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ハッカーと画家と私

こんにちは。ANRIの江原ニーナです。
普段PodcastMediumなどで四半期のまとめや調達ニュースなどファクトベースでの発信はしているのですが、アンリさんをはじめファンドのみなさんのnoteに感化され、たまには私がいま何を思うのかを紡いでみることにしました。拙文(かつ長文)ではありますが、読んでいただけると嬉しいです。

内容
1. 自己紹介 -バックグラウンドと仕事外での私
2. いま何をしているか、何故VCでありたいのか
3. 心に留めていること、芯になっていること
4. おわりに


自己紹介 -バックグラウンドと仕事外での私

手短に自己紹介をします。今年の1月からご縁があってANRIで働いており、今月からは正社員になりました。(やった~)

生まれ育ちは、くまモンのお膝元こと熊本県熊本市で、15歳の時から19歳までは米国・ノースカロライナ州チャペルヒルに住んでいました。2017年12月に参加したG1カレッジで偶然VCという仕事を知り、さらには同年代のスタートアップ起業家たちに出会い、私自身もスタートアップへの参画を経て、現在に至ります。中途半端に舐められると嫌なので普段ソーシャルでは言わないのですが、現役の大学生で、哲学とか人類学とかをそこそこ熱心に勉強しています。

知的好奇心というか、情報欲がかなりある方だと思っていて、特に自分が気になる分野が見つかると、徹底的に調べたくなります。(半年くらい前からは人工肉、最近はCBDとかが気になっています。)

また、スタートアップのトレンドを、大学で学ぶような学術的観点から捉え直すことも好きで、たとえばブロックチェーンの原点を読んでは文化人類学の所有の概念がついに塗り替えられるのか、はたまた強化されるのかと考えたり、仮想通貨の普及やさまざまなユースケースを観察しては、同学問領域における通貨や価値の議論に想いを馳せたりしています。(ピンとくる人がいればぜひご連絡をば!)

よく、なぜ哲学をやっているのかと聞かれるのですが、「わかりあえない」辛さの手助けとなるのが哲学だからです。スタートアップのみなさんはメタで考えるのに長けている方が多いのであまり偉そうなことは言えませんが、例えば、意思決定における齟齬は、重視するのが帰結なのか過程なのか(肌感として多くの人が帰結だといいそうですが、私の結論は保留とします)が解決の手がかりとなることがあります。これらの乖離は議論の争点や「分かり合えない」状況の創出に大いに寄与するため、哲学が提供しうる枠組みを一度理解することが、辛い状況を乗り越える上での大きな助けと(少なくとも私にとっては)なります。

大学の授業を真っ当に受けて、仕事も手を抜かすに(当然だけども)やっているのですが、どうしてもたまに用事が重なったり試験期間で忙殺されたりすると、「なんでこんなに苦しむ道を選んでいるんだろう」「なんのためにやっているんだろう」と苦しくなってしまうこともあります。仕事に完全に振り切るという選択肢もあったのに、と考えては「大学で人類学や哲学なんてやっていたら遅れをとってしまうのではないか」と悩んでしまうこともあるのですが、それでも学問との両立を選ぶのは、「最後に”私の”人生を豊かにしてくれるのは哲学であり人類学である」という信念をこの1年くらいで築けつつあるからだと考えています。

もちろんこの考えを押し付けているわけではなく、あくまで自分の指針としているものですが、大学を卒業してからも、仕事だけではなく「これが私の人生を豊かにしてくれる」と信じて寄り添えるものを持っていきたいと思っています。

アカデミアトークの最後に、私が時折立ち返る、人類学者クリフォード・ギアツが残した言葉を。

「確信を持てるようにするのが他の人たちの仕事、確信を持てなくするのが私たち[人類学者]の仕事です。」
クリフォード・ギアツ『文化の解釈学』より(原著1972)


いま何をしているか、何故VCでありたいのか

普段は、起業家の方に会ってお話ししたりCrunchbaseや業界地図を見ながら、まだ知らない世界や誰も見ていないひヒーローが描く世界に思いを馳せながら(とはいえ器用ではないのでありあまるほどのやりたいことと、限られた時間の間で思い悩みながら)Good Morning Building で毎日楽しく過ごしています。

