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定点観測

結婚して一年と少しが経った。

入籍して一ヶ月後に彼の住む部屋に転がり込み、クソ暑い夏を1Kの部屋で二人で過ごした。シングルベッドに二人で寝るのはもうこりごり。ハローワークで失業保険を受給した。図書館で本を読んだり、勉強したりして過ごした。あとは料理。働いてない負い目から、下手なくせに品数だけは多く作ろうとしていた。

二ヶ月後に閑静な住宅街にある新居に越した。絵に描いたような閑静な住宅街だ。ファミリー層、新婚世帯の多いマンション。あちらこちらからキッズの泣き声が聞こえてきて、そして私はそれに微笑むくらいの余裕はあった。築年数はあるがリノベ済みだからまあきれい。2LDK。和室もあるのが嬉しい。

引っ越して二週間後に就活を始めた。早く働きたかった。仕事を辞めて彼の収入に百パーセント頼るようになってから、私は一切自分の心を満たすためだけのものを買えなかった。おやつやクーラー、毎日のガス代だって気が引けて仕方なかった。無論夫は気にせずなんでも買いなさいよね、二人のお金なんだからと言ってくれた。でも私自身がそれを許せなかった。自分の口座の数百万も、使う気になれなかった。だって、これは私のお金じゃなくて、私達のお金だと思ったから。

就活は、ほぼ初めてだった。エージェント登録し、事務で探したが、最初はうまく行かなかった。屈辱感と己の何もなさで心が傷ついた。転職サイトにも登録し、エージェントも複数利用した。手段の幅を広げることで、状況は好転した。毎日面接に行くのは疲れたが、面接に行けないよりはましだった。最終的に、事務と迷って、全然畑違いの職種に飛び込んだ。それが今の職場。給料は安いが、面白い。仕事に対して面白さを素直に感じられていることが嬉しい。

仕事を始めて半年が過ぎた。できることは増えた、できないことも当然まだまだある。でも、わからないことは教えてもらえる環境にある。これが当たり前じゃないのはよく知っている。働き出してから心はとても安定した。自分でなんの気兼ねもなく自由に使えるお金があることのありがたさよ。

来月フォトウェディングをする予定だ。県内の洋館でロケーション撮影。それに向けてダイエットをしたり、エステやマツエクなんかで見た目を整えたりしている。ドレスも決まった。

結婚して二度目の夏、この地で過ごすのは初めての夏。そこそこ毎日忙しいけれど、「あの時」よりは確実に良い人生だ。

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