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日日に漕ぐ舟。

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朝、昼、晩、暗闇の真夜中。なにげない時間のなか、暮らしから見つけた不思議な葉っぱ。
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44. あおい水の時間、ブルーモーメントに呼ばれて

44. あおい水の時間、ブルーモーメントに呼ばれて

蒸し暑い日中、今年はまだクーラーをつけずにいる。宵の時間がくると、やっと本来の自分になるようだ。日没の時刻、その少し前をみはからって散歩に出る。

きょうはリゾート地で買ったオリーブ色のビーチサンダルにした。脚をいれた時には、親指と人差し指の真ん中らへんが擦れて、鼻緒が少し痛かったが、履いていると慣れてきた。足裏の神経は、脳に直結しているというが、ぺたぺた歩いているうちに、その辺の草の茎や花の匂い

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40. 「二流でいいのよ。二流がいい」厳しい母の言葉とは思えなかった

40. 「二流でいいのよ。二流がいい」厳しい母の言葉とは思えなかった


自分らしさとは、なんだろうと考える。それはいちばん好きな自分でいられる時間ではないだろうか。無理をせず(気持ちがラクで)、好きなことを好きなようにやれているとき。もしくは、やってみたい目標にむかって邁進できていると思えるときだ。

思うように書けない、思うように本が読めていないと、イライラする。


自分がたどってみたい道から外れて、「やらないといけないこと」「お願い、と頼まれること」「責

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39.  おしゃべりなお嬢さんたちのおはなし

39.  おしゃべりなお嬢さんたちのおはなし

 花といえば切り花一辺倒だったわたしが、アネモネのつぼみがついた苗を買った。帰宅してすぐに食事の準備をするために、台所のカウンターに置く。澄んだ紫。お嬢さんを連れてきたように、いつもの空間が、精気に満ちる。ほっておくと、2輪の花がくっつこうとするので、微笑んでしまう。茎が細くひょろっとした花が、緑の濃い頑丈な首をもつ花の側にいっておしゃべりをしているのだ。

「こしょこしょこしょ」「ふ、ふ、ふふ」

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34.キッチンの片隅で雪のごちそう

34.キッチンの片隅で雪のごちそう

 きょうも雪が舞った。

 雪が風に煽られて西から南へ流れている。煽られて、舞い上がり、跳び、わたしのベランダへ吹き込んできた。今年の雪は、積もっていかない。ふわふわして、飛んでばかり。風に煽られて、地に落ちたら、その痛みでいつのまにか、消えいく。

 台所にいる。踏み台のうえに、おしりを落として、香港の紅茶を飲む。

 ザ・ペニンシュラ香港のザ・ダージリンティー。

 今朝は薄くいれた。朝の頭に

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28. 差し歯を失くして

28. 差し歯を失くして



このところ、大阪の谷町六町目に毎週のように行く機会があり、空堀商店街をはいったところにある「こんぶ土居」の商品を時々買う。ここは、創業一〇〇年を超える老舗。いつ訪れても、そこそこ混み合っている人気の店で、「柱こんぶ」(貝柱入りのこんぶ)、「とろろ」や、「こんぶ豆」、「十倍だし」などを買い求めるのだが、この日は「こんぶ飴」を発見した! 
お、なつかしい〜と即、購入。


年末で仕事がたてこん

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20.  万年筆と雑記帖

20. 万年筆と雑記帖

ものを書くマシンとして「iMac」、「MacBookAir」、「ポメラ」を横断して、仕事をしている。画面の大きなものは、眼にはやさしいが、自分の心とは少し遠い気がする。どちらかといえば書いたものを、客観的に視るほうが適するように思う。わたしの場合、小さなメモや雑記帳がそばにないと落ち着かないように、小さいものから順に、自然に書けていくようなのだ。

そんなわけで、昨年の誕生日に第4のマシンを手にい

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18. 秋の宵、お風呂で本を読みませう

18. 秋の宵、お風呂で本を読みませう

今年になってから、朝型へ切り替えようと試みている。朝散歩、朝ヨガ、朝瞑想。と、朝の楽しみがいろいろできたのはよかったが、深夜の読書時間が減ったのは、よろしくない!

以前には、夜11時から、原稿を再開させて、2時・3時に終えて、真夜中のお風呂へ。じゃぼーん、と浸かり、本を読んでクールダウンさせてから就寝するのが日課だった。

家人が寝静まった深夜、蝋燭色の電気をつけての湯浴みは愉しく、
24時間+

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15. チョコ好きガールがハマるPARM!

