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三宅町DX推進の裏側には複業人材の活躍が!DXを成功に導くための秘訣とは?

奈良県三宅町では、2020年12月から3月末までの4ヶ月間、行政に複業人材を登用するプロジェクトを行いました。「DXアドバイザー」「人事・採用戦略アドバイザー」「広報戦略アドバイザー」の3職種で、複業人材の方々が活躍。

その中でも今回は、DXアドバイザーとして参画した河上泰之さんにお話を伺いました。わずか4ヶ月の間にものすごいスピードで進んだ三宅町のDX。その裏側に迫ります!

*プロフィール

河上泰之_DX

河上泰之氏
慶應義塾大学大学院SDM研究科を優秀賞で修了後、日本IBM、デロイト等を経て現職。 IBMではデザイン思考チームの立上げに専門家として従事し、社内講師として数百名を育成。顧客との共創・議論ではよく指名され、東京電力様とのデジタル化推進では3000のアイディアを共創し顕著な成果を得た。独立後はトヨタ自動車様等の支援や、東京商工会議所でDX等の講師を務める。顧客のDXや新規事業を大成功させJapan as No.1ともう一度世界に言わせることが人生の目標。



民間の能力が行政で通じるか

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ーー三宅町の複業プロジェクトに参加されようと思ったきっかけについて教えてください!

大学院の頃に地方自治に関する論文を書いており、もともと地方や自治体に関心がありました。論文では、地方議会議員の選挙広報をどう変えたら”人を選ぶ”ときに役に立つものになるか、ということを研究していました。

地方の行政は、我々の生活に密着している割に不透明性が高い。そんな世界で、複業人材を使ってでも変わろうとしている三宅町に興味をもちました。

また、民間企業でコンサルタントとして働き培った能力が、行政でも役に立つのかどうか挑戦したく応募しました。

ーー実際に、どのような能力や知識が役に立ったと感じますか?

僕は、人が見逃すようなちっちゃな「はぁ?」という疑問に気づいて、集めることができます。その「はぁ?」という観点を整理し「あぁ!」という納得に繫げることが得意です。

たとえば、今回職員の方々にDX勉強会を開いたのですが、DXの定義を整理する際にこの能力が役立ちました。経済産業省が出しているDXの定義は

企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを元に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること。
出典:「DX推進指標」とそのガイダンス(経済産業省)より引用

わかるようでわからない、小さな「はぁ?」がたくさんあります。しかしこの定義を自治体職員が理解しなければ、DXは始まりません。はぁ?という疑問を、あぁ!という納得に繫げるために、

DXの目的は、競争の優位性を確立すること。そのために、ビジネス環境の激しい変化に対応し、売るものや売り方、業務のやり方も対応するべきだ。

と職員の方々が理解しやすいように整理しました。この民間企業培ったわかりやすく整理する能力が、行政にも役に立つことがわかったのは良かったです。


まずはDXの理解から

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ーー84個の課題を抽出して、そこから173のアイディアを提示したと伺いました。多くのアイディアを出すために、どのようなプロセスを経たのですか?

4ヶ月の間、ものすごいスピード感で動きました。2020年の12月にスタートし、まずは各課の困りごとを集めました。デジタルを使わなくても解決できることはたくさんあるので、何でもいいからとにかく困っていることを出してくれと。

課題が出たところで、1月にDXとは何か?という勉強会を開き、職員全員のDXに対する認識を揃えました。そして、森田町長を含めて課題に対する解決策を議論し、各課で取り組む課題を全員で決めました。

そこからわずか2ヶ月間で、産業管理課では道路の異常を住民から回収するためのLINEを開設しました。

森田町長から職員さんの変化について伺ったのですが、問題解決や業務改善を考える上で、現状を細かく分けて考えてみるということがなんとなく分かってきたとおっしゃっていただけたのは嬉しかったです。

ーーデジタルを使わずに解決できるお困りごとも回収したのはなぜですか?

DXにつながるかどうか、考えるだけ無駄なんです。大切なのは、とにかく解決しなければならない課題を、1番効率的な方法で解決すること。

たとえば、出していただいた課題の中に、年末調整のチェックが大変だという課題がありました。でもそれは、全員から毎年同じ項目をゼロから集めてチェックしているから大変なのです。去年だしてもらった資料をコピーして配り、変わったところだけ赤ペンを入れて返して貰えば、赤が入っているところだけ直せばいいじゃないですか。

このように、デジタルを使わなくても、業務のプロセスを変えるだけで解決できることはあるんです。

ーー産業管理課では4ヶ月という短い間でLINEを開設したとのことですが、本当にスピード感がすごいですね。

IT関連の企業に電話をかけることなく、まず自分達でやり始められたということ。誰も名前の聞いたことがない日本で2番目に小さい町が、より効率的に能動的にと変わろうとしていること。それだけでも、彼らはすごくかっこいいと思います。ヒーローです。

DXの理解からはじめるというように、正しい順番で進めると、わずか4ヶ月の間にPoCを0円で、それも行政官だけで進められるようになります。

しかしLINEを開設しても、住民が道路の異常を発見したときにLINEで知らせてくれなければ意味はありません。いかに住民に使ってもらえる環境を整えられるかどうかで、このPoCは成功か失敗かが決まります。LINEの使い方がわからない住民には、やり方から教えるなどのサポート体制を強化する必要があります。

自分が道路の異常をLINEで伝えることで、道路が整備され、街が改善されたんだ、ということを住民に実感してもらうことが大切です。


お金では買えない価値を、自治体複業で

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ーー取り組みの中で大変だったことや、今後三宅町では第二期のプロジェクトが始まりますが、二期生に期待することはありますか?


ゴールが明確ではなかったことが大変でした。コンサルタント出身なので、一定の期間の中で達成すべきゴールを決めて、そのゴールを達成する為に死に物狂いで動くことが体に染み付いていたからです。

三宅町のDXは何をゴールに設定して行政サービスを変えていくか。その議論ができず、やりきれなかったというのが第1期でした。そこは悔しい気持ちがあるとともに、第2期のDXアドバイザーの方に期待したいです。

ーーこの複業プロジェクトに参加し、本業でも活きたと感じたことはありますか?

民間で培った能力をそのまま転用しただけで、日本を変えることに繋げられる。このフィードバックをいただけただけで、僕にとっては価値のあるプロジェクトでした。この感情は、お金では買えないんです。

行政が変わりたいと言ったときに、外部人材としてお手伝いするという部分で価値を出せると実感できたため、他の町の人達にお話をするときに自信がつきました。自信をもって何かに取り組めるかどうか。それができるようになったのは、自分にとってすごく大きな価値です。この実感は複業でしか得られないと思います。

ーー三宅町の経験を活かして、こんな事にチャレンジしたいとか、こういう自治体にチャレンジしたいとかございましたら、お伺いしたいです。

自分たちの町を、2060年になっても地図に載せ続けるという強い意志をもった自治体を支援したいと思っています。

10月から、日本経営士会とDXの教科書を作るプロジェクトが始まります。これは、中小企業向けにDXの大まかな方向性を示すためなのですが、自治体向けに自治体用の教科書を作るということにも挑戦してみたいなと思っています。そんなことができるフィールドがあれば、挑戦してみたいです!

また日本を変えたい、地方をよくしたいという根源的な想いとして、僕は自分の息子に胸を張りたいんです。人口が減っていくことが、数字上確定している未来。変わるか変わらないかは別として、頑張ってみたと挑戦する姿を見せたいです。

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取材・編集:高岡 慧

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