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写真を撮り始めた頃は、写っているものの面白さに意識が行くことがあります。それは「被写体依存」で、何か面白いモノを見つけないと撮れないとか、そのために特殊な状況を探しに行こう、流行のお店でパフェを頼もうという、インスタグラム的な本末転倒を生みます。

取材か報道でもない限りどんな場所でもすべての出来事を同じような目でみつめ、自分の立っている場所を揺るがないようにしなければ視点がブレます。何かのイベントに出かけて行って撮っている人は「そこで起きていることの記録」にとどまることが多く、「今日、ここでこれをやっていました」という子供の絵日記になってしまいます。

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たとえばこんな写真があります。

彼らは外装用のメタルプレートを運んでいたんですが、そこに向かいの風景が歪んで映っています。単純な風景を写すのが難しい理由はいつでも景色は同じように見えるからで、そこに何かの外的エフェクトが加わると写真が「撮れる」気になります。起きていることの面白さはあっていいんですが、その割合には気を配る必要があります。この写真では歪んだ鏡以外にまったくいいところがありません。

わかりやすい例で言うと、初心者ほどリフレクションが好きです。鏡、ショーウィンドウ、水面など、平凡な風景にエフェクティブな要素が追加されていると「発見した」と思ってしまう。通常の風景は一方向的ですが、鏡があることで多面的になったように見えてシャッターを切るのです。

いい写真を撮ることは、自分が思ういい風景や人物を見つける目を養うことなので、短絡的なクリシェに惑わされないようにしましょう。そのためにはわかりやすい面白さを徹底的に排除する訓練があります。

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写真の部屋

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人類全員が写真を撮るような時代。「写真を撮ること」「見ること」についての話をします。

多分、俺の方がお金は持っていると思うんだけど、どうしてもと言うならありがたくいただきます。