自動演奏に切り替わったりしている事が大半です。それでもありがたい事に、私もフランス革命記念日(いわゆる「パリ祭」)前後やクリスマスなどのイベント時期には御指名が重なるほどお声がかかる事もありますから、やはり経営者の皆さんも「特別感」はお持ちなのだと思います。それはとても素晴らしいことなので、だからこそもっと普段から生演奏がある豊かな空間が、より身近なものに感じて頂けるよう、お手伝いしますのでご相談頂ければと思いますし、お話しを引き受けた時には一生懸命務めます。

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ヨコハマ大道芸フェスティバルにて

さて、私のお仕事「テーブルミュージックの生演奏アコーディオン弾き」は、皆さんには何か新しい発見や価値観、違う物の見方をご提供できましたでしょうか?全国のご飲食店のオーナー様!私でなくても構いません。事情が許せば、まずは一度でもお好きな演奏家の生演奏を取り入れて頂けたら幸いです。そしてお客様に、より一層の喜び溢れる空間をご提供されてはいかがでしょうか。そして読者の皆さんがサービスを受ける側、つまり飲食店のお客様として生演奏のミュージシャンに出会う機会ががあってお気に召したら、ぜひお店の方にも「良かったよ」とお伝えください。そうすれば、きっとまた呼んでもらえて、同じお店でお目にかかれるようになる事と思いますから!全国の「テーブル周り生演奏職人」に成り代わってお願いします。

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最後までご覧頂き有難うございました。いつかどこかでお目にかかりましょう!!

#私の仕事

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