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『スティーブ&ボニー 砂漠のゲンシリョクムラ・イン・アメリカ』(晶文社)12月20日発売!

 先日お知らせした2冊目の著書の発行日が決まりました。
 版元の晶文社のサイトにもお知らせが出ていました。12月20日です。(税込1,980円)

 昨夜、Twitterに少しふざけて、要約を自分で書いてみたのですが、あらすじとしてはまちがっていないかな、と思います。「コメディ」と言い切ると、言い過ぎかもしれないですが、それくらいの感覚で手に取ってもらっても、「だまされた!」とは思われないだろうと思ってます。

《あらすじ》
 なんでも迂闊に安請け合いをする主人公が、調子のいい外国人にかつがれて、国際会議への参加をうっかり承知してしまったあとに、ハタと自分が大して英語のできないことに気づき、その上、会議はアメリカの原子力ムラの本丸主催であることが判明。
 冷や汗を滝のように流しながら、いざ、アメリカへ。そして、核開発の歴史に肉薄、そこで育まれる文化を超えた友情。主人公の運命やいかに?という、心あたたまるドタバタ・コメディ!

 今回の目標は、楽しんで最後まで読み切れるものにする!でした。
 前作、『海を撃つ』のときには、ヒリヒリした、という感想が多かったのですが、そのなかに、今度は伸び伸びと屈託ない文章を読んでみたい、というようなことを書いてくださっていた方もいました。そのコメントを目にして、そうだよな、基本的に、私は笑える文章を書くのも好きなんだよな、と思い出して、今度書く時は楽しい読み物にしよう!と心に決めていたのでした。

 2018年アメリカワシントン州の国際会議出席のため、関係者のホームステイ先に滞在することになったのですが、そこであたたかいもてなしとともに、歴史を振り返るような貴重な経験をたくさんさせてもらったので、それをエッセイの形でまとめた内容になっています。

 装丁は、鈴木千佳子さん。落ち着いた雰囲気のなかにもポップさもある、うつくしい表紙を作っていただきました。ありがとうございます。

 山本貴光さんにも、簡にして要を得た帯文を頂戴しました。

「原子力を語ると、どうして話が通じなくなるのか。それでも分かりあえるとき、何が起きているのか。これは、そんな絶望と奇跡をめぐる旅の記録である」

 ありがとうございます!

 「原子力」という言葉をみた瞬間に、たいていの人は「あ、あの話ね…」と思ってしまうと思います。それくらいに「原子力」をめぐる言説は、どっぷりとイメージがしみついてしまっていますし、また、実際問題、そこから離れた語り口をとることも難しいです。

 発信する側、受信する側双方が、固定化したイメージ以外を受け入れられなくなっているため、そこからはずれたものは、すべて「なかったこと」にされていく。そして、そのことが、原子力や放射能をめぐる問題をいっそう近寄りがたく、また難しいものにしてしまい、結局、チェルノブイリにせよ、福島にせよ、語られない問題があまりに多くなった。このことが、その地に対するネガティブなイメージを生み続ける最大の原因なのではないか、と感じてきました。

 今回は、「それ」とともに生きる(生きねばならなかった)、等身大の人間の出来事として語ること、描くことができないか、というひとつの挑戦になりました。
 ……もっとも、書きはじめたときはそこまで深くは考えておらず、めっちゃいい経験じゃん、楽しかったし!と勢いで書いていったというのが、ほんとのところです。
(だから、シリアスな内容もあるのに、ドタバタ・コメディテイスト。)

 もうひとつ、キャッチコピー「真面目で、おかしくて、ハートウォーミングなゲンシリョク・ロードムービー・エッセイ!」の「ゲンシリョク」は、「原子力」なのですが、「幻視力」もかけています。「幻視」は、『海を撃つ』のときに、編集者の赤井茂樹さんが仰ってくださったことで、もとは仏文のなかでの「Voyant」(「見者」とも)に由来します。

 フランスの近・現代詩で知らない人はいない有名な詩人にアルチュール・ランボーという人がいるのですが、彼は、それまで韻文で書かれていた詩の世界に自由・散文詩を持ち込んだ革命的な詩人と言われています。その彼が詩論のなかで、詩人を「見る者=Voyant」(フランス語で "voir"=見る)と記していて、詩人は、未知のものを見ることによって感覚の錯乱と創造をもたらす、というような意味合いだったと思います。(こう書くと、昨今はやりの加速主義に似ているような。)

 原子力という、大きすぎる科学技術を見るために、「幻視力」はきっと必要とされていて、そういう意味でもぴったりの語呂合わせになりました。

 今回も著述形式としては「エッセイ」です。「エッセイ」という形式は、著者の眼差しをつうじて、複雑に絡み合ったできごとをつなぎなおし、あるいは、解きほぐし、またそれを、人の匂いのする出来事として再解釈して提示するのにとても適した形式で、エッセイならではの書き方ができたのではと思っています。

 晶文社から12月20日発売です。(税込 1,980円)
 ぜひお手に取ってくださいませ!

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