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博士の普通の愛情

恋愛に関する、ごく普通の読み物です。
恋愛に関する、ごく普通の読み物です。
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#写真

定期購読メンバーの皆さんへ

「たとえば一週間どこかに遊びに行ったとして、どれくらいいい写真がセレクトできますか」と聞かれることがあります。私はスマホでほとんど写真を撮らないので、遊びに行くときでも普段仕事で使っているカメラで撮ることになります。これがプレッシャーなんですよね。ちゃんとした『作品』と呼べるようなものが撮れるのではないかと淡い期待も生まれます。では、どれくらいの枚数がセレクトできるのでしょう。その答えです。

ありがとうございます:すべてのマガジン

『カメラは、撮る人を写しているんだ。』 発売されて、Amazonのランキングが出ました。 このカテゴリはこちらで指定することができず、Amazonで振り分けられるようです。現在は「教育」などにもカテゴライズされている模様。 写真の教則本だと思って買った人から「まったく役に立たなかった」というレビューもありますが、「文学」なので仕方ないだろうと言い訳もできます。ネットでタイトルを見て勝ってくれた人が誤解するのももっともなのですが、この本はそういった「TIPS」を勉強して

突然の贈り物:博士の普通の愛情|写真の部屋

14歳のときに聴いていた音楽は一生ものだと言います。さっき大貫妙子さんの『突然の贈り物』を久しぶりに聴いて泣きそうになったのですが、調べてみると、それは私が14歳のときに発表された曲でした。皆さんにもそういう曲があると思います。『突然の贈り物』の歌詞で、私が一番グッとくる部分は、 「必ず待ち合わせた 店も名前をかえた」 というところです。その前の「別れもつげないで 独りぼっちにさせた」のフレーズも勿論、切なく心にくるのですが、心情的ではない情景描写だけで表現しているのがう

『カメラは、撮る人を写しているんだ。』

1月30日刊行の『カメラは、撮る人を写しているんだ。』の予約が始まりました。写真について足りない頭で考えていることのすべてを、この一冊にまとめました。カバーの小橋めぐみさんを始め、参加してくれた皆さんありがとうございます。

Paris:定期購読メンバーへ。

2/3から一週間、パリに行ってきた。いつもと行動範囲がまったく変わりないカンジ。 今回はビジネスのチケットを取っていたんだけど、ファーストクラスに空きがあるというのでアップグレード。 機内食はSUGALABOの監修でした。 初日の夜は、友人がシェフをしている、SPOON Alain Ducasseで。

インケンなサラダ:博士の普通の愛情

「ねえ、これ見て。インケンサラダって書いてある」 「本当だ。病院食ってだけで気が滅入るのにインケンなサラダはいやだね」 彼女が入院すると聞いたとき、僕はお見舞いに行くことを思い浮かべてなぜか浮かれた気分になっていた。本人は不安だろうし、そんな不謹慎な気持ちになるのはよくないとわかってはいたけど、不謹慎というのはそう自覚しているからこそ、存在の価値があるものだ。 彼女とはある仕事で知り合った。たった一度だけ撮影をして、それからたまにお茶を飲んだり食事をしたりしていた。僕は

ボンヤリする会:Anizine

10月中旬に、久しぶりに「ボンヤリする会」をやろうと思います。参加希望の方(Anizine、写真の部屋、博士の普通の愛情のメンバーならどなたでも)はコメントをしておいてください。

カナちゃん:博士の普通の愛情

カナちゃんの実家が栃木で温泉旅館をしているそうで、そこに行こうということになった。 川沿いの細い道に、彼女の運転するクルマが入って行く。いくつも旅館が並ぶ賑やかな温泉街だ。「なかなかいいところじゃん」と言うと、「昔よりは活気がないけどね」と答える。本格的にさびれた温泉街をいくつか見たことがあるので、これくらいなら十分流行っている方じゃないのかなと僕は思った。 実家を継げと言われた彼女は温泉の仕事が嫌いだったので、なかば強引に東京に出てきたらしい。それから数えるほどしかここ

珍しい苗字のジュリア。

ある集まりでイギリス人女性と知り合った。たぶん30歳くらいだと思う。 とても感じがよくて、俺の2歳児相当の英語も笑わずに、ちゃんと理解しようと聞いてくれた。家はロンドンから一時間くらいの郊外の街にあるという。俺はイギリスのことをほとんど何も知らないから何度かのロンドン旅行の話をしたら、もうネタ切れになった。 スコットランドやアイルランドに行った話題は敵対心を持っている場合もあるし、ブレグジットやブレグレットも微妙だからやめておいた。それよりも、男女が初めて出会ってブレグジ

ラブ・マネージメント。

アンガー・マネージメントという言葉を聞いたことがあると思います。 何かに対して怒りの感情が湧いたとき、それをそのまま外に出してしまうと問題が起きるので、自分の心の中で整理し、温度を下げることで解消していこうという意味です。 怒りの感情は6秒間でかなり減るそうです。誰かにぶつかられた、おい、ぶつかったじゃないか、とケンカになる。そういうときは、6秒間待ってみる。 「わざとじゃないかもしれないし、ここでケンカをしても得なことはないよな」などと考えている間に、沸騰していた怒り

失われた正気。

しばらく前に、知人と居酒屋に行った。 俺は酒を飲まないので、酒を飲む場所では「観察者」になる。マラソンで選手のみんなが死にそうになって走っているところを先導する、白バイ隊員のような立場だ。 正気を失った人からすると冷静なシラフに観察されるのは居心地が悪いだろうけど、それはこちらのせいではない。自分で、失われた正気を求めてプルーストして欲しい。 隣の席にいた上司と若い女性社員らしきふたり。両方ともかなり酔っていた。上司が「俺にいい女を紹介してくれよ」と絡んでいる。女性の方

スマホを貸してもらえませんか。

平日の夕方、僕は一人でカフェにいた。 遠くの方の席に20代後半くらいの女性がいたのだが、何度かこちらを見ているような気がした。彼女は僕の前を通り過ぎて、一度トイレに行った。 しばらくしてその人は目の前に立ち、こう言った。 「スマホを貸してもらえませんか」 自分のスマホを忘れたのだろうか。そう言えば他人にスマホを貸したことはないなあとボンヤリと思ったが、困っているのなら貸してもいいか。 「いいですよ」 彼女はスマホを受け取ると僕の前の席に座り、何か打ち込み始めた。電

Mという男。

何年も会っていない友人「M」からメールが届いた。 その名前を見た瞬間、多くの複雑な感情が一気に押し寄せてきた。彼は感情がむき出しになりやすく、敵も味方も多いタイプだった。俺はそこまで自分をさらけ出せる人が珍しいというか羨ましいというか、そんな気持ちで昔から遠巻きに眺めていた。 つねに他人をよくない状況に巻き込み、ギリシャ悲劇でも演じるかのような振る舞い。こちらの気持ちに余裕がないときは疲れてしまう。ごく普通の日常生活に彼が登場するといらいらさせられるのだ。 彼がどんな仕

過去に戻って、会いたい人。

タイムトリップが題材の映画を続けて数本観ています。 今日は韓国映画『あなた、そこにいてくれますか』を観ました。何を言いたいのか、観たあとでもさっぱり理解できない邦題ですけど、それはさておき。 医師である主人公はカンボジアの老人からタイムトリップができるクスリをもらいます。その雑なプロップ(小道具)の設定は「メルモちゃん」を思い出させるほどレトロでした。 半信半疑ながらそれを飲んで過去に行くのは、昔愛した女性に会いたいという理由からです。そこには若き日の自分がいます。色々