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松の司と日本料理との考察

この何ヶ月間ずーっと悩んでいたことがあった。

弊社とも長年取引のある
滋賀県 松の司 松瀬酒造

松瀬社長、石田杜氏から料理と日本酒のペアリングの勉強会を組んで欲しい、と大変光栄なご依頼を頂いた。

テーマは料理に合う酒、合わない酒。

しかし、相手は全員日本酒のプロフェッショナル、あきらかに濁ったもの、酸味が強いもの、甘いものを選んでも意味がない

そうだ

松の司 VS 日本酒のトップを料理に合わせてディスカッションすることにしよう

料理は、研ぎ澄まされた料理を作る
日本料理一凛 橋本親方に


親方の料理は、砂糖、塩は極力使わない、出汁と素材を活かした料理。

ちなみに松の司という日本酒は、私の持つ印象はこんな感じ

「静かな酒」

初めて日本酒を飲む人にはわかりづらい世界観かもしれないが、しかし色々銘柄を飲み進めていくうちに

しみじみ旨い

と感じるようになるお酒だと思う。
※また社長、杜氏はワインも大好き。世界中からワインの有名生産者が蔵へ見学に来ます。

蔵のホームページから松の司の目指すところを抜粋すると、

●自然には決してできない酒が、自然にここにあるかのような、水のような空気のような酒、当たり前に存在するもの
●たんなるアルコールではなく、美味しい以上に、蔵の周りの景色を投影させた味わい
●この蔵が持つあらゆる要素から醸成される穏やかな個性がありながらも、素朴になり過ぎずに、洗練された要素を感じる酒
●造り手の自我が強すぎることは好ましくなく、そんなお酒も造れない

=蔵の風景が見える酒を目指している。


ー料理&日本酒ー

それでは当日合わせた料理とお酒の説明に

①先付 松の司 黒ラベル 涼冷え × 澤屋まつもと ノータイトル 涼冷え菊、ワタリガニ、酢、鱧フライ  
②椀物 土瓶蒸し 楽 ぬる燗 × 醸し人九平次 雄町 ぬる燗 
③刺身 竜王山田錦 山之上 雪冷え × 而今 雪冷え赤イカ、鯵なめろう、鯛 
④八寸 AZOLLA 常温 × 新政 エクリュ 常温 
⑤焼き物 生もとぬる燗 × 磯自慢 純米吟醸 雪冷え 
⑥煮物 加茂茄子、鴨治部煮 産土 上燗 × 飛露喜  
⑦食事 穴子寿司 産土 常温  
⑧甘味 なし


1 先付 石川能登毛蟹、菊お浸し、酢橘

松の司 黒ラベル 涼冷え15℃ × 澤屋まつもとノータイトル 涼冷え15℃
甲殻類は香りが華やかで甘味のある日本酒との相性が良い。

そこで一番始めに黒ラベルを合わせた。(ビールではない)

調和で黒ラベル、蟹と柑橘の様なイメージで甘味を引き出す為のノータイトル、実際は酢橘の使い方が繊細で、ノータイトルだと料理を超えてしまった。

黒ラベルはまろやかに調和した。今のロットは1年以上寝かせている

2 椀代わり 松茸土瓶蒸し(鱧、海老、甘鯛、三つ葉、銀杏)酢橘

名言「ぐじが入らなければ土瓶蒸しではない」

楽 ぬる燗40℃ × 醸し人九平次 雄町 ぬる燗40℃
出汁の旨味、松茸、三つ葉、鱧、海老、甘鯛の合わさった複雑な出汁。

研ぎ澄まされた、透き通った味わい、、ナンジャコリャァア

中間から余韻にかけて軽やかで上に抜けていく楽を調和で、九平次雄町の酸を酢橘を絞った際の輪郭に合わせた。

実際出汁がかなり繊細でそのままの出汁だと楽でも超えてしまった。酢橘を絞って合わせると距離が近づいた。

松の司に合わせるには料理にも輪郭が必要なのだ。

九平次は甘味と酸で出汁は超えてしまっていたが、中の具材に酢橘を絞って合わせると海老や鱧との相性が良かった。椀物は出汁と椀種で世界観が変わる為、ピンポイントで合わせるのが本当に難しい料理。

その後、黒ラベルを合わせたところ、出汁の世界観には一番近く、精米することへの可能性を感じた。

3 向付 鯛、カマス、赤イカ、酒肴 鯵なめろう

竜王山田錦 山之上 雪冷え5℃ × 而今 雪冷え5℃

刺身に対して日本酒を考える時、魚の種類、脂の量はもちろん、調味料が醤油なのか、煎り酒なのか、塩なのか、柑橘を絞るのか、を考える。

今回はふくらみがあり、旨味の余韻が長い山之上と、甘味のはっきりとした而今を比較した。

赤イカと山之上との相性は素晴らしかった。イカのねっとりとした甘味の余韻を伸ばしてくれる。

また鯵なめろうのような薬味がたくさん入り、味噌のボディがあるものと而今は相性が良かった。この竜王山田錦のシリーズは米のエリアによって味わいが明確に変わるので、今後それぞれのエリアの特徴と料理との相性をリンクできれば面白いことができるな

