トートバッグ(後編):博士の普通の愛情
サヤカは地元の市役所に就職してから数年した頃、一人暮らしがしたくて上京し今の会社に勤めることになった。あまり派手なことが好きな性格ではないが、毎日農家の話ばかり聞かされていたのと比べればだいぶ刺激がある。東京の飲食業界で働く人々は地元の農場や牧場にいたおじさんたちとは種類が違っていた。地方にはいない人種が面白くて人間観察をしていたが、彼らにはいくつかのパターンしかないことがすぐにわかった。
サヤカの会社はレストランチェーンを自社で経営したり、関係のある会社が出店するレストラ