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遠いようで、近い?外国人の友達 |『はじめましてのダンネバード』(くもん出版)工藤純子・著 マコカワイ・絵  を読んで

日本語をはなすオモシロ外国人?

「ミトチャ」って何語かわかりますか?「ミトチャ」「ミトチャ」と最近コンビニでバイトをしている甥っ子が度々言うので聞いてみたらネパール語で「おいしい」だそうです。バイト先にはネパール人を含め、アジア系の人もけっこう働いているそう。また、最近の小学校のクラスにも、学年に何人かは外国人の子供がいるようです。みなさんの近所のコンビニでも、アジア系など外国人の店員さんを見かけますよね。それだけ外国人は身近な存在だと感じます。

 この物語はそんなネパールからやってきた女の子エリサが転校してくるところから始まります。最初はなじもうと日本語を話そうとしていたが、みんなに笑われ学校に来れなくなってしまう。そんなエリサを見て、クラスメイトの蒼太とゆうりは、なんとか仲良くなろうとエリサちゃんのお家がやっているネパールレストランに行ったりと行動を始める、、、という物語。
 どうして、転校生のエリサちゃんが最初に自己紹介をしたとき一生懸命日本語で話したのに、みんな笑ってしまったんでしょうか?カタコトで、子どもみたいな話し方だったから?でも、この反応も実は当然だと思います。ちょっと昔までは大人がテレビで日本語を下手に話すガイジンを見て、笑っていたのですから。
 00年代くらいまでは、身近に外国人が働いている日常風景はあまり見ませんでした。逆に、その頃は外国人と言えばテレビで見るいわゆる「ガイジンタレント」でした。ケント・デリカット、オスマン・サンコン、デーブ・スペクター、ボビー・オロゴンなどなど。
 彼ら彼女らはオモシロガイジンタレントという存在でした。なにが面白いかというと、その人達の日本語がたどたどしいところ。当時はカタコトの日本語で話す外国人を面白がる、そういう風潮がありました。ボビーオロゴンなどは本当はもっと流暢に日本語が話せるのに、わざと下手に喋っていたという噂もあるほど。そんな「ガイジンタレント」を私たち日本人はかわいいとか、ひょうきんでおもしろい、としていました。

同じを求めすぎる日本の学校

 大人がそんなだったら、子どもたちだってカタコトの日本語を話す転校生がやってきたらそりゃ笑いますよね。でも、日本人が外国に留学して逆の立場になったらどうでしょうか?
 この物語の後半でクラスメイトの住田くんはシンガポールに転校した時、下手な現地の言葉を話しても誰にも笑われなかった。外人だから違うって思われなかった。と言っています。
 これが大事なんだと思います。日本人が外国に行った時は言葉が下手でも笑われないし、違いも受け入れてくれる。なのに、逆の場合は笑われる。言葉の上手い下手を気にしているのは日本人だけなのかなと思いました。言葉だけでなく日本人は何かにつけて自分たちと違う人に敏感すぎませんか?それはみんなが同じになることを求めすぎる日本の学校のせいかも。普段から、制服とか、髪型とか、決まったカバン、決まった靴、ハンカチ、テイッシュのチェックとか常に同じになる事を求められます。まるで優等生製造工場ですよね。
 だから外国人に限らずちょっとでも違う友達や、できない友達を笑ったりいじめたりしてしまうのかなと思います。もう少しアバウトでもいいですよね。宿題すら海外の学校には無いそうですよ。それよりも、子供なんだから、失敗してもいいし、人との違いを気にしない空気感を学校では作ることができるといいなと思います。

子供たちは変化する

 そんなこともあり、エリサとは険悪になって壁ができてしまいます。その壁はとりはらえるのか?そんな時、お店に行ってお手伝いをして働くことを学ぶ「弟子入り体験」が行われました。蒼太はエリサちゃんのネパールレストランで働くことに。このシーンがとても面白い!装画担当のマコカワイさんの絵のおかげもあり、お店の雰囲気や、蒼太ががんばっている姿、料理の絵もおいしそうで、本からカレーの香りがしてきそう。エベレストや三角の国旗などネパールの文化を知ることで違いもわかり、興味を持てるようになります。そして。くじけそうになりながらもお店の“学校にはないある空気感”に助けられてがんばれました。そして、エリサちゃんが努力をするだけじゃなく、蒼太がこっちからもコミュニケーションする必要があることを知ります。そして「ダンネバード」という言葉を覚えます。
 最終的には、蒼太をはじめクラスの子供たちは自分達で話し合いながら、エリサちゃんに対する態度が少しづつ変化していくところに未来を感じました。
 私たち大人が過去に作った「違いを笑う」という風潮は間違いでした。「ガイジン」「ガイジン」と言って笑っていたことに反省です。そんな過去の風潮に疑問を持ちはじめ、自分たちなりの交流のやり方、受け入れ方を話し合う姿を読んでいて子供たちみんなを褒めたくなりました。

 そういえば、最近はテレビでカタコトの「ガイジンタレント」をあまり見かけません。今の子供達にとっては、外国人は普通に友達として存在しているから、笑う対象では無いのでしょう。これからの子供達には文化を受け入れるとか、違いを受け入れるとか、小難しい理由は必要ないのかもしれません。友達になったのがたまたま外国人というだけ。とりあえずネパール語でいえば「ダンネバード」と「ミトチャ」。どこの国へ行ってもまずはこの「ありがとう」と「おいしい」の二つを覚えれば、友達になる最初の一歩を踏み出せるはずです。

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