ありがたいことにANRIでは、青い私でも投資ができます。尊敬する方々の中に混じっていると、焦ってしまう自分もいますが、青い私だからこそ会える起業家もいるし、最初は右も左も分からない(上下すら怪しいかもしれない)からこそ見えるものがあるかもしれない。どうあがいたって、大先輩がたに知識や経験の土俵で戦うのは正攻法ではないので、都合がいいと言われるかもしれないけど、そう盲信しながら日々を過ごしています。

そして、日々起業家の方に会って話をする中で、VCって最高な仕事だなと思っています。毎日接する起業家は皆、今の社会に少しでも新たな価値を提供しよう、世界を便利に素敵にしよう、と心を燃やす方々です。そんな人たちと毎日毎日接することができて、併走して、一緒に夢を見られる仕事、「最高じゃん!!!」と思うのです。

アンリさんはブログ内、で先日アナウンスした4号ファンドでも1号ファンドのスタンスから一貫して変わらず「誰も知らない起業家の、名付けられてすらいない事業が、リリースすらしていないシードステージに特化」して投資をし続ける、と宣言しています。こんな仕事、シードのベンチャーキャピタルじゃないとできないんです。

というわけで、普段ケーキ食べてばっかりで何やってるかわからないと思われているかもしれない私ですが、心の中では誰よりも闘争心・向上心を持ってやっているし、日々相当に情熱を燃やしながら働いています。私も、誰も知らない起業家と、一番近くで、一緒に駆け抜けられる人でありたいです。(意訳:投資相談、起業相談の連絡いつでも待っています。)

また、ご存知の方も多いと存じますが、アンリさんや河野さんのすぐそばで仕事ができる今の環境は、恵まれているなんて言葉が陳腐すぎるほど最高です。質問すると、いつも優しく丁寧に解説してくれる河野さんや、私がANRIに入るきっかけにもなっためちゃくちゃ頭がいい早口の中路さん、ファンド運用の影の大黒柱で私のどんな話も笑って聞いてくれる中通さん、そしてお腹が空いた時にケーキを買ってくれるアンリさん。(本郷の皆さんももちろん大好きです、後付け感すごいけど。笑)ANRIのメンバーの皆さんには日々、1日も早く、結果で恩返し、しいては恩送りしたいと思っています。

あ、あとGMBの魅力にも触れたいです。
ANRIは渋谷と本郷の2拠点あり、渋谷にあるインキュベーション施設Good Morning Building、通称GMBは、なんと美味しいホットサンドが食べられるカフェがあるだけではないのです(今、期間限定で、自家製鶏ハムにピリ辛の豆板醤とチーズの相性が最高な新作ホットサンドが出ています)。最高of最高な起業家の方々や、シリアルの大先輩、鬼才デザイナーのタカヤ・オオタさんなど魅力的な人ばかりが入居しています。特に、年齢の近い起業家とは親友のような関係になったり、日々顔を合わせて他愛のない会話をするうちにファミリーだなぁと思えるようになる人もいたり。そして彼ら彼女らが日々命を燃やすように働く姿をそばで応援できます。GMBを卒業した起業家がふらっと遊びに来ることもあり、いいコミュニティ、いい空間だなと思います。

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(今年の夏の写真。仕事終わりに屋上で語り合うこともあります。プライスレスな時間!今はちょっと寒いけれど。)

GMBに遊びにきたい方、美味しいコーヒーを飲みながらお話ししましょう☕️

長くなりましたが、投資方針としては、今は特に投資したい領域などはそんなに絞っておらず、一期一会とサプライズな出会いを大切に、広く分野を見ている段階です。一旦は、(自分の中で大きなテーマを見つけて深掘る努力を惜しまないのは前提として)領域は特に絞らずやってみようと思っています。方針なども、尊敬する先輩方の色々なスタンスを学びながら、軸を固めていきたいです。連絡待っています!

