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体育会系化する文化政策

文化政策にスポーツが含まれることになる。

従来、文化政策にはスポーツは含まれていなかった。

東京五輪の無理矢理開催など、体育会系による強引な政策主導に迷惑をしている中、文化政策分野にまで、体育会系政策が浸透してきている。

東大阪市第3次文化政策ビジョンが2021年3月中に策定され、スポーツが盛り込まれる見通しである。
このビジョンの素案の特徴は次のとおりである。

・コロナ禍で事実上破綻した未来投資戦略2018を根拠にしている
文化芸術基本法にはスポーツに関する規定が無いにも関わらず、スポーツを含むと無理矢理解釈している


後述する審議会会長は、次の趣旨の考えを持っている。

文化芸術基本法は官僚がつくった法律ではなくて、実は我々研究者、アーティストがかなり議論してつくった産物だ
国に従うという意味ではなく
国法に準じますと言わないで、国のをそのまま使って、東大阪ではこれを文化としますと言えば、全部終わりなので、あしらいは簡単です。

会長のお考えは立派ではある。

しかしながら、東京五輪が民意を無視して開催することとなっており、スポーツが政治主導で盛り上がっているのは明らかだ。

東大阪市役所は「ラグビーのまち」を標榜し、市の政策として、市民にラグビーを啓発し、普及活動をしている。
市民の中のほんの一部にしか過ぎない、ラグビー愛好者が政権を乗っ取り、このような暴挙に出ている。

スポーツやラグビーは、個人の趣味であって、公共の政策として実施することは不当である。
愛好しない者の立場から見れば、多様性と個を尊重する文化政策になじまない。

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森喜朗会長が東大阪市に来られました(平成23年5月)

スポーツを含めた文化政策のビジョンが、本当に策定されてしまうのか見物である。


パブリックコメント手続き

東大阪市が実施したパブコメの手続きは次のとおりであった。
このパブコメで、第3次文化政策ビジョンの素案が公表されており、文化政策であるにも関わらず、スポーツを含めるという趣旨になっている。

20210221 文化政策ビジョンPC募集

本パブコメの意見募集期間は、2021年1月25日~2021年2月24日であった。

https://drive.google.com/drive/folders/1qiNfTTCY2toZsyjwRdFS82mVA-ourLDd?usp=sharing

東大阪市のホームページからは削除されているため、私が設けた上記URLから関連ファイルをダウンロードできるようにした。

案件名 東大阪市第3次文化政策ビジョン(素案)

案件の概要

東大阪市文化芸術振興条例第6条に基づき文化政策の基本方針となる、「東大阪市第3次文化政策ビジョン」の素案に対する意見を募集します。

案件の趣旨、目的及び背景

本市では、文化政策における基本理念や施策にあたっての課題・考えなどをまとめた「東大阪市文化政策ビジョン」を策定しています。現行の第2次ビジョンが策定された平成20年から10年以上が経過しており、文化芸術基本法の改正など社会情勢は大きく変化しています。年齢や性別、障害の有無、経済的な状況や居住地域などに関わらず等しく文化芸術に触れることができる、いわゆる社会包摂の概念を重要視し、SDGs(持続可能な開発目標)の誰一人取り残さないとした基本理念とも関連付けながら、新たに令和3年度からおおむね10年間の第3次ビジョンを策定し、「文化のまち、東大阪市」の実現に向けて取り組みを進めていきます。

お問合せ 東大阪市 人権文化部 文化室 文化のまち推進課


素案の問題箇所

Ⅱ 東大阪市の文化の現状と課題
1 社会動向の変化
(6)ゴールデン・スポーツイヤーズ、訪日外国人の増加
 (11ページ)

ここには、次のとおり記載されている。

(6)ゴールデン・スポーツイヤーズ、訪日外国人の増加
 「未来投資戦略2018」において、観光・スポーツ・文化産業について強化していくことが明記されています。特に、国際スポーツ大会が連続するゴールデン・スポーツイヤーズは、インバウンド(訪日外国人旅行客)の急増(平成24(2012)年836万人→令和元(2019)年3188 万人)とも相まって東大阪市のまちづくりにおいても重要な期間であると考えられます。東大阪市は、大成功を収めた令和元(2019)年のラグビーワールドカップ2019™日本大会の開催都市のひとつであり、ワールドマスターズゲームズ2021 関西(令和4(2022)年に延期)のラグビー競技の開催都市として参画しているなど、ゴールデン・スポーツイヤーズに密接に関わる自治体です。
 そのため、「文化芸術基本法」の趣旨にある観光、まちづくり、国際交流、福祉、教育、産業、スポーツその他の関連分野における施策を取り込むことで、東大阪市のさらなる文化芸術の継承・発展・創造につなげていくことが求められます。


