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ニュース✔︎:こんな福島に誰がした? 異様な世界の異様な話

 ここのところ「異様」というコメントをつけることが増えています。全体の空気感が「異様」になってしまっているので、起こるできごとがことごとく「異様」になってしまうのです。もっといえば、倫理観や道徳のたがが外れてしまっている、ということかと思います。それもまったく転倒しているというのではなく、平常との連続的なつながりのなかで、さまざまな箇所で小さくたがが外れた結果、全体が異様に歪んでいる、という感じです。ですから、別に話をしていて、あきらかにおかしな言動に遭遇するわけでもないのですが、なんとなく違和感があちこちで起きてしまって、その場から離れて距離をとって考えてみると、いいしれぬ違和感となる、という感じです。

 異様と感じたニュースのひとつです。東京東雲の公務員宿舎に入っている自主避難者に対して、無償期間の終了にともない、県が家賃の支払いを求めていたものに避難者が応じなかったため、県が2倍の家賃を請求し、それに対して避難者側が訴訟したことに対して、さらに県が訴訟を起こすという展開です。

 県の求めていた退去に応じなかったからといって、それぞれ事情もあるようですし、たとえばバリケードを作ってフロアを塞ぎ、他の入居者に迷惑をかけているというわけでもないのに、そこまでやる必要があるのかな、というのが率直な感想です。
 そもそもでいえば、阪神淡路大震災でもそうだったように、この手の居住問題は長引くのがあたりまえのことですし、最大十五万人の避難者が出た原発事故のこれまでの仮設住居等の退去・撤去は、おどろくほどスムーズにできていると思います。これは、地域の取りまとめ役の方を筆頭に、現場の担当者が細やかにフォローして回った結果だと思います。最後のひとりまで取り残される人がいないよう、心を配っていた地域の方達のご苦労話は、あちこちでお伺いしました。

 要は、細やかなフォローがなければ、取りこぼされて行き場がなくなる人がいるのはしかたのないことで、そこで行うべきは細やかなフォローであって、強行措置ではないと思うのですが、私はそんなにおかしなことを言っているでしょうか?

 それから、「異様」だと思うのは、福島の甲状腺検査にまつわる問題です。私がその異様さに絶句したのは、『みちしるべ』を拝読してからです。

 内容は、以下の書籍と重なるところが多いので、ご興味をお持ちの方はこちらをご覧になるほか、ウェブでも同内容は見つかりますので検索いただければと思います。

 「異様」なのは、こうした書籍が出されるようになった、という事態そのものです。
 著者のおひとりの緑川早苗先生は、私は会議などで何度かご同席したことがある程度ですが、甲状腺検査の第一線で苦しみながら、子供たちのことを第一に考えてご苦労なさっているという話は、最初の頃からずっといろんな方達から伺っていました。

 あまりに多くの矛盾を抱えることになった甲状腺検査の現場で、なんとか軌道修正できないかと苦労されているという話も、それがなかなかうまくいかないということも聞こえてきていました。
 理のないことをなさる方ではないと思っています。その方がこうした内容の書籍を出さねばならない事態に至った、ということは、強い衝撃でした。そして、緑川先生のご尽力は、福島の県民健康調査にわずかでもかかわったことがある人ならば、報道を含めて多くの県内の人たちも知っているはずなのに、それを黙殺しているところも「異様」以外にどういう言葉で表現すればいいのかわかりません。

 ひとことで言えば、「こんな福島に誰がした?」というのが、ここのところの感想です。

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