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アプリのリテンション率を上げるプッシュ通知とは

前回公開したnote「アプリマーケティングの効果的なプッシュ通知活用」ではプッシュ通知を送る際の事前準備として重要な「ターゲット整理編」をお伝えしましたが、今回は実際に配信した事例についてご説明する「プッシュ通知実践編」をお送りします。

 <おさらい>送る目的と「誰に」「何を」「いつ」送るのか

具体的なアプリ名は伏せますが、今回はプレゼントに関する相談や回答ができるCtoCプラットフォームアプリを例にとってご説明していきます。

◆KPIの整理
このアプリでは新規ユーザーを増やすために、アプリのロイヤルユーザーを増やし、そのユーザーからの口コミでさらに新規ユーザーを増やすことを考えていました。(余談ですが、集客の中心に広告を据えていないのは大々的にプロモーションできる予算がなかったからです)

さて、ロイヤルユーザーの判断指標ですが、アプリの特性上、毎日は使わないだろうということで「1週目継続率」という指標をKPIにしました
計測ツール(Firebase)では初回起動から1週目継続率・2週目継続率・3週目継続率・4週目継続率とそれぞれ見ることができるのですが、施策開始時点で1週目継続率は10%台、4週目継続率は1桁台とかなり低い状況だったので、まずは一番手前にある1週目継続率を上げることに重きを置くことにしました。

ターゲットの整理
このアプリのユーザーは10代後半~20代前半が多く、必然的に継続率が低いのもこの層でした。年代以外のセグメントでいうと初回来訪以降の再来訪が無いという特徴があります。つまり2回目以降の訪問がないので、結果として1週目継続率も低下していたのです。

ただここで気を付けたいのは、離脱した人全員に「もう一回アプリを開いてください!」というのはあまり効果的ではないということです。
私たちは急いでプレゼントを決めたい人や、どうしたらいいかわからなくて悩んでいる人は初回訪問時に相談するのではないかという仮説を立てていました。

つまり、初回で相談しないユーザーは「急いでいない」のです。緊急性の低いユーザーに「相談してください!」と言い続けてもなかなか刺さりませんので、今回はすでに初回訪問時に「相談」というアクションをとったユーザーのみを対象にしました。
※余談ですが初回訪問で「相談」というアクションに到達させるにはプッシュ通知よりも、アプリ内メッセージやチュートリアルの改善の方が効果的なので、それはそれで施策を考える必要があると思っていました

ちなみに、一度相談して忘れるの?というご意見もあると思いますが、忙しい現代人は自分の相談に返事が来るかを気にしているのは最初の数分~長くて数時間。日々あらゆる情報と接点を持っているので、新しくインストールしたアプリに何度もアクセスすることは、実はそんなに多くないのです。

わたしもメルカリで出品したことを忘れていることがあるのですが、適宜いいねがついたら教えてくれたり、コメントが来たらお知らせしてくれます。
それと同じように、うっかり自分の行動を忘れていた・とりあえず相談して満足したというユーザーに、相談したことを思い出させることで2回目以降、ひいては1週目継続率を上げることができると考えました。

プッシュする内容
続いて何を送るかです。上記の通り「一度相談したユーザーに相談したことを思い出させる」というターゲットと目的が決まったので、それに応じたメッセージを送る必要があります。

実は、簡易的なカスタマージャーニーマップで、ユーザーの態度変容をこのように考えていました。

①プレゼント情報検索→
②相談→
③集まったアイデアを比較検討→
④提案者へのいいねやお礼コメント→
⑤プレゼント決定→
⑥購入→
⑦渡した相手に喜んでもらう→
⑧誰かの相談に答える