4 豆皿八寸 茶碗蒸し蛸の子、鰻ざく、新いくら、鯖棒寿司、芋蛸南京、サザエ、醤油豆、茄子の胡麻浸し、酢の物、白芋茎の白煮

橋本親方の最強八寸

見て下さいこのヤバさ

上からもどーぞ

AZOLLA 常温 × 新政 エクリュ 常温

八寸に合わせる時の難しさ、それは一つの料理に焦点を当てると他の料理に合わせられなくなること。

これだけ皿の数がある中で、これは100点、こっちは20点というような合わせ方はできない為、全てに通せる提案をすることをいつも意識する。

八寸の中でも、蛸の子の余韻にAZOLLAは素晴らしい相性、また蛸の旨味とも相性が良かった。

松の司は余韻のある素材と相性が良い。

また新政のエクリュははっきりとした甘味、酸味が特徴で、全てに合わせることはできないが、飛びぬけて良い相性も発見できる。

5 炊き合わせ 豊年鱧 賀茂茄子 松茸

生もとぬる燗40℃ × 磯自慢 純米吟醸 雪冷え5℃

炊き合わせは合わせる時に、素材の風味、出汁の力強さ、温度を考える。

今回は分かりやすい2アイテムを温度を変えて合わせた。豊年鱧の香ばしい要素は生もとの風味とも相性が良く、賀茂茄子の旨味も調和した。

逆に磯自慢を合わせた理由として、磯自慢の味わいをリセットする効果を体感して頂く為。

料理との温度の差は、口の中でお互いの温度が揃うまでの時間差もあるので、温かい料理には温度を近づけたほうが距離が縮まる。

でもこたつで食べるアイスのようなシチュエーションも良いので、最後は好み。

6 焼物 マナガツオ ※写真なし
産土 常温 × 飛露喜 特別純米 花冷え10℃

焼物も実は現代風の高い香りや酸味のある酒を合わせるのが難しい料理のひとつ。

焼く事で水分が抜けて風味が凝縮されていく為、酸で切ったり、余韻を切るようなお酒だと合わせる意味がない。

当初は熱燗で合わせる予定だったが、常温で合わせた。

お酒の温度を高くする理由は、焼き物の脂を口の中で溶かし、開かせる意味もある。

産土は万能性の高いお酒で、輪郭が柔らかく、穏やかな旨味があり、炊きもの、焼き物、などに対してとても使いやすいお酒。

飛露喜は綺麗な旨味、甘味がありながらもキレも持ち合わせているお酒で、凝縮感がありながらも、キレがある為、後半でさっぱり飲ませたい場合は飛露喜。

7 食事 鰻寿司 

産土 常温

通常食事ではお茶がでるので、日本酒を提案する事はあまりありませんが、今回は鰻だったので産土を。

鰻旨すぎ

産土は松の司の考える味わいを全て持っているお酒。そして地元での消費はこれが一番多く、全体の生産量の2割を誇る。

私も好きなお酒。皆様からはいつもの会だと最後に良いお酒を持ってくるのでまさか最後に産土が来るとは思わなかったと仰られていた。

本質は値段ではなく、味わいなので、値段関係なくペアリング提案します。

8 甘味 こちらはお茶

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いや~緊張した。

けど無事に終わって良かった。

私自身、松の司への理解がより増した会となりました。

親方の料理もいつも最高ですが、今回は特に仕込み時間を増やして、研ぎ澄ませたとのこと…

だからいつもよりさらに食後感が軽かったのか、、

最後親方が「酒を飲ませる為の料理なのか、料理を食べる為の酒なのか、何を伝えたいのかが大事よな、」と

松瀬社長、石田杜氏率いる松の司が目指すのは「たんなるアルコールではなく、美味しい以上に蔵の周りの景色を投影させた、この場所でしか造れない味わい」

黒ラベルと出汁、楽と酢橘、ブルーと烏賊、アゾラと蛸の子、泥亀煮、生酛と豊年鱧、産土と鰻…松の司への理解がさらに深まった夜でした。

蔵には造りたいお酒を造って頂いて、それを私達は料理に合わせて提案する

酒屋も次の時代に来ていると思います。

今度は蔵にお邪魔して、すっかりファンになってしまったひさご寿司さんにまた勉強に行きたいな〜。

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年間3000種類以上テイスティング。自分が惚れた酒を伝えたい。お酒はオールジャンル、家にwhisky、brandy、shochuが80本以上。運命的に日本酒に出会い、上京後wineの勉強を始めて10年。成分で考えるのが好き。酒と食の研究で食べ歩きをする都内の酒屋。

コメント1件

すごい、神々のたわむれ…
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