動物と暮らす

犬や猫を家族として迎え入れたい。


多くの人が一度は夢をみるであろう、動物と暮らす生活。

わたしも子どもの頃は犬を飼いたいと姉と一緒に懇願し、定期的に泣きながらしつこく訴えては、親に断られ、無視され、時にはこっぴどく説教された。

ちなみに、姉は早々に無理だと悟り、とっくに戦線離脱。泣きながら訴えるのはわたしのみで、そんなわたしを「あーあ、またやってる。」と冷静に見ていたらしい。

我が家は4軒(4部屋?)が並んだ平家の団地で賃貸。

近隣に迷惑だからとか、

そのうち絶対に散歩しなくなるとか、

冬には家に入れることもあるかもしれない、家に臭いや傷を付けることは出来ない。

とか、

一番はまぁ、世話をしなくなるだろう。と言うのが親の言い分。

我が家では、物事の大小にもよるが、最終的な決定権は父親にあったので、とにかく父に訴えていた。

父も相当うんざりしていただろうが、根気よく(?)わたしをあしらい続け、わたしの思いが叶うことはなかったのである。

ご近所で犬を飼っているお家が何軒かあったので、よく遊ばせてもらっていた。

わたしの育った町はけっこうな田舎なので、近くの山の中で馬を飼っているお家もあり、よく遊びに行った。

とても懐っこい野良猫もいたので、よく遊んでいた。

なんやかんや、わたしの生活には常に犬や猫がそばにいた。

その合間で泣きながら訴えては却下される日々。

オトナと呼ばれる年齢になり、ひとり暮らしで慌ただしく過ごしていたある日、(経緯は忘れたが)動物の里親募集の掲示板に出会う。

動物を飼うという子どもの頃からの夢が再びむくむくと大きくなり、我慢しきれず、ついに子猫を引き取る事になった。

とにかく可愛かった。

毎日家に帰るのが楽しみで仕方がなかった。

毎晩繰り広げられる大運動会も、全く気にならなかった。(これは元の、大雑把な性格も大いに役立っていたと思う。)

朝、目が覚めて枕元で寝ている猫に癒される日々。

けれど、オトナになるとオトナのお付き合いってもんもあるので、飲み会に出かけて帰宅が遅くなる事もしばしば。

その頃ちょうど、父も仕事の関係でわたしの住む街と同じ街にいたので、何度も父に猫の面倒を見てもらっていた。

父は文句を言いながらも甲斐甲斐しくお世話を手伝ってくれ、猫も、甘えはしなかったけれどもリラックスして付き合う仲になっていた。

いつぞや父と飲みに行くことになり昔話で盛り上がっていた時に、犬を飼いたくて駄々をこねくり回していたわたしの話から、父が子どもの頃に犬を飼っていたという話になった。

父方は農家をしていて、当時は馬や豚、鶏を飼っていて、猫も勝手に住み着いたりしていたという。

近所の家で飼われていた犬が子どもを産んだので、両親(わたしにとっての祖父母)にお願いをして引き取らせてもらったという雑種の白い犬。

はじめは可愛がってとても良く面倒を見ていたが、成長とともに友達と遊ぶ時間が増え、遊びに行く範囲が広がり、犬を家に置いてけぼりにし、ついには面倒もそんなに見なくなってしまっていた。

そんなある日、家に帰ると犬がいない。

はて、どこか?

親父(わたしから見た祖父)に聞くと、少しの間を置いて「毒団子を食わせて殺した」と素っ気ない返事。

一瞬で怒りが頂点に達し、とんでもなく親父を責めた。とても酷い言葉を投げつけた。頭の隅には、面倒を見ずに犬をないがしろにしてしまった自分の非もチラついてはいたが、殺す程か?と、とにかく親父を罵倒した。

親父は一言の反論もなく、黙ってそれを聞いていた。

殺した理由は未だ聞かずにいるが、自分の質問に対して少しの間があったのは、親父としても何かしら思うことがあったのだろう。と父は言った。

犬が死んでから数日後、父は不思議な経験をするが、その話はまた別の機会に。

その経験から父は動物を飼うということにとても慎重になっていた。本音では父も動物が大好きだから犬でも猫でも飼ってもいいと思っていたらしい。

子ども達が世話をしなくなることは想定の範囲内で、問題は自分の仕事がとにかく忙しく、動物に責任を持つ余裕がなかったことだ。と話してくれた。

わたし達のみならず、動物のことも真剣に考えていた父に、泣きそうになった。

動物を飼わせてもらえなかった本当の理由がわかって納得したが、理由となった父の経験があまりにも悲しすぎる。


今、我が家には猫がいる。

当時飼っていた猫が死んでから1年が経ち、縁があって保護された猫を受け入れた。

用事で我が家に来るたびに猫に声をかけ、猫のペースを大切にしているからか、猫は父のことが好きでいつも膝の上でゴロゴロとしている。わたし以外で膝に乗るのは父だけだ。何度も遊びに来ている友達でさえ、まだあまり触れないでいるのに。

猫に向かって優しい顔をする父を見ると、毎回少しだけ、切なくなる。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?