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君が世界のはじまり

映画「君が世界のはじまり」を見ました。

誰かのタイムラインで「この作品に携わったすべての人に嫉妬してしまうくらい素晴らしい映画」と呟かれていて、そんなど正直すぎる称賛を送るほどの作品なのかと思って興味が湧きました。


※ここからネタバレあります。




この映画は大阪の何もない片田舎が舞台で、ほとんどのストーリーが学校か閉鎖間際のショッピングモールの中で起こります。

高校2年生のえんと親友の琴子が自転車に二人乗りしながらじゃれあう日常のシーンから始まっていく。その様子は子供っぽくて何でもない下ネタで笑えた学生時代と重なる。主人公のえんはぽけーとしていてつかみどころのないキャラクターにみえて、反対に琴子は何でもないようなことでも感情を爆発させるようなキャラクター。2人の関西弁での掛け合いが自然で面白い。まるで二人だけの世界を構築しているようで。

そこに業平(ナリヒラ)が入ってきた。

家庭環境が良くなくて学校を休みがちだった業平は体育館で一人涙を流していた。それをえんと琴子は目撃してどうも気になってしまう。

琴子は業平に今までのとっかえひっかえの恋愛とは違う好意を持っていて、でもうまくいかない。


精神病を患っている業平の父親が外で暴れているのを業平が必死に止めるシーンがある。その瞬間をえんに目撃されて、惨めで消えてしまいたくなっただろうし、自分の不幸を呪って親を殺してやりたいと思っただろう。

でもえんは安い同情を述べるでもなく極めて普通に接した。

それがきっかけで業平とえんが親しくなっていく。それにつれてえんと琴子の関係が崩れていく。


同じ高校のジュンは、一緒に住む父親に行き場のないイライラを抱えていて、誰もわかってくれない思いを自分と同じように親に振り回されて生きる伊尾とのセックスで消化するしかなかった。

伊尾は親の再婚で東京から転校してきて何もない片田舎に嫌悪感を抱きながら生活していた。彼は新しい母親になったミナミさんと肉体関係を持っていて、ミナミさんの人生が大阪の片田舎で完結してしまう事に同情しながら、もっと広い世界があることに気づいて欲しいと叶わない事を願っていた。



それぞれ悩みを抱えながら普通に生活をしている若者達のストーリーである。


物語の中盤に殺人事件が起こってえん達の高校の生徒が親を殺したというニュースが流れた。

皆がそれを他人事だとは思えなくて「あのニュースが流れてお前の顔が浮かんだ」「あなたが学校にいてよかった」などとそれぞれが殺人を犯していなかったことに安堵した。

親を殺した生徒はストーリーには登場してこない「フジノ」という学生で、フジノは普通に毎日学校にきて、普通に授業を受けて、普通に友達と話して、殺人をするようなやつには見えなかったという話が出る。けれども親を殺してしまうほどの強い思いを抱えていた。

その事件を受けて主人公達は到底理解できない愚行と切り捨てるのではなく理解したいと願う。


後半の深夜のショッピングモールに忍び込んで好き放題するシーンは完全な青春映画でストーリーにまとまりを持たせるための希望的な展開としてリアリティはないけれど楽しく、羨ましく見れた。

ブルーハーツをあんまり知らないけれど青臭くて「なんか、、、いいな」と思えた。


それぞれが主人公でそれぞれの問題を抱えていて、結局解決なんてしないけれど生きていくしかないのだ。

大人から見れば「青い」とか「若気の至り」と言う言葉で片付けられてしまいそうな苦しみにちゃんと手をつっこんで汚れながらも描いてる映画でした。

私のパラレルの青春物語なのかとおもうほど共感してしまうところもあって、当時の私も家庭に問題を抱えていてある人を殺したいと願っていたし、実際に荒れていた。その頃に抱いていた表に出せなかった暗い重たい気持ちに光を当ててもらって今更、今更ですが、少し救われた気がしました。

この映画を見ると「殺したいほど憎む」という気持ちは結構メジャーなものだったのかとも思えました。大人になればそれにも折り合いがついて生きやすくなるけれど、あの時は誰しもがもがいて苦しんでいたのかとも思う。(極端ですかね、、、)



ただ、私も大阪人だけどお好み焼きとご飯は一緒に食べないんだよなー。

あと都会の大阪で育った私からすると(自称シティガール)片田舎の大阪をイメージ出来なくて、一旦八尾とかをイメージするけれど梅田まで30分で行けるしなぁとも思いながら。

ただ、ショッピングモールが近所にあって、30分で都会にアクセスできる田舎なら上京したいとか挑戦したいとか思うバイタリティーがなければそこで人生を完結させる生き方もあり得てしまうんだろうなと思って、余計なお世話だろうがゾッとしてしまった。映画では描くに足りない退屈もきっとあるんだろうなと思った。


若いキャストが必死に演じていて、監督も若く、私と同年代でこれを生み出したのかと少しの嫉妬と焦りも持ちますが素晴らしい映画でした。
またもう一度見に行きたいです。

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SAORI

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アンドロイドのお姉さん 仕事でアンドロイドをよくやってます。 書く文字は人間くさくいたいな。