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写真の部屋

人類全員が写真を撮るような時代。「写真を撮ること」「見ること」についての話をします。
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2019年10月の記事一覧

方向音痴:写真の部屋

俺は常軌を逸した方向音痴だ。方向音痴者は、健常者には理解してもらえない辛さを抱えて、さっき通った道をまた歩く。 初めて上海に行った時、写真のWESTIN HOTELに泊まった。なぜだかわかるだろう。この特徴的な高いビルなら、遠くからでも認識できて、帰れるからだ。これほど方向音痴とは苦しい認知障害なのだ。 「さっき素敵なカフェがあったから、帰りに寄って行こう」などというのは到底不可能。一つ角を曲がってしまえば、スイカ割りでグルグル廻されたときのように確実に方向を見失うことが

若い男性が苦手:写真の部屋

差別的なジェンダー論に踏み込むぞ。 自分が写真を撮っていて一番好きなのは中年以上の男女だ。古くからの読者は俺が若い女性にまったく興味がないという(どうでもいい)ことはご存じだと思うけど、それは俺が思っている「写真」の本質にも関係している。 写真は誰でも好きなように撮っていいし、それが仕事であろうがプライベートであろうが、撮る人と撮られる人の「個人的なモノ」だから、写真とはこういうのが正しいとか、これは写真の本質から外れているみたいに、うすらバカっぽい教条主義的なことを言う

高速料金:Anizine

Twitterで書いていた「ノーギャラで仕事を引き受ける無責任さ」についての話への反応が多かったけど、Twitterで書くのは限界があるからnoteにまとめておく。 実績がないうちであっても、ノーギャラで仕事をするのは得策ではないということを書いた。経験のためであるとか、何か次に繋がるとか思っても、ノーギャラで仕事を発注する人と関係を築いていても、のちのちいいことはない。 ビジネスというのは予算があるから、どんなに少なくても配分があるのが当然。たとえば純粋な制作費が100

デザインと写真:写真の部屋

2002年くらいにNikonのD100というカメラを買った。それまではフィルムのハッセルを使って趣味としてしか撮っていなかった写真だったが、D100を手に入れたことで毎日撮るようになった。 これはその頃、初めて仕事で使うために撮った写真。D100は600万画素というガラケーみたいなカメラ性能だったけど、プラスチックボディがゴキブリみたいにテッカテカにすり減るほど使った。シャッターの耐久回数の5倍くらいは撮ったと思う。 デザイナーにとって、デジタルカメラは撮影が終わってすぐ

画像検索:写真の部屋

Googleの画像検索にはAIの恩恵を感じる。この女性の画像は、オリジナルの写真を画像検索にかけたもの。誰かがどこかに転載したモノがずらっと並ぶ。 著作権の管理という意味でも、自分の写真がどこかに使われていればわかる。例では同じ写真が並んでいるが、似た状況の写真も出てくる。たとえば緑の芝生に人がいる写真を画像のサンプルで検索すると、世界中の同じような写真が出てくる。 これは観光地で顕著なんだけど、ナイアガラの滝なんかを検索すると、撮影する位置が限られていることから、ほとん

濃い味:写真の部屋

俺は写真をほとんどストレートな色とコントラストに仕上げているんですが、理由は強い色味やコントラストはしばらくすると飽きてくるからです。 今まで好きな色調は徐々に変わってきましたけど、最近はほぼ同じです。さっき古いハードディスクの中から、当時テストしていた「濃い味」の写真が出てきました。かなり違うことに自分で驚いています。 俺はデザインをしていて、「正確に印刷できる色を出す」という写真を扱う上での基準点があるので、写真を始めたばかりの人のようにやみくもに彩度を上げすぎたり、

才能の比率:写真の部屋

結局のところ毎回同じ書き出しなんですけど、スマホで写真を撮る人が増えた状況を「いいこと」だと思っています。 一番早く、プロが使うのと同じ高性能なデジタル機器が誰でも手に入るようになったのは、音楽の分野だと思います。これはもう数十年前のこと。シーケンサーやMIDIやサンプラーがデジタル音源として誰でも使えるようになり、打ち込みができるようになった。たとえ楽器が弾けなくても本格的な曲が自宅で防音設備などなくても作れるようになったのです。 それまでのアマチュア・アナログスタイル

クルマは道に置かれた彫刻。14pics

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画面の中のテキスト:写真の部屋

写真に文字を写り込ませる意味について。 映像で表現する場合、画面には文字が入らない方がいい。映像と文字は脳に入ってくる速度が違うので混乱するからだ。 テレビなどのテロップ問題もそうだけど、何が面白いのかを見極める前にテキストでそれを知ってしまうことはつまらない。よく洋画の字幕で、台詞を言っている途中に日本語字幕が先行していることがある。クイズの問題に答えようとしているのに、答えが表示されてしまっているような。 それをよしとする人もいる。頭を使いたくない人だ。こう楽しみな

硬い光は上級者:写真の部屋

我々は1日にどれくらいの枚数の写真を見ますかね。インスタも駅のポスターも雑誌も合わせたら数千くらいかもしれません。駅のポスターや雑誌はプロが撮っていますけど、SNSはそうじゃありません。その違いについて。 まずは、伝えたい目的が違います。違うというより「ありか、なしか」と言ってもいいと思います。目的があると、そこに必然的な「方法の選択」が生まれます。たとえば洋服のブランドなら服の素材を見せたり全体のシルエットを見せたり、それらを見せずに雰囲気で表現しようとしたりします。

機材の変化:写真の部屋

普段、写真を撮るためには、とにかくカメラ機材をコンパクトにしておいた方がいい。どんなに素晴らしい機材でも重かったり大きかったりすると外に持ち出さなくなる。初心者ほど過剰にスペックにこだわったりするものだけど、いいレンズが鞄の中に入っておらず、家に置いてあってもまるで無意味だ。 ロケやスタジオで使うならいくら大きくて重くても問題はない。条件がいいなら最高の性能のモノを使う方がいいに決まっている。でもスナップのためのカメラはできるだけコンパクトにしておく。 SONYのαを使い

カメラが暴力になる。:写真の部屋

この記事を読んで、ウンザリした。 https://news.livedoor.com/article/detail/17178431/?fbclid=IwAR3mnOAmEuKPPii9iX1kUuxbgqa2hIgAaKW5mD60JI5vfzh4bvaKjoaAJUE 誰もがスマホを持つようになり、そこで起きたことが善悪にかかわらず記録されていくんだけど、俺たちは写真が職業だから、「何を撮って、何を撮らないか」を決めている。 これを撮ったら、あれを撮ったことに整合性