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課せられた義務:写真の部屋

写真家には「課せられた義務がある」というお話。

義務という言葉を定義すれば、権利を得るために最低限守らなければならないこと、になるだろうか。面倒な義務を放棄する自由もある。あるけど、その場合は「権利を主張できない覚悟」がワンセットだ。

だから権利を主張している人から義務の不足を感じると、信頼を失う。写真に関して言えば、膨大な義務が存在する。徒弟制度があったときは、それができないと師匠や先輩に怒られるから否応なく憶えたのだが、自分で突然始めた人は義務の存在を知らずに大きな失敗をすることになる。

弟子の時期は失敗しても傷は浅い。責任は仕事を引き受けた師匠にあるし、師匠も若い頃に同様の失敗経験があるから、怒るけど苦笑いだ。

マズいのは見よう見まねで始めた人が義務の存在を知らずに仕事を始めてしまって失敗すること。その信頼は二度と戻らない。いつも書いている、「カメラを買って撮っていたら写真が撮れるようになった気になる」という問題の本質は、仕事の相手が同様に「失敗の存在に気づかない」人々だという範囲の中でだけ成立する。

入り口を間違えると、出口が変わる、ということを甘く見てはいけない。容易な入り口から入って、いつかは上質な出口にたどり着こうというのはファンタジーで、もしそれが可能なら困難な入り口をわざわざ突破しようとする人などいなくなってしまうはずだ。

「結婚式のカメラマン募集。空いた時間で高収入」はあるけど、「CHANELのグローバル・キャンペーンを撮るカメラマン募集」はないと言えばわかりやすいかな。

さて、それを知らずにあなたがやらかしているかもしれない、具体的な失敗例をひとつ紹介しよう。

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写真の部屋

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多分、俺の方がお金は持っていると思うんだけど、どうしてもと言うならありがたくいただきます。