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【サステナブルな働き方#11】生活圏での職住近接プロジェクトが取り組む、等身大のSDGs(後編)

表参道(東京都渋谷区)に本社を構えるビジネスデザインカンパニー、イノベーター・ジャパンがなぜ郊外の生活圏での職住近接プロジェクトを始めたのか。前編では、その背景やアプローチ方法などを記し、SDGsのゴールと当プロジェクトの目指す先の重なりについてお伝えしました。
前編はこちら

さて、ここで改めて&donutsプロジェクトを簡単に紹介させていただきます。

都心と郊外が抱える働くことへの課題に対し、「人がいるところに仕事を移す」という発想で双方を結びつけ、課題解決を図ったプロジェクト。自然豊かな郊外(都心を取り巻くドーナツ地帯)で暮らし、子育てや介護などの理由で時短勤務が必要だったり、さまざまな理由で都心への通勤が難しい人材が、これまで積み重ねてきたキャリアや潜在的な能力を活かして働けるプラットフォームを形成しています。サステナブルに働く仕組みづくりに加え、大人の学びやコミュニティ形成にも取り組んでいます。

この記事を書くきっかけは、外務省主催の「ジャパンSDGsアワード」への挑戦でした。応募の際に必要な5つの評価項目「普遍性・包摂性・参画型・統合性・透明性と説明責任」は、日本の「SDGs実施指針」に「実施のための主要原則」として書かれいる重要なものとなっているので、後編はこの軸で当プロジェクトの活動を見ていきたいと思います。

普遍性

・ 国際社会においても幅広くロールモデルとなり得る取組であるか
・ 国内における取組である場合、国際目標達成に向けた努力としての側面を有しているか
・ 国際協力に関する取組である場合、我が国自身の繁栄を支えるものであるか

※「令和2年度『ジャパンSDGsアワード』の具体的実施方法について」から抜粋。以下、同様

&donutsが最初の拠点を立ち上げる際には、「人材の母数」、「人が集まる箱」、「マネジメント人材」の3点に着目。その後、柏の葉オフィスを軌道に乗せる過程で、「そのエリアに暮らす人材とのマッチ度」の重要性を実感し、その経験を二拠点目となる湘南オフィスの立ち上げ時に活かしました。おかげさまで、二拠点目開設7ヶ月後にはメンバー増員による増床移転ができるほどに成長しました。これらの経験はオフィスを新設する際のスキルとなっており、今後もオフィス新設時に活用していきます。

また、フルリモートワークが可能なジョブ型の導入後、社内コミュニケーションはオンラインが主となりました。海外で暮らす時差のあるメンバーがいても、現在のところ問題なくチームが機能しています。パソコンひとつで世界中どこでも働ける環境を実現するには、時差や言語、国ごとの制約などさらに検討を重ねる必要はありますが、ハードルがあればその都度超え方を探っていきたいと考えています。

さらに、&donutsには代表の渡辺と縁のあるデンマークの要素が取り入れられています。例えば、2015年にデンマークのビジネスデザインスクール「KAOSPILOTS」のインターンシップで学生と共に構想した「育児休暇中の女性の働き方にイノベーションを起こす環境づくり」は当プロジェクトの原案となっています。

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円形のキッズスペースを取り囲むようにドーナツ上のワークスペースがあり、どこからでも子どもの様子を伺えるオフィス。そこでは、ただ働くだけでなく、子どもや働く人向けにさまざまな教育コンテンツが提供されているなど、幸福度の高いデンマークに根付く共創の精神や、生涯教育支援などの要素を感じることができます。このご縁を今後も大切にし、海外の好事例を私たち流に取り入れることも続けていきたいと思います。

包摂制

・ 「誰一人取り残さない」の理念に則って取り組んでいるか
・ 多様性という視点が活動に含まれているか
・ ジェンダーの主流化の視点が活動に含まれているか

プロジェクトを立ち上げたのは、子育て中の女性たちでした。基本理念として取り組んでいる「ウェルビーイングな社会の実現」「人の可能性を最大限に引き出す(潜在能力の活用)」は子育て中の女性のニーズとの相性がいいと考えています。実際に、現在在籍しているメンバーの8割が子育て中の女性です。

子育て以外にこれまでに参画したメンバーが新しい働き方を模索したきっかけは、家族の看病、ご自身の体調ケア、複業、ワーク&ライフのバランスをとりたい、海外で暮らしながら日本企業に勤めたい、パソコンひとつで場所にとらわれない働き方をしたい、フルリモートワークをしたい、などがありました。引き続き、生活圏での職住近接を必要としている方に届くよう、情報発信やイベント実施などの取り組みを続けていきたいと思います。

採用基準や職種、仕事内容、賃金は、性別や地域による差はありません。また、同業務の賃金は東京本社所属の社員と同水準となっており、年齢や勤続年数の長さではなくスキルやアウトプットをベースに決まります。

