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現実を見ていない

現実に目を向けているようで、別の場所を見ている。昨日通った道を歩いているようで、全く別の道を通っている。目の前の人に話しかけているようで、遠くの誰かに話している。本当は誰も見えていないのかもしれない。暗い夜道に一人かもしれない。一人で喋っているのかもしれない。

現実とは何だろう。誰かの作った世界のことだろうか。人が集まって暮らす社会のことだろうか。与えられた世界が現実ならそんなものいらないけど、僕たちは誰かの作った世界を生きているし、目に見えるのは与えられた世界の出来事だ。

ならば現実を見ずにいよう。何かに触れたつもりでも、何にも触れていない振りをしよう。頭の中の扉を開いて、イメージの世界を旅しよう。朝起きて夜眠るまで一日中、想像の世界を生きていよう。霧の街を彷徨うのも、森の奥深くへ進むのも、空に絵を描くのも自由だ。

頭を働かせて、手を動かしてイメージの世界を描く。実際に見えるものや触れられるものとは別の何かが現れる。記憶という装置が動き始める。想像の世界では自分と、自分ではない誰かの存在が浮かび上がる。自分ではない誰かは二本の足で立ち、想像の世界と会話を始める。遠くの場所のこと、旅の思い出、昨日あった出来事。

何を言っているのか分からない。何を見ているのか分からない。今目にしているものは現実なのか想像上のものなのか判別がつかない。手応えがない。心は覚えている。扉はどこかにあった筈だ。境界が分からない。全ては曖昧になっていく。一本の線は熱に揺れて融けていく。ゆらゆら、ゆらゆら。

朝と夜の間を生きている。夜から朝になる間を生きている。人と人の間。自分と他人の間を。心と身体。現実と想像。自分の作った世界。誰かの作った世界。生まれてから消えるまで、命の灯る間に見るのが現実。消える瞬間に見るのは夢。

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