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44. あおい水の時間、ブルーモーメントに呼ばれて
蒸し暑い日中、今年はまだクーラーをつけずにいる。宵の時間がくると、やっと本来の自分になるようだ。日没の時刻、その少し前をみはからって散歩に出る。
きょうはリゾート地で買ったオリーブ色のビーチサンダルにした。脚をいれた時には、親指と人差し指の真ん中らへんが擦れて、鼻緒が少し痛かったが、履いていると慣れてきた。足裏の神経は、脳に直結しているというが、ぺたぺた歩いているうちに、その辺の草の茎や花の匂い
39. おしゃべりなお嬢さんたちのおはなし
花といえば切り花一辺倒だったわたしが、アネモネのつぼみがついた苗を買った。帰宅してすぐに食事の準備をするために、台所のカウンターに置く。澄んだ紫。お嬢さんを連れてきたように、いつもの空間が、精気に満ちる。ほっておくと、2輪の花がくっつこうとするので、微笑んでしまう。茎が細くひょろっとした花が、緑の濃い頑丈な首をもつ花の側にいっておしゃべりをしているのだ。
「こしょこしょこしょ」「ふ、ふ、ふふ」
20. 万年筆と雑記帖
ものを書くマシンとして「iMac」、「MacBookAir」、「ポメラ」を横断して、仕事をしている。画面の大きなものは、眼にはやさしいが、自分の心とは少し遠い気がする。どちらかといえば書いたものを、客観的に視るほうが適するように思う。わたしの場合、小さなメモや雑記帳がそばにないと落ち着かないように、小さいものから順に、自然に書けていくようなのだ。
そんなわけで、昨年の誕生日に第4のマシンを手にい
18. 秋の宵、お風呂で本を読みませう
今年になってから、朝型へ切り替えようと試みている。朝散歩、朝ヨガ、朝瞑想。と、朝の楽しみがいろいろできたのはよかったが、深夜の読書時間が減ったのは、よろしくない!
以前には、夜11時から、原稿を再開させて、2時・3時に終えて、真夜中のお風呂へ。じゃぼーん、と浸かり、本を読んでクールダウンさせてから就寝するのが日課だった。
家人が寝静まった深夜、蝋燭色の電気をつけての湯浴みは愉しく、
24時間+
4. 戸惑いの89歳、スマホデビュー!
「ただいま」
声をかけてみたが返事がない。玄関で靴をぬいで廊下を歩いて台所へ行き、居間、奥の仏間に入っても気配はなかった。あれ、どこへ? と思った瞬間に、レンガ色のセーターの背中がぬっとみえた。
縁側で、その人は、橙(だいだい)の木をみていた。冬の終わりの弱々しい日だまりの中だった。
[こんなに、小さな人だったっけ]
「おかえり。早かったね」「うん」「車は混んでいた?」「高速が延びてい