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ノルシュテイン『話の話』を記述する(その6~ひさしとマルチプレーン)

 さて『話の話』の話だ。
 『話の話』にもいくつかのシーンでマルチプレーンを使ったと思しきシーンがある。
 複数の層が遠近感を備えて動きが生まれるシーンがある。
 母子の上にせり出してくる庇もそうだ。ここでの撮影効果は、ひとつの撮影台の上に母子の層と庇の層を密着させて乗せ、ひとコマごとに母子の層と庇の層とを密着させたまま位置をずらしていったと見えもする。
 もちろん、ささやかながら庇と母子の層に遠近をもたらすマルチプレーン的ずれが起きているようにも見える。
 どちらだろうか。
 ここでしつこくマルチプレーンを採用したか否かにこだわるのは、従来ノルシュテインンという作家はマルチプレーンを偏愛しているという伝説があるからで、それに対して、いくら偏愛していると言っても、すべてをマルチプレーンで処理するとは限らない可能性を、たとえばこの庇の密着・ずれ具合からも問題提起したいのだ。

(その7へつづく)


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