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写真の部屋

人類全員が写真を撮るような時代。「写真を撮ること」「見ること」についての話をします。
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2020年3月の記事一覧

赤ちゃんの写真:写真の部屋

Youtuberのカジサックに呼ばれて、先日生まれたばかりの「はるちゃん」を撮影した動画がアップされた。キングコングの梶原さんとは6年くらい前から付き合いがあるけど、カジサックとして会うのは初めて。 https://www.youtube.com/watch?v=O6r2MZXCeK0 撮るのは「ニューボーンフォト」というお題だったんだけど、欧米でやっているような典型的なスタイルにするつもりはなかった。あれがあまり好きではないのは、赤ちゃんが実際にはしないポーズを作り、固

花の香りを知る:写真の部屋

「写真」という言葉が誤訳である、という話を聞いたことがあると思います。写真は真実など写さないから、という意味においてです。 しばらく前から、インスタグラムでは、加工していない、フィルターをかけていない、といったハッシュタグを見かけるようになりましたが、あれはあまりにもキツいフィルターをかけたことによる「嘘っぽい」写真が溢れたからです。 自分が見て感動した風景をそのまま見てもらいたい、という意識の表れでしょう。「盛らない」「映えない」方向へのシフトです。 人がする創作活動

彩度:写真の部屋

彩度を上げすぎない。 彩度は、目で見ている印象以上に上げると下品に見えるんですが、下げる側にはラチチュードがかなりあります。特に「モノ」の場合は、正解の色の認識に幅がありますから、下げる側にならある程度変えても大丈夫です。 変えるとすぐに気づいてしまう敏感な色もあります。それは何でしょう。

HDR:写真の部屋

HDRという技法がある。 High Dynamic Rangeという意味で、画面の中の明部と暗部のコントラストを調整してどちらも破綻しないようにする合成方法。これはそもそもあり得ない光の状態を作り出すので、加工したことが強調される。 俺はHDRが好きじゃないのでやらないけど、ハイライトを抑え、シャドウを持ち上げるレベルがライティングの範囲内であれば、ほんの少しはレタッチする。 最初はコントラストでも彩度でも何でも、強めに効果をかけてしまう。それが面白いからだ。でもだ

写真の部屋

道具がキーボードがカメラかの違いで、文章を書くことと、写真を撮ることはまったく同じ作業。「光」という概念をあらわそうとしたとき、言語的な沸点が低いとそれは説明的になる。自分の「文学的な沸点を上げる努力」は、たぶん写真の教科書には載っていない。 https://note.com/aniwatanabe/m/mafe39aeac0ea

ポテンシャルを撮る:写真の部屋

男の人がいて、女性がいて、誰を撮っても同じ人間なんだけど、女性は異性ゆえに理解が難しい(不可能だ)から、昆虫の生態に驚くように、学びながら撮っている。 こうあって欲しいという男性からの理想像を撮るのはつまらない。野球がわからないと、イチローに「三振するポーズ」を要求するようにくだらない結果になる。

構図と情報量:写真の部屋

よく「構図」なんて言いますけど、構図ってなんでしょうか。 これは確かアムステルダムに行ったときの写真だと思います。大きな公園で子どもたちがフリマをやっていました。さて、この写真と構図はどんな関係にあるでしょう。 「ただ真ん中に女の子が立っている」 それも正解です。 では、それ以外のモノはどういう意味を持っているんでしょう。 彼女は手作りのお店を開き、俺を客だと思って見つめています。「写真を撮ってもいいか」と聞いたら「うん」と答えてくれた直後の一枚です。 なぜ撮ろう

撮る時間:写真の部屋

撮影スタジオでは、だいたい3時間か4時間の最低使用時間が決められているけど、時間いっぱい使ったことはほとんどない。 精密な商品撮影などをする仕事ならともかく、人物を撮る場合は「長く撮ればよくなっていく」ということもない。モデルのスケジュールに余裕があるときは、ヘアメイク、ライティング、プロップの準備に1時間、カメラ前に立つまでに30分から1時間くらい、雑談をする。 初対面のモデルをいきなり撮り始めて指示をしても、意志は通じにくい。俺の場合は、顔が完全に怖いからという理由も

Long eyes.:写真の部屋

昔、写真を載せたネットの個人ページに「Long eyes」という名前を付けていたことがある。俺の写真を見た外国人女性から、「あなたの写真を見ていると私も一緒に旅をしている気持ちになる」というメッセージをもらったことで思いついた。彼女は車いすに乗っていた。 そうか。俺のカメラは、その人や他の誰かの「遠い目」になることができるのだと思った。 最近行った場所で、俺の眼が一番長く伸びたのはどこだっただろうと考えたら、ブラジルだった。ブラジルはとにかく遠い。以前に撮影した日本在住の

「0.5」と「806」:写真の部屋(無料記事)

写真だけにかかわらず、何かを作るときに「足していく」「引いていく」という方法がある。ゴージャスに装飾的にカラフルに、っていうのと、シンプルに整然とシックに、というふたつの方向。 俺はあまりゴテゴテと足していくのが好きじゃなく、人物写真の背景すらないことが多い。どちらも突き詰めようと両方やるのは至難の業だから、自分では好き嫌いを基準に、薄味の写真ばかりを撮っている。 「追加より欠落」が好みに合っているのだ。 元々「1」だったモノを「806」にすれば表現は際立つ。それがヤン

データの保険:写真の部屋

趣味であろうと仕事であろうと、撮った写真のデータが破損、紛失することは避けたい。でも、ちゃんとした保険を掛けているかな。 俺が仕事で撮影するときは、スタジオの場合、カメラから取り出したそのままのSDカードのデータ、それをパソコンに移したバックアップ、同時に外付けHDDもしくはSSDに保存したバックアップ、の3重にしている。 スタジオは過酷な環境ではないので、これくらいでほぼトラブルが起きることがない。問題は移動を伴うロケの場合だ。

テーマ:写真の部屋

作品としての写真は一枚でもいいし、十枚でもいい。 何かテーマ(もしくはコンセプト)がある写真を人に見せるときは、ただ一枚を見てもらうのとは違って、なぜ複数あるのかを理解してもらう必要がある。 その訓練の場としてはソーシャルメディアがとても役に立つ。同じテーマで撮ったモノをタグでまとめたりできるからだ。インスタグラムでもそうだけど、ポートフォリオとして使うなら、撮っているモノが一目で理解できるといい。 一枚ずつの完成度ではなく、コンセプトとして軸が見えているかということ。

米粒とパスタ:写真の部屋(無料記事)

この前、あるカジュアルなレストランでパスタを頼んだら、皿のふちに米粒がひとつ、ついていた。 米粒は虫やゴミとは違って不快なモノではないから取り除けばいいだけなんだけど、ああ、サービス業の質があらわれるのって、こういうところだ、と思った。 同時にリゾットか何かを作っていたんだろう。でも俺が頼んだのはパスタだから、そこに米粒がついていたら厨房が雑なことが伝わってしまう。テーブルに運んできた店員が気づいていないことで、二段階のチェックが機能していないこともわかる。 上質なレス