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写真の部屋

人類全員が写真を撮るような時代。「写真を撮ること」「見ること」についての話をします。
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2020年6月の記事一覧

記憶のビジュアル:写真の部屋

店先に、氷がありました。撮りましたけど、何もしなければこんな感じのぼやけた写真。 RAWからそのまま現像したものがこれ。どうでもいいですね。 目で見たときはもう少し「冷たさ」とかソリッドな印象があったんですが、まあRAWファイルというのは記録された素材のデータですから、そのままというわけにはいきません。

知らない人が飼っていた亀:写真の部屋

人と話しているときは、相手の表情から膨大な量の情報を読み取っているから、カクカクしたタイミングのzoomで話すのは苦手。「黙って聞いていると思った人の画面がずっとフリーズしていた」というギャグが、オンライン会議が主流になって割と早めに登場したことでもわかる。 写真を撮っているとそれがより強く意識されるんだけど、カメラの前で大笑いをする、激しく悲しそうな顔をする、といった「大きな表情」に振り切るのは誰にでもできる。でもそれだと、友人との飲み会か、葬式の写真か、といった極端なシ

合成について解説:写真の部屋

これは数年前に「ブレーン」という雑誌に載せた写真。 これはどういう写真なのかを解説します。 まず、あるアパレルブランドの仕事でParisに行きました。そこで撮った写真をコラージュして服にプリントしたり、ここに写っているトートバッグなども作りました。 背景は別の仕事で行ったスコットランドの風景です。「ブレーン」に載せる写真を考えていたとき、過去に撮った写真を使いたくなかったので、古いパーツを使って新しい一枚を作ろうと考えました。

メンタリスト:写真の部屋

心理学を勉強した人がいて、俺はその人が撮った写真を見てみたいなあと思っています。彼女はテレビに出てくる人のように、他人の心の中を当ててみせるようなことはしないんですが、その考え方を聞いたことはとても勉強になりました。 ポートレート写真の善し悪しは、そこにいる人、カメラを持っている人の関係で決まります。それは千差万別で、相手が心をゆるす関係、対決している関係、互いに尊敬し合う関係、などすべて違います。 その時「絞りとシャッターと感度が」なんてことはどうでもいいんです。そんな

Paris散歩:Anizine写真の部屋PDLB

もう激しくイライラしてますよ。 どこにも行けないこの自粛生活に。世界で何が起きているかを知るために、今年は(仕事以外で)毎月外国に遊びに行くつもりでした。しかし2月であえなく中断。大規模ストとコロナの中間である2月にParisに行けたのだけが救いですが、普段は3ヶ月おきに行っているので、イライラの限界が来ています。 俺の仕事は写真を撮ることですが、写真を撮るだけではなく「自分はなぜそこで写真を撮りたくなるのか」を知る目的もあります。どうしてこの地域にこんな人々が集まってい

念写するなよ:写真の部屋

写真を撮り始めてわかったのは、「嘘をついて自分を大きく見せられないこと」だ。 写真はそこに行って、その瞬間にそこにいた人、あったモノしか写せない。行ってない場所は写らず、会っていない人は写らず、ないモノは写らない。当たり前のように聞こえるかもしれないけど、これにつきる。 自分が体験していないことを語ってみせるほど幼稚でバカバカしいことはないから、最初に「私の想像ですが」と注意書きをしておいて欲しいくらいだ。ネットでよくあるのが、誰でも手に入るググったパーツで自分に都合のい

人見知らない:写真の部屋

街を歩いていても、気になった人がいたら誰彼構わず写真を撮らせてもらっている。スタジオで撮影が終わったときにそこにいるクライアント全員を撮ったことは何度もある。 撮影に来ている人は、まさか自分が撮られることになるとは思っていないのが楽しい。今までモデルやタレントに「もっとこういうポーズの方がいい」なんてカメラの後ろで言っていた人もそこに立ってもらう。いかにそこに立って全員の視線に晒されることが難しいかがわかる、いい機会だ。 なんていう意地悪な意味ではなく、どんな人とでも楽し

100万円の使い道:写真の部屋

「100万円持っていて、いい写真を撮りたかったら、10万円のカメラを買って、残りの90万円を旅に使うといい」 と思っている。10万円のカメラが100万円のカメラの性能より10倍劣っているなんてことは今の時代ではあり得ないから、最初は10万円のカメラでいい。それよりも重要なのは、旅と書いたけど、それだけじゃなくて「写真を撮るために使えるお金」を十分持っておくことだ。 写真は絵画と違って、そこに存在するモノしか写せない。 だから、美しいモノ、珍しいモノ、綺麗な人、素晴らしい