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開発者もファンも思い入れの強いゲーム『スマッシュ&マジック』【プランナーによる座談会】(後編)

『スマッシュ&マジック(以下、スママジ)』に魅了されて集まったプランナーたち。前半では、スママジのクリエイターとしてジョインした理由や想いを聞きました。

ところが開発に参加すると、行く手にはたくさんの苦労が待ち受けています。それでも、ゲームに対する熱意やこだわりは捨てない。そんな熱い想いを聞きました。

(インタビュー・構成・執筆:栃尾江美、見出し画像デザイン:金子アユミ

ユーザーアンケートとの乖離に不安

中川:そもそもスママジはプレイヤーの技量を重視したゲームですが、ユーザーテスト後のアンケートで「どこに飛ぶかわかるようにしてほしい」という意見が圧倒的だった。「腕前で左右されないようなわかりやすいものが求められている」という結果は、ボーリングやおはじきのようなプリミティブな遊びを作りたい僕たちとギャップがある。「本当にこれでいいのか」と常に葛藤がありましたね。

高橋:僕はその点を面白いと感じて入社したものの、確かにユーザーテストと作り手の意見の乖離は気になった。ただし、自分が面白いと思えないものは、作っている意味がないので。

小島:無責任な言い方になるかもしれませんが、会社の存続がかかっている中川さんに比べると、私はクリエイターとして、面白いと思えるものを作る方が優先。いくらユーザーアンケートで批判されても、こだわりの部分を捨てるわけにはいかない。それを捨ててしまったら、作りたいものにならないですから。

高橋:部分的にサポート機能を入れるなど、譲れる部分は譲り、遊びやすいようにはしています。

小島:そうだね。ただ、根っこの部分は譲れない。

開発の遅れは想像以上。足りないものが多すぎる

小島:開発で大変なことはたくさんありましたが、合流した段階で「骨」しかなかったのは驚きました。

中川:全体スケジュールではもっと出来上がっていなくてはいけないのに、骨組みを作るだけで精いっぱいだったんだよね。

小島:まず、キャラクターまわりにテコ入れ。キャラが立っていなかったので、魅力的にするとともにボイス(セリフ)も増やして、純粋にアクションゲームとして面白くしていきました。やることが増えすぎて、自分で自分の首を絞めた形になりましたが(笑)。結局、キャラの設定の7割くらいは私が担当したんじゃないかな。

高橋:弱いキャラにもちゃんとキャラ付けをしたんですよね。

小島:いわゆる、誰でも取れるような弱いキャラクターは、見る機会がとても多い。よくあるのは、「外れキャラ」として適当に作ってしまうこと。でも、僕は一番多く目にするキャラだからこそ、魅力的にしようと考えました

また、キャラクターの頭文字をつなぐと意味のある言葉になるなど、一部の人だけが気づくような遊び心も入れていきましたね。結局そのすべてが、自分の首を絞めるんですが(笑)。

「ヒママジ」と揶揄されることも……

高橋:思い入れがあるのはクモ型のモンスター。実際にいる「ハエトリグモ」を参考にしました。つかまえようとするとワープしたみたいに横にジャンプするクモ。プレイヤーがうまく狙ったはずなのに避けられてしまうので、嫌われる可能性も高い。個人的には満足がいくものでしたが、ゲームバランス調整の際にユーザーさんのゲームスキルがダイレクトに反映されるバランスになり、リリース後は賛否両論でした。

小島:特徴がなければやる意味がないし、賛否両論があるのはいいことなのでGOを出しました。「アイツ……!」と憎らしくなるのは、印象に残るキャラクターだってこと。私はいいモンスターができたと思っているよ。

高橋:それは嬉しい。ただ、反省を踏まえて次のゴーレム型のモンスターを作ったんです。それは個人的にやりたいことができたし、ユーザーさんにもある程度好評を得られた。やりたいことを貫くだけじゃなく、ゲームデザインに落とし込む際のバランスが大切だと知りましたね。

安達:モンスターやアイテムを作る際、さまざまなデータを作るのもプランナーの役割なのですが、僕はそのデータづくりがとても大変でした。

中川:ゲーム開発初期に仕組みまで手が回らず、データづくりがとても煩雑になってしまった。自動化されていないので、プランナーの工数がとられてしまうんです。「みんなに苦しい思いをさせてしまってごめん」という思い……。

安達:データづくりが楽になれば他のことに時間を使えるのに、とは思っていました。でも、新しいワールドやステージ、大型のイベントや難しいダンジョンなど、新規のモノを作るのはとても楽しかった。

山口:スママジって、作りがリッチで、一般的なソーシャルゲームより作るコストが高いんです。もちろんできるだけコストを抑えて面白くなるよう工夫はしますが、リリースの速さが追い付かず「ヒママジ」と呼ばれたりも……(笑)。

中川:ユーザーさんがヒマしちゃってたんだよね。

小島:メジャーな会社のリリーススピードに慣れているユーザーさんは、スママジにも同じことを求める。少人数でそれに応えようとしていたので、それぞれのメンバーがひとりで3人分くらいを担っていたんじゃないかと思うほどです。

濃いファンが生まれたゲーム

中川:ユーザーコミュニティづくりは重視しました。ツイッターでコメントを返すといった直接のやり取りもできる限りやった。YouTubeでスママジの番組を作って生放送をして、台本を作ったりアイデア出しをしたり。

高橋:謝罪会見もしてましたよね。

中川:課金部分にバグがあったときには、YouTubeの生放送で「謝罪会見」と称して僕が出演しました。ユーザーさんには怒られることもありましたが、想いを伝えることで納得してもらえる部分もあって、とても近い関係性になっていたと思います。

高橋:ユーザーの熱量がこんなに高いゲームに関わったのは初めて。自分たちが驚くほどでしたね。演者(声優)さんも熱量が高かったし。

小島:鬼のようなリテイクを出したせいもあるかもしれない。スママジがデビュー作となった声優さんもいて、ひとつのセリフに1時間をかけたことも。新人の方にお願いしたのは予算の都合もありますが、有名な方のイメージが定着しないためという判断もあります。新人の方ならではの頑張りみたいなものも載せたかった。

中川:総じてニッチに刺さるゲームになりました。俳優の猪塚健太さんもスママジの大ファンで、生放送に出ていただいたこともあります。プレイも引くほど上手でしたね。

サービス終了時には悔しさのあまり涙を流すシーンも

中川:濃いユーザーさんも付いたし、もっと楽しんでほしくてこだわっていたのですが、残念ながら2018年10月にサービス終了という判断に。山口君なんて泣くほど悔しがって……。

山口:今それを言いますか(苦笑)。

中川:それくらい思いを込めて作ってくれたってことだよね。

山口:全体会議で話してもらった時でしたね……。ユーザーさんに申し訳なくて、とても悔しい気持ちでした。

中川:「悔しい」と涙を流してくれるのはとても救いになりました。事業として成功したとは言えませんが、このメンバーが集まってくれたことにとても意味があると思っています。また、スママジを好きになってくれた濃い、熱いファンの方々はアングーの宝物です。

今後も、ゲームが好きで作りたいゲームのある人と一緒に、走り続けていきたいです。プランナーだけでなく、デザイナーやエンジニアも企画の部分で意見を言える環境なので、そんな思いを持った人とゲーム作りをしていきたいと思っています。

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