プレゼント相談後のユーザーを対象とする今回の施策では③④⑤のアクションを促します。具体的な施策はとてもシンプルですが、以下の3つを試してみました。

・相談投稿三日後 プッシュ
送るタイミング→相談から3日後の19時から22時ごろ
相談は自動的に1週間で提案締め切りとなるのですが、相談直後と締め切り直前にアイデアが集まりやすい傾向がありました。3日経過すると3~4程度提案が集まっていたので「3日経ってアイデアが集まってきたよ!見てみましょう」というプッシュ通知を、送って再訪を促しました。
・締め切り一日前 プッシュ
送るタイミング→締め切り1日前の19時から22時ごろ
上でも書いた通り締め切り直前にかけこみでアイデアが集まることもあるので「締め切り一日前!たくさんのアイデアを見てみよう」といったお知らせを送って再訪を促しました。
・締め切り翌日のプレゼント決定促進 プッシュ
送るタイミング→締め切り翌日の19時から22時ごろ
締め切りが過ぎた後なので、必然的に2週目に入っているタイミングです。アプリを思い出してもらう最後のチャンスであると同時に、次のステップであるプレゼントの決定や購入といったアクションに進んでもらう重要なタイミングとして「素敵なアイデアに感謝を伝えて送るものを決めましょう!」といったお知らせで再訪を促しました。

それぞれ送るタイミングは、相談アクション(おそらく初回訪問)を起点に3日後・6日後・8日後です。1週間、定期的にメッセージを送ることで、相談~決定までアプリに訪れる習慣を作ることを目指すと同時に、よいアイデアとの出会いや別のユーザーさんへの感謝の気持ちから、アプリ自体にも愛着を持ってもらえたらいいいな、という想いもありました。

配信後の数値変化

さて、前段がだいぶ長くなってしまいましたが、約2週間 上記3種類のプッシュ通知を配信したところ、無事に1週目継続率が14%から22%にアップしました!実際の細かい数字や配信したテキストの原文はお見せすることができないのですが、以下が結果の詳細と考察です。

・再訪に効果があったのは3日目プッシュ
恐らくこのタイミングは、プッシュ通知がないと再訪しなかったタイミングだったので、通知を送ることで2回目の来訪をしてくれるユーザーが増えました。アイデアが来たらリアルタイムのプッシュ通知は送っていたのですが、アクセスしやすい時間に改めてプッシュ通知がくることで、再訪のアクションにつながったと考えています。

・プレゼント決定貢献は6日後と8日後
締め切り前後なので、再訪については効果はあったものの3日後ほどではありませんでした。ただ「プレゼント決定率」が高く、プッシュ通知配信後に「これを贈る!」とプレゼント決定してくれるユーザーが増えました。6日後の場合はだいたいアイデアが集まって満足してくれているため、8日後は6日後時点での取りこぼしを減らす役割で、忘れていたユーザーがやや焦りつつ決定してくれていたためと考えています。

・配信時間は20時、21時の反応率が高い
配信時間については夜の時間帯、19時・20時・21時・22時それぞれで検証を行いました。母数の問題で同日の検証が難しく、別日での検証ではあったものの20時と21時の反応率が高いという結果になりました。冒頭記載した通り、今回の配信ターゲットは10代後半から20代前半のユーザーが多かったので、夕食後のリラックスタイムだと思われる20時や21時の反応率がよかったと考えています。
遅い時間になるほど反応率が上がるかと思ったのですが、22時はやや反応率が下がりました。行動パターンを明らかにする必要がありますが、深い時間になるほどSNSや動画サービスなど何か別のコンテンツに没頭してるのかもしれません。

次のステップはどのように考えて何をすればいいか

さて、今回無事に施策を通してKPIを達成することができましたが、この後のアクションは何をすればよいのでしょうか。次のステップについて2点考えてみました。

・KGI数値はどう変化したか?
今回、もともとの目的として「ロイヤルユーザーを増やしてオーガニックのインストール数を増やす」という目的がありましたが、2週間弱でこの数字に大きな変動はありませんでした。
つまり、KPIは無事に達成しましたが、まだロイヤルユーザーを生み出してインストール数に影響を与えるまでには至っていないということです。この目的を達成するためには
①期間を伸ばしてみる
②新しい打ち手を実行する の2パターンがあります。
個人的に今回の施策、KPIは達成しているので失敗ではなかったと考えています。
しかし短期間でもオーガニックインストール数には跳ね返りがありそうなものの、大きな数字の変化は見られなかったので、この施策を継続しつつ、②新しい打ち手を実行する でさらにユーザーの満足度を上げたり、接点を増やす、つながりの深度を上げることができればKGIの達成にも近づけるのではないでしょうか。

