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善雄

先日ふと気づいた。

自分が、祖父の名前を知らないことに。

父方の祖父の名前が、わからない。そしてさらに、実家できょうだいや母に聞いても、誰も知らなかった。
驚いた。
驚いたけど、でも。無理もないなと思った。だって教えてくれる人が誰もいなかったから。

私には「おじいちゃん」がいない。
私が生まれた時にはもう、どちらの祖父もいなかった。というかそもそも、両親はどちらも幼少期に父を亡くしていた。母方は母が小学生の頃、父方は父がまだ乳飲み子だった頃に亡くなったと聞いている。

それでも、母親は自分の色々な話を子供に聞かせていたので、そこで祖父の名前を知ることができた。けれども、父も、そして伴侶である祖母からも、祖父の名前が出てくることはなかったと、今さらながら気がついた。

いろいろあんまりだ、と思う。

でもなぁ。
でもなぁ。

祖父は戦争で亡くなった。
祖母が妊娠中に出征したのではないのかな。
父が生まれて1度だけ帰省することができて、父を抱くことはできたと聞いている。

祖父と祖母がどんな期間を経て結婚したのかは知らないけど、乳飲み子だった父に記憶がないのは当然のこと、祖母自身、妻とはいえ一緒の期間があまりにも短すぎて、祖父との思い出なんて微々たるものだったんだろうなと思う。孫に語り聞かせることもないほどに。


この前実家に帰った時、はじめて父に聞いた名前は、そういえば仏壇まわりで見たことあったような気がする。
祖母の名前とちょっとかぶって、夫婦で同じような名前だったんだな。

じいちゃん。今まで知らなくてごめんなさい。

仏壇で見てるから顔は知ってる。
私の妹に似ている。
そして甥にも似てるなと、思う。

会ったことなくても、血は脈々と受け継がれている。

DNAってすごい。
ルーツは不思議だ。

私自身最近、母方の叔母さんたちに似てるなって自分で思う。

血は脈々と、受け継がれていく。


そもそも祖母が昔の話だとか自分の話をしたのは聞いたことなかったなと思う。
大体私は高校までしか実家にいなかったから、そんな話をするような関係までにもならなかったけれど。

それにしても、じいちゃんの名前を知らなかった私もあれだけど、教えてくれなかったのも、やっぱりあんまりだ。


もう忘れないからね、じいちゃん。

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