やめたっていいじゃない。②

野球部をやめたその後。

 前回も少し記述しましたが、野球部を辞めた年、つまり高1はスポーツクラスにいました。

しかし、学校のルールとしてスポーツクラスにいる以上、運動部(野球、陸上、柔道など)に所属していなければならないので、僕は、2年生になり転科することとなりました。

新しいクラス

 スポーツクラスの人は、少し怖いというイメージがあったのか、新しいクラスの友人たちは、僕に少し怯えていたように見えました。でも僕からすると自分のことを知らない場所に未知の島に到達した気分でした(この人たちはクラスは高1からみんな一緒)。

 ですが次第に打ち解け、いつしか鬱病のことなんか忘れて卒業していました。今でも遊んだり飲みに行く仲です。僕は、僕のことを受け入れてくれた彼らにも頭があがりません。
 よく、「鬱に耐えて大学まで進学したね」と言われることもありますが、こればかりは家族、先生、スポーツクラス、新しいクラスの友人という周りの人が枯れた僕に水をやり光を浴びせ生かしてくれたんだと思います。  

卒業後
 

 大学進学と同時に、僕は、母校でチューター(生徒の進路相談や補習などをする人)というアルバイトを始めました。その時、ある女の子から部活をやめたいという相談を受けました。おそらく僕が、野球部を退部した経験があるから相談に行ってみたらと先生方から言われていたんだと思います。 
 

部活をやめた者として。

 僕はなるべく、客観的かつ箇条書きのように部活をやめた時のことや、やめた後のできごとなどを話すことにしました。
 なぜこのようなスタンスをとったかというと僕とその子の人生や考え方は当然違う。それなのに、「僕はやめて気持ちが楽だったからやめたほうがいいと思うよ」とやめた経験者としてやめることを勧めるのは無責任だと思いました。また、僕はたまたま良い人たちに巡り会えたけど、この子も必ず周りの人に恵まれるという保証をすることができないとも思いました。
 だから「やめて気持ちが楽になった。」という良い点だけでなく、「野球部の試合を見てると自分も野球をしたくなった。」などやめて後悔していた点をちゃんと話をしました。後は僕がしてもらってたように、部活以外の事でもその子の話をひたすら聞くことを心がけました。
 結果的にその子は部活をやり続けましたが、「なんだ、結局やめなかったんだ」とは1ミリも思いませんでした。僕は、それはそれでいいと思います。 なぜなら自ら考え決断できたことがその子の頑張ったことだから。

やめることは悪なのか。
 

 よく、学校では部活を続けることが正義だという風潮があります。
 なぜなんだろうと常々感じていましたが、大学の就活や教員試験でその理由がわかりました。


所属していた部活動を書きなさい。
 

 一般企業もそうですがとくに、教員試験などの場合はこのようなことを書かされるケースが多い。
 教員の場合は、部活への理解力、協調性、その部活動に関する専門性。一般企業は、継続力、協調性。などの能力が見られているのだと思います。
 僕は、その時わかりました。もしかしたらこれを見越して両親や先生たちは部活をやらせたり、続けさせようとしていたのかなと。それに付随するかのように部活をやめる=継続力、協調性がない=悪なんて方程式になったのかなと。


やめてみて僕が得たもの
 

 やめて、後悔してることも少なからずあります。ですが、結果的に僕の場合はやめるという決断によって気持ちが楽になると共に、多くの人とめぐり逢うことができました。もし、あの時やめていなかったらこのような出会いはなかったかもしれません。また、僕は義務教育段階まで全く勉強をせず脳のメモリがガラ空きだったので、高校で勉強する時間が増え、わからなかったことがわかる気持ちよさを知りました。

 そして、僕がやめて得たものがもう一つ。それは「物事をやめる勇気です。」一回やめたことで人生中でやめるという選択肢が出てきた時に抵抗がなくなりました。グループLINEをやめてみたり、アルバイト色々やってはやめてみたり、でも結果的に、もう一度適切な距離感で友人とコミニケーションが取れたり、様々な業種の仕事内容を経験できたり、僕にとってはやめることがプラスに働いていました。
 

やめたっていいじゃない。

 日本の社会性ゆえに続けることは尊重され褒められたことなのかもしれません。ですが、無理やり誰かにやらされるように続けるているというのは一番何もならないと僕は思います。もし、無理やり続けて辛いなら「やめる」という選択肢も視野に入れてもいいのではないでしょうか。あの日と同じくやめた後を保証はできませんが、やめることで見えることがあり、やめることで出会える人がそこにはいるかもしれません。
 
                  灰色の国

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