15. チョコ好きガールがハマるPARM!

日常の句読点としてホッとしたい時。あるいは、気持ちの閉塞感を感じたらなにをするか。緑を見にいくか、お風呂に湯をためて、ざぶーっんと浸かって禊ぎを堪能させてやり、(読める時には)本のページをめくるのだが。そんなことをする時間もとれない時にお世話になっているのが、1本のアイスチョコバー「森永乳業のパルム」となる!

気づいたら冷蔵庫をあけて手にとってしまう。1日1本までと決めているので、いつ食べるか。

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13. 動いてるって素晴らしいこと

13. 動いてるって素晴らしいこと

ぼーっとした昼下がりの窓外。朝の散歩や夜の散歩で。あるいは、ソファに座ってベランダをみている時。仕事机で。

気がつけば緑をみている。
自然のゆらぎを感じている。

木々の枝や緑は、微風や大風や、雨やおひさまをうけて、年中ゆれている。

止まっている時はないかな、と思って気をつけてみるが、たいてい見あたらない。というか、外でゆらぎのない緑の葉や茎をみたことがない。それは驚きだった。

止まっている

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12. 家はあなたの生きてきた奇蹟の場所。守られているんです。

12. 家はあなたの生きてきた奇蹟の場所。守られているんです。


父の意匠が刻まれた書院造りの部屋で 実家に帰って4日目になる。日に日に、この土地の水に自分が合ってくるように感じる。豊岡は山に囲まれている盆地、地下にある水脈を水道の水に利用しているらしい。夏は水がひゃっとして滑るよう。ふれるたびに気持ちいい。

 いま、2階の和室でこれを書いている。
 この空間は、香住(現・香美町)、城崎と半生にわたって旅館業を営んできた父が、商いのためではなく愉しみとして生

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11. 画家の眼を重ねて視る、見えないものの中にある真理を探して

11. 画家の眼を重ねて視る、見えないものの中にある真理を探して

時間がぽかっとあいたら美術館か映画館、それとも思い切ってどこかひとおもいに出掛けたいと思っている。いま一番、行ってみたいところを聞かれたら「美術館へ!」と言うだろう。

企画展なら、一つのテーマでの、さまざまな書き手の翻訳に出会えるだろうし、特別展であるなら、ひとりの作家の初期の作品から晩年、筆をおく前の最晩年の描いたものを一気通貫して、みることができる喜びがある。

ゴッホやピカソでは、画家を志

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3.  寒い日、お湯とねむる

3. 寒い日、お湯とねむる

 北向きの寝室は一日中、冷えている。新しい年がはじまり、乳白色の空から雪がひらひら舞う頃になると、途端に布団の中が寒く思えるようになった。
 背中や肩のあたりが心もとない。夜中、寒けがして意識の淵をさまよい、パチッと眼が開いた。世界の暗闇に放り出されたようで、不安なことや宿題にしていたことが頭をよぎって、右を向き左に向き直り、寒くて眠れないことも。

 そんなある日。玄関側にあるクローゼットから探

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2.    2021 01.01 「一陽来福」年賀状

2.  2021 01.01 「一陽来福」年賀状

謹んで新春のお慶びを申し上げます。皆さんが少しでも気持ちよく幸せな心で過ごせますように。心よりお祈りいたします。本年もどうぞよろしくお願いいたします。

昨年のアクションプランナーの1ページ目をめくってみると、
・毎日日記をかく
・毎日オリジナルな文章をかく。(仕事ではない文章)
・毎日散歩をする
・毎日瞑想をする
・毎日一時間以上、本を読む
・少なく持つ、清潔に暮らす。

と、黄色いポストイッ

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4.  戸惑いの89歳、スマホデビュー!

4. 戸惑いの89歳、スマホデビュー!

「ただいま」
 声をかけてみたが返事がない。玄関で靴をぬいで廊下を歩いて台所へ行き、居間、奥の仏間に入っても気配はなかった。あれ、どこへ? と思った瞬間に、レンガ色のセーターの背中がぬっとみえた。

縁側で、その人は、橙(だいだい)の木をみていた。冬の終わりの弱々しい日だまりの中だった。

 [こんなに、小さな人だったっけ]

「おかえり。早かったね」「うん」「車は混んでいた?」「高速が延びてい

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