Yさんのこと・詩集
九段坂病院に入院中さんざんお世話になった中学時代の友人Yさんは、寝たきりになったご両親を長年ひとりで介護して、看取って、今はひとり暮らしをしている。
3月に電話したら、強風にあおられて転んで腰を打って動けないと言っていた。
先月また掛けたら、それはいったん治ったけれど、今度は家の中で転んでまた腰を打ったと言う。
高齢者は家の中で転ぶのが危ない。
私も外を歩くときは杖をついているので大丈夫だが、家の中で転んだり転びそうになったことが何度もある。脚が弱いからよろけてしまうのだ。
幸いいつも布団の上に尻餅をつくだけで怪我はしないで済んでいる。
Yさんの腰は癖になっていてよく傷めるらしい。
リハビリで病院に通っているが、カートを押していくのでエレベーターじゃないと移動できないから、電車の乗り換えが大変なのだそうだ。
痛くて動けないときに、私が近くにいたら何かしてあげられるのに、彼女の家まで私の家から電車を2回乗り継いで1時間半も掛かる上、駅から15分ぐらい歩くので、とても行かれない。
人の世話をしに生まれてきたような人で、楽しみと言えばテレビを見ることぐらい。
「noteであなたのことを書いたのよ」と言っても、メールができないのでリンクを送れないし、ネットもあまり得意じゃないし、携帯をスマホに変えたら使い方がわからないと言う。
docomoの教室があるけど開催日のタイミングが悪く、いつも歩けないときだから行かれないのだそうだ。
端末の機種を聞いたら、どうもスマホじゃなくガラホらしい。
以前、弟もガラホに替えて使いにくくなったと言っていたが、高齢者はガラホに機種変させられて、結局携帯でもないしスマホでもない中途半端な端末を買わされるのだ。
私はガラホは使ったことがないが、見ればなんとかなりそうだし、わからなければ自分のiPadで検索すれば大抵のことは分かる。
近くにいたら見て教えてあげたり、設定してあげられるのに。
お世話になるばかりで、何もしてあげられないのが申し訳ない。
彼女はとても優秀な人で、中学時代から成績が良かったが、東女の哲学科を出ている。
詩集やエッセイ集を出していて、私は2冊もらって読んだ。
実は私も高校卒業記念に詩集を出した。
タイプ印刷の正方形の小冊子で、薄紫色の表紙をつけてきれいに製本してもらった。確か200部作ったと思う。
それを卒業式直前に友人たちが手分けして、職員室や校内の生徒たちに配ってくれた。
読みたい人はもらって読んでくれればいいし、お金がある人は10円でも20円でもカンパしてくれれば嬉しい、というスタンスで。
タイプ印刷の費用は卒業後の3月に地元の本屋でアルバイトして払ったが、ほとんどの人がカンパしてくれたので印刷費用の足しにした。
自分も詩を書いて自費出版した先生が、自分用に1冊だけ手元に置いていたその詩集をくれた。
校長室へは自分で持っていって校長先生に渡した。
校長先生からは、「書き続けなさい」という言葉をいただいた。
後日、私の詩集を読んだ人から手紙が届いた。
差し出し人は私を知っているらしい男子生徒だったが、匿名なのでだれかはわからなかった。
内容は詩集を読んだ感想と、私に対する好意的な評価だった。
大学に入ってからも詩集を作った。
今度はガリ版印刷で、大学ノートと同じサイズ。表紙は色画用紙を使った。
自分がどんな詩を書いていたのか覚えていないので、読んでみたいが、残念なことに今は手元に残っていない。
上の写真はYさんの詩集とエッセイ集。
写真を撮るために出したついでに、エッセイ集の方をいくつか拾い読みしてみた。
前にも読んだことはあるが、内容はすっかり忘れている。
読んでみたらどれも面白いので、Yさんもnoteをやればいいのにと思って、電話を掛けて勧めてみた。
Yさんはガラホでメールができないし、ノートPCを持っているが使いこなせていないから、そっちでもメールができない。
まずはPCでメールができるように、私がリモートで(電話で)教えてあげると言ったのだが、イマイチ乗り気になれない様子。
寝たきりのご両親の介護に明け暮れて、長い間ものを書いたり読んだりすることと無縁で過ごしてきたから、新規に何かを始めるのは億劫なのだろう。
「じゃあ、無理には勧めないけど、そのうち気が向いたら、いつでもいいから私に電話して」
そう言って電話を終えた。
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