私が提出したパブコメ意見

意見
 「(6)ゴールデン・スポーツイヤーズ、訪日外国人の増加」を削除してください。

理由
1.市のラグビー事業は、政治・行政・民間業者が進めてきました。市民個人の多くはラグビーを愛好していません
  ラグビー事業を文化政策で行うことは、政治・行政からの独立性を損なっており、アームズ・レングスの原則に反しています。ラグビー愛好者や近鉄ライナーズなど特定の者だけが有利になる事業を、文化政策にすることは不適切です。

2.素案の「1 市民の自由を最大限に尊重し、多様性と個を尊重します」(30ページ)に記されたことは、全く正当であり、このとおりに東大阪市政を進めていくべきです。
  ラグビー事業を推進する人達はワンチームという用語を使います。この用語は、ワンチームの内側にいる人達だけに有意義であり、外側にいる人達(ラグビーを愛好しない者)には同調圧力がかかり、疎外感をもたらします。
  市役所は、市民へのラグビーのプロパガンダや、市立学校においてラグビー教育を行っています。個人の嗜好であるべき趣味(ラグビー)が、公共の目標に位置付けられています。
  これは、ラグビーを愛好しない者に対して圧力をかける働きがあり、多様性と個を尊重する文化政策になじみません。

3.前回の東大阪市文化政策ビジョン(平成20年3月)には、スポーツに関する定めがありません
  前回は無かったのですから、新たにスポーツを加えることに関して、理由説明が必要ですが、理由説明がありません。

4.文化芸術基本法(平成13年法律第 148号)第2条第10項に定める関連分野には、スポーツを明示していません。前文や目的にも書いていません。
  素案に書かれてある文化芸術基本法に関する文は誤っており、読者に誤った認識を与えてしまいます。

5.未来投資戦略2018(平成30年6月15日)には、「訪日外国人旅行者数を2020年に 4,000万人(中略)を目指す」(85ページ)など2020年時点での目標値を定めています。
  これら目標が破綻していることは明らかです。
  目標が破綻した戦略を根拠に東大阪市のまちづくりを進めることは不適切です。

6.「大成功を収めた令和元(2019)年のラグビーワールドカップ2019™
日本大会」の「大成功を収めた」ことを示す東大阪市としての公式の証拠(エビデンス)が無いため、このような評価をできません。
  「大成功」という言葉は程度の表現としてあいまいです。東大阪市役所職員による主観的な思い込みを公文書に記すことはやめてください。

パブコメ意見は以上です。


これまでの審議会の意向

東大阪市役所では、市の文化政策ビジョンなどを審議する東大阪市文化芸術審議会を設けている。

この審議会の中で、スポーツに触れる場面があった。

第5期第6回東大阪市文化芸術審議会(令和2年7月6日)の会議録

19ページ

会長
分かりました。文化芸術基本法は官僚がつくった法律ではなくて、実は我々
研究者、アーティストがかなり議論してつくった産物だと思っています。あそこの定義はかなり精密なので、何も国に従うという意味ではなく使いやすいという意味です。だから別にこれを国法に準じますと言わないで、国のをそのまま使って、東大阪ではこれを文化としますと言えば、全部終わりなので、あしらいは簡単です。

20ページ 会長発言

最後のスポーツイヤーズとか訪日外国人の増加は、これは東大阪的特徴で言っているので、これについて私たちは抵抗はしません。どうぞ。ということです。そのような感じでトピック出しをしてもう一度リバイズド版を作ってみます。

つまり、会長は「(6)ゴールデン・スポーツイヤーズ、訪日外国人の増加」を認めるという考えであった。


パブコメへの回答及び反論

私の上記パブコメに対する、市からの回答やそれへの反論などを次の記事に書きました。読んで頂ければ幸いです。


(参考)

トリエンナーレ(アート・プロジェクト)における アームズ・レングスの原則 について
https://www.pref.aichi.jp/uploaded/life/268580_935068_misc.pdf


以上

#パブリックコメント #東大阪市 #文化政策 #アームズレングス