参画型

・ 脆弱な立場におかれた人々を対象として取り込んでいるか
・ 自らが当事者となって主体的に参加しているか
・ 様々なステークホルダーを巻き込んでいるか

立ち上げ当初から、子育て中の女性が働きやすさや働きがいを感じることのできる環境であれば、介護や複業など他の理由で都心でのフルタイム勤務が難しい人たちにも働きやすい職場となるのではないかと考えて取り組んできました。そのため、短時間勤務者や体調不良や看病による急な休みが発生することを前提とし、属人性を排した業務によるチーム制や、バックアップが可能な仕組みをつくってきました。さらに、スライド勤務や中抜け、リモートワークなど柔軟な働き方を実現できる環境を整えてきました。

&donutsにいるのは、自らの働き方に悩み、新たな働き方を求めたメンバーが多いと感じています。現時点をゴールとせず、より働きやすさを向上させるべく、アイデアを持ち寄ってメンバー主体で検討する場があります。トップダウンで戦略的に実行する取り組みに加え、ボトムアップで提案して組織を動かしていける体制とそれを実行するメンバーの存在は&donutsの強みのひとつとなっています。

また、過去の自分と同じように働き方に悩む人たちにの助けになりたい、という声をよく耳にします。その思いのひとつの表れが、自社開催イベント「andonuts CAFE」です。毎度、自発的に集まったメンバーで企画や運営をします。ビフォア・コロナは拠点のある柏の葉と湘南地域に住む方たちをご招待してきましたが、コロナ禍によりオンラインイベントが可能になったことで地域を広げて参加いただくことができるようになりました。

統合性

・ 経済・社会・環境の分野における関連課題との相互関連性・相乗効果を重視しているか
・ 統合的解決の視点を持って取り組んでいるか
・ 異なる優先課題を有機的に連動させているか

「&donutsはサテライトオフィスですか?」という質問をいただいたことがあります。サテライトオフィスは、従業員にとって本社よりも通勤しやすい場所に作られ、本社と同様の仕事ができるようなオフィスのことを指すそうです。&donutsは、これとは逆の発想です。

「仕事の集まるところに人を集める」のではなく「人が集まるところに仕事を移す」をベースに、郊外や地方の生活圏で暮らす人を採用しています。その方たちが地元でポテンシャルを発揮することは、地域や日本の経済の発展にもつながると思っています。

また、人や仕事が都心に集中する状態から、コロナ禍では逆に地方分散が加速化しました。オフィスを地方のIT人材の育成やイノベーションの生まれるハブとすべく、地方の行政や企業の方、住民の方とつながっていきたいとも考えています。

透明性と説明責任

・ 自社・団体の取組を定期的に評価しているか
・ 自社・団体の取組を公表しているか
・ 公表された評価の結果を踏まえ自社・団体の取組を修正しているか

第三者から評価をいただく機会も積極的取り入れたく、アワードへのエントリーを実施しています。2019年は経済産業省後援の「Work Story Award」審査員特別賞「働き方を、ジザイに」をいただきました。

選んでいただいた審査企業の株式会社ザイマックス様からいただいた受賞コメントはこちら。

「都心のオフィスに人を集めるのではなく、人にワークプレイスが寄っていく」という、ザイマックスが想い描く社会の在り方を実践するストーリーでした。今後、企業にとっては「働いてもらい方改革」が必要ですが、通勤という「負」を軽減することでそれを実践し、また個々人のQOLも重視している点にも大変感銘を受けました。このような働き方がより大きく社会に広まる期待も込めて、本ストーリーを選出いたします。

また、取り組みや近況報告は積極的に自社サイトでのニュース掲出やInstagramFacebook、noteなどを通してお伝えさせていただいてます。

振り返って

5つの側面から客観的に見てきましたが、力不足も実感します…。裏を返せば、伸び代があると前向きに解釈して励みます。今は、まだ私たちの取り組みのインパクトはとても小さなものです。しかしながら、身の丈にあった小さな一歩を積み重ねることで、少しずつゴールとの距離が縮まると信じています。

ライフステージの変化があってもキャリアを継続し、サステナブルに働く取り組みは、街づくりを推進する地方自治体や企業様からも関心を寄せていただいています。さまざまなお話を伺いながら、働くことは大事な要素のひとつで、ハッピーに働くことができれば人生はより豊かになると実感しました。

在宅勤務と都心企業への通勤、その間にあるのが「生活圏での職住近接」です。メンバーは職住近接により通勤時間が短縮されたことで、より生活の質を向上させワーク・ライフ・インテグレーション(ワークとライフの統合)の実現に取り組んでいます。

今後は私たちのように、往復2時間以上の通勤から解放され、生活の地である郊外で働き、その時間を本業以外の自己実現に繋がる活動に使おうとする人が増えるかもしれません。無限ではない時間やチャンスをどう配分するか。その想像にワクワクしませんか!?

同じ目的を持つ人同士がつながって地域で新たなプロジェクトが立ち上がり、活気が生まれて新たな価値が生み出されていく。働くことを楽しみ、幸せに暮らす人たちが増えていく。皆さんの描く「はたらく未来」に&donutsが何か関わることができたら幸せです。私たちは今後も活動を続けていきます。


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自らの価値観やライフスタイルの中で、自分らしく働き続けることを選択しているメンバーたちのストーリーも併せてご覧ください。

最後に、私たち&donutsプロジェクトは一緒に働くメンバーを募集しております。詳細はこちらをご覧ください。