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今こそ日本のDeepTechの夜明けぜよ

どうも、ベンチャーキャピタルANRIの鮫島です。日本でも再び脚光を浴び始めた大学発/DeepTechベンチャー。僕は全国の大学のラボを回って研究者の方々の技術シーズを見つけて、その技術をもとに会社をゼロから立ち上げるところから支援しています。例えば、量子コンピュータのQunaSysさんやリキッドバイオプシーのIcariaさんは大学の先生方に起業を提案して、その後社長候補を見つけてドッキングさせてベンチャーをゼロから立ち上げたという経緯です。

最近IT系の起業家の皆さんに大学発ベンチャー/Deeptechってどうなってるの?って聞かれることが(ごくたまに)あるので、簡単に思っていることをまとめてみました。

(1)日本のスタートアップ業界が抱えるジレンマ

僕がVC業界に転職した時にまず驚いたのは日本では「スタートアップ」と言うとIT系が殆どであったことです。そこには日本とアメリカの「スタートアップ」の歴史の違いがあると考えています。本来スタートアップはIT産業だけをターゲットにしたものではなく、ITはスタートアップの歴史の中で一部のトレンドに過ぎないと思います。

日本では90年代に「渋谷」(ビットバレー)構想からスタートアップ文化が始まった為に、日本では良くも悪くもスタートアップ=ITという認識が刷り込まれてしまい、「大学発ベンチャー」というIT産業以外の産業を一括りにしてしまい、自ら不要な境界線をひいてしまっている気がします。

一方、アメリカのスタートアップの歴史を紐解くと、新産業のトレンド自体の変遷に伴い、半導体(Intel 1968年創業。以下創業年を記載)→PC、ソフトウェア(MS 1975年、Apple 1976年)→バイオテック(Genentech1976年、Amgen1980年)→通信・モバイル(Cisco1984年)→IT(Yahoo 1995年、Google 1998年、FB2004年、Twitter 2006年)と移り変わってきています。アメリカのスタートアップやVCの人達と話して感じるのは、全ての新産業がある意味"Tech"であるし、それがバイオだろうがITだろうが関係ない。日本のようにそこに境目を殆ど感じません。

実際にアメリカと日本のスタートアップトレンドを見てみると違いがよく分かるかと思います。日本は未だにITに50%投資していますが(上図、出典:VEC)、アメリカの直近の上場社数(2019年上半期)は既に70%がバイオ/ライフサイエンスとなっています(下図、出典:WSGR IPO report)。アメリカではLyftやUber、Zoomの活況にわいた2019年上半期でしたが、よくみてみると、バイオ/ヘルスケアの勢いの方が凄まじいことが分かります。

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(2)変わりはじめた日本、何が不足しているか。

そんな中、日本でも伊藤レポート2.0が提示され、これからバイオ中心に大学発/DeepTechベンチャーが売上利益だけではなく、研究開発内容を適切に評価される時代に変わろうとしている、まさに追い風が吹いている状況です。

それでは制度が整っただけで変わるのか。それに対して答えはNoだと思います。必要なのは経営できる起業家、つまりIT系の起業家やスタートアップで勤務経験のある若い皆さんの力が必要だと思います。経営できる起業家によって成功確率をあげれるはずです。実際に最近では若手研究者を中心に事業化/起業の興味関心は大きくなっていますが、一緒に伴奏してくれる起業家が足りないという話はよく聞きます

日本の大学発ベンチャーの歴史を簡単に紐解くと、まず大学発ベンチャー1000社計画というものが2000年代に立ち上がりました。然し乍ら結果は燦々たるもので、スタートアップを大学の研究費獲得の為の器かのように錯覚し大学教授がスタートアップ経営者を兼務して会社の「経営」を行わずに「研究」したことが主な原因と考えられています。この時代は大学発ベンチャー1.0と言えると思います(出典:文部科学省)

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その後、ペプチドリームさんやサイバーダインさんのIPOにより大学発ベンチャーに再度注目が集まりました。まさに大学発ベンチャー2.0です。他にも看板教授の先生方のベンチャーが複数生まれ成功しました。

一方、いま僕が大学や研究機関を回って感じていているのは大学発ベンチャー3.0とも呼べるような現象で、それは看板教授ではなく、若手研究者の方々の起業への関心の高さです。彼らはアカデミアでもきちんと実績を出した上で事業化を考えており、そのためにはベンチャーを一つの手段として考えている。また、ベンチャーは兼業して片手間で成功できるほど甘くはないことも理解しており、外部の起業家と組むか研究者の道を一旦離れてフルコミットでベンチャーに打ち込むことを考えています。

(3)何をすべきか

日本ではIT系ベンチャーを中心に渋谷では起業家候補の人材が豊富ですが、例えば東大周辺の本郷では研究者はいるものの起業家候補人材が不足していて、渋谷と本郷が離れていてそれぞれの「村」ができてしてしまっているのが課題だと感じています。そこで今後はその村の垣根を取り払って、渋谷村の起業家の方々と本郷村の研究者の技術シーズをドッキングさせ、新たな大学発ベンチャー3.0を次々と作り出すことが重要だと思います。(極端には、「大学発ベンチャー」って言葉がなくなったらこの試みが成功したとも言えます)

ANRIは渋谷と本郷にそれぞれインキュベーション施設を構えて起業家と共に活動していますが(渋谷はgoodmorning building、本郷はNestHongo:赤門の真向かい)将来的にはその壁を取り払って融合していくべきと考えています。

(4)技術シーズはあるのに起業家がいなくて困ってるので連絡ください!

以上、僕は大学や研究機関を回って革新的な技術を見つけてベンチャー創業支援をしています。既に複数の技術シーズを見つけていますが、経営者候補がいなくて困っています。科学への知的好奇心とやる気さえあれば、大学生でも全然ウェルカムですので、世界を変える技術シーズの事業化に関心ある方はどしどしご連絡ください!!



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