来年度の大学入学試験についての要望

 コロナウィルスのため多くの学校で休校が続いています。このままでは,生徒の学習が停滞し,来年度の入学試験の実施も危うい状態です。そのため,受験生・高校生は大きな不安を抱いています。
 そこで「入試改革を考える会」では「入試改革を考える保護者の会」と連名で,以下のような内容の要望書を文部科学大臣に提出することを考えています。

 コロナウィルス感染予防のため7都府県に緊急事態宣言が発出され,全国の6割ほどの学校が休校となっています。さらに,多くの予備校や塾も休業していて受験生や高校生は思うように学習を進めることができません。特に,未習分野がある高校生の場合には自宅での学習で補うことはほぼ不可能です。これは,オンライン授業などが施されていたとしても状況が大きく改善することはありません。オンライン授業等により学校の対面授業を完全に代替することは困難です。そもそも,必ずしも休校しているすべての学校で十全なオンライン授業が行われているわけではありません。

 このような状況に鑑みると,来年度の大学入学試験を予定通りに実施することは極めて困難ではないでしょうか。共通テストは令和3年1月16日と17日の実施が予定されています。この試験に間に合わせるためには年内に試験範囲の学習を終了することが必要となりますが,仮に5月7日から学校の授業が再開されたとしても不可能です。1年分のカリキュラムを十分に履修するためには相当の期間を要します。
 そうすると,4月入学を維持しようとする場合に,地域による不公平,高校生と既卒生間の不公平を排除するためには次のいずれかの対応が必要であると思料します。
1 試験の実施時期を遅らせる。
2 出題範囲を限定して予定通りに実施する。
3 共通テストの実施は中止して個別試験のみで合否判定を行う。
 しかし,現時点ではコロナウィルスの収束の目途がついていません。そうすると,上記1や2の措置をとるとしても具体的なことを即座に決めることは難しいと考えます。3の場合は,ある程度時間的な余裕が確保できますが通常の日程による試験実施の可能性は不透明であるため,事情は同様です。
 さらなる抜本的な解決策の検討が必要になるかも知れませんが,不確定要素の大きい現時点において具体策を確定することは困難だと思います。一方で,時間が経てば経つほど,生徒の不安は大きくなります。そこで,私たちは現時点で可能な次のような対応を早急に執っていただくことを強く要望します。すなわち,
1 学校での授業は,通常の年度と同一の進行速度で全項目が実施されるように配慮すること。
2 オンライン授業等を対面授業の完全な代替とは扱わないこと。
3 来年度の大学入学試験についても,どの受験生にも不公平が生じないようにあらゆる可能性を検討して実施すること。
4 そして,事前にそのような準備のあることを公表すること。
の4点です。4については,緊急事態宣言が解除される前に公表することが望ましいと考えます。共通テストは,受験生・高校生のみならず高等学校,大学へ与える影響も甚大です。最早一刻の猶予もありません。
 受験生・高校生の不安を少しでも払拭できるように,早急の対応を宜しくお願いいたします。

 総合型選抜や学校推薦型選抜はそれぞれ9月,11月から出願が始まります。一般選抜との整合性も調整しながら,これに対しても迅速に手当を行う必要があります。英語民間試験を課している大学も多いようですが,英語民間試験も相次いで実施が中止されています。このままでは大混乱を招きます。これは大学院の入学試験にも同様の影響があります。
 共通テスト,学校推薦型選抜・総合型選抜,一般選抜すべてを考慮に入れた広い視野からの制度の調整が必要であると考えます。そして,その検討過程を可能な範囲で受験生・高校生も含めたすべての関係者・関係機関に随時公開していくことが,混乱や不安を最小限に抑えるために必要であると考えます。

 なお,高校入試についても同様の事態が発生しています。併せて適切な対応をご検討いただくことを要望します。

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