心に留めていること、芯になっていること

去年の秋頃、まだANRIに入る前のこと。色々な事が重なり、心を病んでいた時に、アメリカ時代にお世話になった恩師の方から、ポール・グレアムの『ハッカーと画家』の一節がメッセージで届きました(後に本も送ってくださいました。)このときいただいた言葉が、ずっと私の芯となっているので紹介します。

愛のある激励の言葉とともに引用されていたのは、以下の一節です。

ぼくがこれまでの10年間でやってきた仕事のほとんどは、ぼくが高校生の時には存在していなかった。世界はどんどん変化しているし、変化のスピードも速くなっている。こんな世界では、決まった計画を持つことはあまりうまくない。

それでも毎年5月になると、全国津々浦々の卒業式で決まりきった演説が聞かれることになる。テーマはこうだ。「夢をあきらめるな。」ぼくはその真意を知っているけれど、この表現は良いものじゃない。だって、早いうちに計画を立ててそれに縛られることを暗示しているからね。

コンピュータの世界では、これに名前までついている。「早すぎる最適化」というんだ。別の言葉で言い換えると「大失敗」ということだ。演説ではもっと簡単にこういうべきだろうね。「あきらめるな。」

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そしてもう一つ、同時期に母が送ってくれた、臨床心理学者メグ・ジェイのTEDトーク、『30歳は昔の20歳ではありません

内容はぜひみなさんにも見て欲しいと思うのですが、母は、「もちろん今の人生を後悔してはいないけど、私が若いときに、これを知っていたらなぁと思う時がある」というメッセージとともにこのリンクを送ってくれました。こんなこと、誰も教えてはくれなかったし、こんなこと考えたことなかった、と思うのだそうです。

この二つは一見すると相反するようでもあるのですが、私はバランスを見つけるのも可能だと思います。

まとめると、自明ではありますが「時間は有限であること」「私が”私”を生きられたと思えるようなベストな未来に近づくためには、今何ができるのか」といったことを念頭に置いた上で、「”早すぎる最適化”をしないこと」。将来のことを考えるのはあまりに不確実性が高すぎるゆえ、「私はきっとこれに向いてるんじゃないか」と、思考停止のための言い訳を仕立て上げ、そのほかの数え切れないほどの選択肢を省きたくなってしまいがちです。小さく収まってしまうのは、楽な選択肢です。でも、このような弱さを自分で認識できているからこそ、向き合ってバランスを見つけるために思考のクセなどの自己理解に努めたい・・と奮闘しています。

起業家と伴走して、それでいながら誰よりも挑戦していく上では、自分自身が早すぎる最適化をしてしまっては可能性を追求し切れないし、「今」に忙殺されて近視眼的になっていては夢に向かうロードマップは引けないでしょう。

これは自戒であるだけでなく、日々ありとあらゆる意思決定をする起業家が「これでいいか」となってしまいそうな一瞬のタイミングを、やな奴と思われるかもですがしっかり突いていきたい、という意味も含め、「早すぎる最適化」と「30歳は昔の20歳ではないこと」は意識したいところです。

何者でもない私が偉そうには言えませんが、同世代の皆さんにはぜひ『ハッカーと画家』は読むのをオススメするし、TEDトークも見ていただきたいなと思います。

(補足までに、最適化しないとか色々言いながらVCに絞っとるやんけ!という反論は想定しているのですが、本を読んでTEDトークも見てからの反論は受け付けます。)

ぼんやりしてしまいましたが、この二つ、特に最適化問題は、(早すぎる最適化が悪いと批判するつもりはめっぽうありませんが、)キャリアにおいても、仕事においても、起業家の相談に乗って話をする上でも、あらゆる場面において、大切にしたいと思っています。

おわりに

思いの丈を、思うがままに書き綴っていたら、当初予定していたよりも長い文章になってしまい、かつ若干ぼんやりしてしまった感が正直否めません...。(笑)

このnoteは、数年後に読み返すと恥ずかしいものになるでしょう。でも、いつだって昔書いたものを読み返すと、少し成長した自分が「青いなあ」「生意気だなあ」と笑うのだから、今回は思い切って今思っていることを書いてみました。読み返して恥ずかしくなれるくらい、日々新しい挑戦をして、前に、前に、進んでいきたいものです。

あらためて、尊敬する皆さんの元で働きながら、これでもかというほど食らいついて、知見を吸い取りとっていきたいです。私の今の状況と同じ環境に仮に他の誰かが置かれたとして、その人が得るよりも何十倍ものものを吸収したいし、絶対負けたくないし、地を這ってでも泥水を啜ってでも、何が何でも誰よりも強い意志を持って、貪欲に、起業家と一緒に上を目指していきます。

おしまい。

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最後に一瞬宣伝を!起業相談、資金調達の相談がある方は遠慮なくDMください!お待ちしています〜!

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