月ヶ瀬 杏

恋や青春のお話を書いています。 アンソロジー書籍収録、コミカライズ原作、女性向け恋愛(…

月ヶ瀬 杏

恋や青春のお話を書いています。 アンソロジー書籍収録、コミカライズ原作、女性向け恋愛(電子書籍)など商業作品ございます。 詳細はこちらから→https://lit.link/anntsukigase

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  • 創作大賞応募作『夢から醒めて、逢いに行くから』

    創作大賞に応募している恋愛短編です。

最近の記事

『夢から醒めて、逢いに行くから』 第7話

《第7話》  授業のあと、バイトに向かうために山口より先に席を立つと、講義室を出たところで同じ学部の西田さんに呼び止められた。  一年生の頃から同じ講義をとっていることが多くて、席が近ければ話す。だけど、特別仲がいいわけでもない。そんな彼女が、「桐島くん、ちょっといいかな」と改まった様子で声をかけてきたから不思議に思った。 「うん、少しなら。俺、これからバイト行かなきゃいけなくて」 「あ、そうなんだ……」  講義室の掛け時計でちらっと時間を確かめながらそう言うと、西田

    • 『夢から醒めて、逢いに行くから』 第6話

      《第6話》 「そういえば琉駕、最近あの子につきまとわれてないよな」  バイト先のシフト変更のラインに返信しながら日替わり定食を食べていると、俺の向かいで同じく日替わり定食を食べていた山口が、思い出したようにそう言った。 「あの子って?」  鯖の塩焼きを箸で突きながら聞き返すと、山口がつり目を細めて眉を顰めた。いつもの倍増しで人相が悪くなっている山口を見て笑うと、「とぼけんなよ」と不機嫌そうに言ってくる。  山口が言う「あの子」は、もちろん大内優芽のことだ。入学してき

      • 『夢から醒めて、逢いに行くから』 第5話

        《第5話》  バイト先まで向かう道中、大内優芽はいつも以上にご機嫌だった。 「こうやってふたりでひとつの傘に入って歩いてると、わたし達付き合ってるみたいですね」  俺を気遣って少し高い位置で傘を持った彼女が、嬉しそうにこちらを見上げて笑いかけてくる。 「ちょっと傘に入れてもらったくらいで、勝手に付き合ってることにされたら困るんだけど」 「それは誰かに誤解されたらって意味ですか? 今さらこんなこと聞くのもおかしいですけど、リュウガ先輩って彼女とか……、もしくは好きな人と

        • 『夢から醒めて、逢いに行くから』 第4話

          《第4話》  四限目の授業を受けている途中、何気なく窓のほうに視線を向けた俺は、雨が降っていることに気が付いた。  今日は授業が終わったあと、17時からコンビニのバイトが入っている。バイト先までは大学から徒歩10分だが……。 「傘ねぇな」  小声でぼそっとつぶやくと、隣に座っていた山口がちらっと見てきた。 「雨?」 「そう。山口、傘持ってる? 帰りバイト先まで入れて」 「俺も傘ない。それに、今日はサークル行くから」 「あ、そ」  小声で話していた俺たちのほうに、教

        『夢から醒めて、逢いに行くから』 第7話

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        • 創作大賞応募作『夢から醒めて、逢いに行くから』
          7本

        記事

          『夢から醒めて、逢いに行くから』 第3話

          《第3話》  授業が空いていた三限目で山口と一緒にカフェテリアで昼ごはんを食べていると、入り口から大内優芽が入ってくるのが見えた。 「ヤバい……」  彼女に見つかる前に食べ終えて、ここから出なければ。まだ三分の一ほどしか食べ終えていない日替わり定食の唐揚げとごはんを急いで掻き込んでいると、コンビニで買ったパンを食べていた山口が「あ」とつぶやく。 「悪い。俺、今、大内さんと目が合った」 「お前の顔目立つんだから、しっかり気配消しとけよ……」  どこにいても目付きと人相

          『夢から醒めて、逢いに行くから』 第3話

          『夢から醒めて、逢いに行くから』 第2話

          《第2話》  四時間目の授業のあとサークルの部室に立ち寄った俺は、そのドアを開けた瞬間に青褪めた。  入学式が終わってからそろそろ二週間。俺の所属するアウトドアサークルにも、新入生たちが毎日のように見学に来ている。  そんな新入生の輪の中に、今日は大内優芽の姿があったのだ。  どうしてあの子がここに……。  部室の入り口で立ち止まっていると、あとからやってきた同じサークルの浦部に肩を叩かれた。 「入んないの?」 「あー、うん。急用思い出したから今日は帰るわ」  作

          『夢から醒めて、逢いに行くから』 第2話

          『夢から醒めて、逢いに行くから』 第1話

          《第1話》  桜の花が咲いて華やぐ春の大学のキャンパス。  駅から近い正門から、希望に満ちた目をした新一年生たちが、次々とキャンパス内に入ってくる。  新入生の大半がたぶん俺よりひとつ年下。たったひとつしか違わないはずなのに、彼らは自分たち二年生よりも随分と幼く見える。  一年前は、俺もあんな感じだったんかな。  入学式後のガイダンスを受けるために大講堂に流れていく新入生たちを眺めながらなんとなく右耳のピアスは弄っていると、同じ経済学部の友人・山口が俺にA4サイズの紙

          『夢から醒めて、逢いに行くから』 第1話

          コミカライズ『社長、この偽婚約はいつまで有効ですか?』

          こんにちは。月ヶ瀬 杏です。 この度、第15回らぶドロップス恋愛小説コンテストにてビーグリー賞をいただいた作品がコミカライズ配信されることになりました! 漫画:ちゃま先生 2023年5月1日 まんが王国様にて先行配信開始! コミカライズ:『社長、この偽婚約はいつまで有効ですか?』 原作:『社長、この偽婚約はいつまで有効ですか?』(原題:花束と婚約指輪) こちらの作品は、人生二度目の原作コミカライズ化です。 まさか、自分の書いた小説が二作もコミカライズしていただけるなんて

          コミカライズ『社長、この偽婚約はいつまで有効ですか?』

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          月ヶ瀬 杏と申します。 恋や青春、ヒューマンドラマなお話を書いている物書きです。 ▶︎About mePN:月ヶ瀬 杏《つきがせ あん》/ An Tsukigase 〈好きなジャンル〉 ・恋愛(10代〜大人主人公まで) ・青春 ・現代ファンタジー ・和風ファンタジー ・ヒューマンドラマ ▶︎Works《電子書籍》 「社長、この偽婚約はいつまで有効ですか? 交際0日で指輪を渡されました」 表紙イラスト:上原た壱先生 レーベル:らぶドロップス *第15回らぶドロップス恋愛小

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