12/16/2023【日記】

NHKプロフェッショナルの宮崎駿特集を見た。今回はいつもの回とは違い、恐ろしく殺伐とした雰囲気になっていて、今までにあった感動する作りや編集が削れ、最終回に向けて進んでいる感触が確かにあった。宮崎さんと高畑勲監督の愛憎溢れる長い人生にフォーカスしたつくりだった。全員がひどく怒り、文句を言い、批判をしていた。脈絡もなく、霊におびえていた。宮崎映画の中のセリフと現実のセリフがはっきりとリンクする編集、そのすべてが何か特定の意味やメッセージを生むものではなく、得体のしれない「最後」という概念にひたすら向かう暴走機関車をたんたんと記していくニュアンスを多分に含んでいた。
取材をしている荒川さんのひたむきさと努力もかいまみえるつくりになっていて、取材者の存在がはっきり確認できる仕組みになっていた。最後に向かうにつれて宮崎さんの異質性や彼を遠巻きにしていく香りがして、ある種の敬意を感じた。

宮崎さんのデスク周りを神棚のように改造されたときに、宮崎さんが祭られているみたいですね、というコメントを荒川さんがしていた。宮崎さんはそれに答えた「神様は善良なものだけじゃないですから、遠ざけておこうとすることもある。必要な時にだけ来てくれって」

旅立ちから始まる宮崎映画は逃げ出したいと思う気持ちと紙一重で、最後に主人公が落ち着く道を見つけるハッピーエンドは、逃げられなかった証なのかもしれない。焦燥で丸太を割り、子供と話し、幸福ではなかった。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?