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2023.02. 原子力・福島の動き 原子力規制委員会 原発60年を超える運転を認める新制度承認 について

 原子力や福島の関係をめぐるニュースを追ってはいるのですが、コメントを書く余裕がない、と言い続けていると、自分のなかでも忘れていってしまいそうなので、月に1回程度、まとめて書くことにしようかと考えています。

原子力規制委員会 原発60年を超える運転を認める新制度承認

 2011年の福島での原発事故のあと、原発の安全性を重視する流れのなかで、原子力発電所の運転は、稼働開始から40年までと法律で定められました。これに対して、政府が方向転換を行い、原発の寿命を延長する法律を今国会で通す見通しとのことです。
 原子力発電所の安全審査を行う原子力規制委員会が、この新制度による原発の寿命延長を承認した、とのことですが、地質などを担当する委員が反対をし、多数決で押し切ったとのことでした。5名の委員の全会一致で決められることが慣例となっている規制委員会では、きわめて異例であると書かれています。

 私は、原発の賛否は表明しないことにしていますので、再稼働についてもおなじスタンスを取るつもりなのですが、この規制委員会というよりも、新しい山中伸介委員長の仕切りによる、この強引な進行は大変よくないと思います。
 第一に、そして最大の問題として、規制委員会の信頼性を大きく損ないました。規制委員会の信頼性は、専門性の高さはもちろんのこと、その独立性に担保されている部分が非常に大きいです。
 他の委員の発言からも、早く認めるように強いプレッシャーがかかっていた、とありましたし、経産省からのプレッシャーだけではなく、もちろん政治サイドからもあったのでしょうが、プレッシャーがあったのなら、なおさら拒否すべきでした。

 私は、福島の原発事故のあとの、日本政府が行うことのできた数少ない大きな改善点のひとつが、原子力規制委員会の設立であったと思っていたのですが、それがこうして大きく損なわれることは、非常に残念ですし、強い落胆を覚えます。

 また、現在は、資源価格高騰による電気代の急激な値上がりもあり、世論の反発は大きくありませんし、再稼働についても容認の人が増えていますので、強い反感の流れにはならないかもしれませんが、状況が変われば、また世論は大きく変わります。

 天然ガスの価格は国際相場は低下してきていますし、国内の電力設備の増強や更新の必要性といった面でのコスト上昇はありえますが、電力価格はいったんはいずれかの段階で落ち着くことになるでしょう。
 そして、原発の再稼働も進むのかもしれません、が、東日本での原子力発電所は長期稼働が行われておらず、操業を実際に経験したことのない職員も相当に増えている、と言われています。稼働が行われてこなかったため、士気も落ちているでしょう。こうした複雑な施設の稼働には、複雑な連携したオペレーションが必要とされるため、こうした細かな部分のスキルの低下は、そのままトラブルの発生につながる危惧が強いです。それがどの程度の深刻さになるかはわかりませんが、再稼働後に、なんらかのトラブルが起きる可能性は非常に高い、と思っています。

 こうした状況になったときに、それ以前に信頼性を失っていた規制委員会は、その存続そのものが厳しくなるほど信頼が失墜し、激しい批判にさらされることになるのではないかと思います。

 規制委員会の存続が厳しくなるほど信頼を失うということは、日本での原子力発電所の稼働そのものが厳しくなることを意味します。
 私は、原子力発電所に賛成でも反対でもありませんから、原子力発電所というオプションを将来的に失う道を政府が選びたい、というのならば、それで結構だと思います。ただ、そうでないならば、今回の事態は、原子力行政における大失態といえますし、プレッシャーをかけた側、プレッシャーに負けた山中委員長いずれも、規制委員会の責任の重大さを理解できていないのではないでしょうか。

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