・次のステップに進んでいる人はどれくらいいるか?
新しい打ち手の出し方ともつながることですが、今回KPIとしていた1週目継続率という指標は、あくまで通過点なんですよね。
なぜなら、1週目継続率の先にある4週目継続率という指標もまだまだ改善の余地がありますし、そもそも今回の施策はカスタマージャーニーの途中である③④⑤のアクションまでしか目指していません。先ほど「つながりの深度」という言葉を使いましたが、ユーザー体験はまだ途中の状態です。なので、ユーザー体験を先に進める施策を考えなければならないんです。

具体例を挙げて検討していくと、このアプリでは⑤の次のステップは⑥購入となっています。例えば、贈ることを決めた商品をスムーズに購入できるよう、購入サイトのURLを送る施策はすぐにできそうですよね。決定してから購入するまでの流れをアシストしてあげることで、意欲が高いうちに購入してもらうことができます。
また、継続率という観点で考えると、相談するだけでなく⑧誰かの相談に答える というのも重要なアクションです。この転換を生むことはすでに課題になっていたのですが、提案できそうな相談をプッシュ通知でお知らせすることはもちろん、初めてアイデアを提案すると何かインセンティブがもらえるなど、機能面の改修と合わせて施策を検討することも効果的だと思います。

このように、プッシュ通知でKPIを達成していくことも大切ですが、目的(KGI)を見失わないようにしながら、プッシュ通知と機能改修やサービス設計の観点を組み合わせて施策を検討・実施していくことが重要です。

<おまけ>おすすめのアプリマーケティングツール3選

最後に、これからアプリマーケティングを強化される企業におすすめの分析・運用ツールをご紹介します。「アプリのデータってデータベースを叩いて引っ張ってこなきゃいけなくて大変なんだよね…」というお声も聞きますが、データを見る~打ち手を実施する まで簡単にできるツールもありますので、ぜひ参考にしてください。

◆ Repro
カスタマーエンゲージメントプラットフォームと呼ばれており、プッシュ通知はもちろん、アプリ内ポップアップやメルマガ配信など、アプリにおいてカスタマーとつながるためのあらゆる施策が実施できます。導入社数も多く、事例の公開やメディアでのノウハウ展開も豊富です。管理画面のデータも見やすくアプリマーケ初心者の担当者さんでも安心です。
Reproサービスサイト https://repro.io/

◆ Metaps AnalyticsFirebase
広告効果測定や市場データが見られる機能とアプリ内行動分析機能がひとつになっており、包括的なデータを見ることができます。広告チャネル別にプッシュ通知を配信することも可能ですので、広告効果を重視する場合やデータを一元管理したい場合はおすすめのツールです。
MetapsAnalytics サービスサイト https://www.metaps-links.com/analytics/

◆ Firebase
アプリ内の基本指標を見るなら入れておきたいツール。(もはや入れていないことのほうが少ないかもしれませんが…)
アナリティクス機能以外に別途設定が必要ですが、Firebase Cloud Messaging(FCM)という機能でプッシュ通知を配信することも可能です。ただし日本語対応していないヘルプが多いためカスタマイズして使いこなす場合はやや利用ハードルが高いかもしれません。
Firebase サービスサイト  https://firebase.google.com/?hl=ja

目的や実現したいこと、はたまた運用するチームの体制やリソースに合わせてぴったりのツールを選んで、ぜひユーザーに満足してもらえるアプリ運用を行ってくださいね!

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