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PKPB(ぱぱっと簡単パパ弁当)8

先日、帰省していた息子を駅まで送る時、食べ物の話になりました。
前は全然食べれず、どちらかと言えば苦手だった食べ物も、環境が変わったり年齢を重ねるごとになぜか自然と食べれるようになり、いつの間にか好物になっているよね、と息子が話してくれました。

息子の場合、実家で過ごしている中学校時代までは、茄子や抹茶風味のお菓子、それも含めた和菓子などが全く口に出来ませんでした。トマトも大の苦手で、珍しいことマクドナルドのハンバーガーもほとんど食べることができませんでした。

小さい頃は本当に心配の種と言っていいくらいに食が細く、かかりつけの病院の看護士さんや保育園の先生、私の幼馴染の保育士さんに相談する時期もありました。みなさんが一様に「今は食べなくてもいつの間にかびっくりするくらいに食べるようになりますよ」と言ってくれたのですが、父子家庭で子育てをしている立場としては(このまま食が細いままだと病気にもかかりやすいかも知れないし、体も小さいままだったらどうしよう)と、とにかく息子の食生活が何よりの心配で、一番の悩みでした。

私が今までほとんど興味のなかった料理に関心を持ち始めきっかけも、こういった子供たちの食生活が深く関わっているので、今にして思えば巡り合わせって不思議だなぁ、“必要は発明の母”ってよく言われるけどまさにその通りだなぁと、しみじみ考えてしまいます。

さて、息子も高校生になると、好き嫌いも全くなくなり、食べる量も私をはるかに超えていきました。一緒にレストランに行ってもご飯は特盛、行きつけのラーメン屋さんでは替え玉三回以上、お腹大丈夫ね?とかえって心配になるくらいに頼もしくなりました。
小さい頃の悩みが笑い話に変わるくらいに成長してくれましたが、その一方また別の悩みも現れて来ました。

高校二年の一学期、クラスの雰囲気や環境に馴染めず、学校に行くことが出来なくなりました。
最初は毎朝頭痛を訴えるようになり、寮の先生から連絡がある日々でした。
吐き気や腹痛を催す日もあり、なんとか学校には登校出来てもすぐに保健室へと向かい、しばらくして早退する日が続きました。

私も学校からの連絡を受け、そのまま仕事を早退して息子を迎えに行き、一緒に何度となく病院へ通いました。
大人用の強い偏頭痛専用の薬を処方してもらったり、脳神経外科で脳の検査をしたり、心療内科へカウンセリングにも通いました。
息子もなんとか高校は卒業したいと頭では自分を奮い立たせてはいたものの、足がなかなか学校に向かず、最初の頃は私も息子の心の中が全く見えず、とにかく出席させようと私自身がそのことで頭がいっぱいでした。

ある時、帰省した息子と晩御飯を食べている時、クラスでの様子などを少しずつ語ってくれました。

それから本人ともしっかり話し合い、担任の先生とも何度もやりとりを重ねて、「必要最低限の単位でもいいからなんとか高校を卒業したい」という本人の意思と希望を最大限に尊重し、実行していくことを家族で話し合いました。私は勤めている会社の上司に相談し、正社員の立場からしばらくの間退き、契約社員にしてもらいました。そして毎週水曜日は息子に面会に行き、金曜日は迎えに行って週末を実家で一緒に過ごし、月曜日の早朝にまた寮まで送る生活を送りました。
家では昼間息抜きで魚釣りに出かけたり、映画を観て、夜は二人で受験や英検の勉強をしました。次の日は買い物に行きご飯の材料を買い、息子にも自らチャーハンや餃子を作ってもらいました。
とにかく会話をする機会を作り、何を考えているのかを理解しその心の中のモヤモヤを全部吐き出してくれるよう環境作りにあくせくしていました。

学校から連絡があって早退したり、朝から体調が優れず寮から電話がある時は、私も会社を休んですぐに息子のところへ向かいました。

朝三時に起床し、お昼ご飯にとお弁当を作って朝早く息子に渡しに行くような生活が、約一年半続きました。

息子にとっては辛い時間だったと思います。
そして父親である私には、自分にしか出来ない実りある、かけがえのない宝物のような時間でした。

息子が大学に推薦で合格した時は、今までにないくらいの大感激で、いろんなことが報われた気持ちでした。
どんな方法であっても、たとえバタバタしながら躓いても、諦めずに進んでいる限り道は必ず開けるんだなぁと改めて思いました。
いろんなことに感謝しました。

その時持って行っていたお弁当にひとつです。

大好きなおかずをたくさん詰めました。
当時覚えたてで、見た目があまり良くないのが恥ずかしいです。

・シャケのホイル焼き
・辛味ウインナー
・煮卵入りの筑前煮
・ニンニクとしょうがたっぷりの大根巻き餃子
・明太子乗せ海苔ご飯

モリモリ食べてくれる姿を想像しながら、海を眺めて帰っていた日がとても懐かしい思い出です。

食べ物は、作る人も食べる人も幸せにしてくれると思います。
少し大袈裟ですが、料理の力で、悲惨な事件、恐ろしい犯罪、不幸を生み出す戦争がこの世から無くなればいいのになと、心から思っています。

世界中全ての人の笑顔は、それぞれが一輪の尊い花です。

花は踏み潰すものではなく、見て幸せになるもの。
そして大切に育てるものだと思うから。



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