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自粛のチョロQ:Anizine

自粛期間中に、様々な人々の感覚を知ることができた。

いつもとあまり変わりがないというインドアタイプの人がいて、会社や通勤が嫌いだからリモートワークは大歓迎だという人がいた。家族揃って三食のテーブルが囲める幸福を語る人がいれば、家族が長い時間一緒にいる状態に慣れていないことに気づいた人もいた。

俺はつねに移動する生活を送っているので、とにかく毎日同じ場所に居続けるのが辛かった。普段どこにも行かない月があったとしても、それは自分の選択で、「今月はどこにも行かなかったなあ」で済む。でも、禁止ですと言われたときの我慢はキツい。「自粛」とは言え、渡航禁止は自分の意志では越えられないからね。

「100%の自由をエンジョイできない毎日には価値がない」と思って生きているから、規制されることがものすごいストレスになる。組織の中にいると行動を他人に決められたり、制限されることは10年以上体験したからわかる。そこに不満や愚痴を裕三したくなかったからフリーランスになった。

去年の年末、「来年はもっとヒンパンに出歩こう」と決めた。仕事のロケ以外に完全な遊びで必ず月に一度は外国に行く計画をし、特に目的も根拠もなく1月はグアムに行き、2月はParisに行った。

ただ、自分はここにいなくてもいいし、誰かにここにいろと強いられてはいない、という事実だけを確認する作業。

それがなんということだ。外国どころか、屋外に出るのはコンビニに行く数分だけ。3月はどこにも行けず、Netflixばかり観ているうちにもう5月が終わってしまう。いつもは大勢の人で賑わう Parisやヴェネツィアの「無人の風景」が友人から送られてくるのを見て、胸が痛んだ。まるでゴーストタウンじゃないか。

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俺は「誰もいないこの秘境のビーチを独り占めじゃ」みたいなリゾートを求めていない。多くの人が右往左往している都会の街をカフェから眺めるのが好きなのだ。写真を撮りたいという理由も大きいけど。去年は年の1/3くらいは外国にいて、世界中を行ったり来たりする中で「自分は今どこにいるのか」を考えていた。それがより東京の意味を理解させてくれたり、本場の料理は美味しいけど、やっぱり日本の寿司もたまらんね、とか思えた。

だから移動の制限がなくなり、日常がある程度正常化したときには反動が大きいと思う。チョロQで言えば、今はギリギリと音を立てて後ろに引っ張っている状態。手を離せばどこまでも飛んでいくだろう。

Anizineではメンバーの人たちとただひたすら会って話したりする機会があった。それをzoomでやる気はしない。普通にカフェやレストランで会えるようになったら、すぐに「ボンヤリする会」をやりましょう。

定期購読マガジン「Anizine」https://note.com/aniwatanabe/m/m27b0f7a7a5cd

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写真家・アートディレクター、ワタナベアニのzine。

多分、俺の方がお金は持っていると思うんだけど、どうしてもと言うならありがたくいただきます。