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イタリアはチンコ型パスタ売ってる

 イタリアに旅行に行ったことはあるだろうか。私はある。人生で3回ある。なぜならジョジョがめちゃくちゃ好きだったので、海外旅行に行くチャンスがあるとなるとイタリア一択だったからだ。

 3回あるうちの1回目は中学生の頃で、家族旅行だった。泊まりで長く、しかも海外に旅行だなんてそれまでの人生で初めてだった。ゆえに、めちゃくちゃ疲れたことくらいしか記憶にない。

 2回目は大学生の頃で、クラスの友人たちと春休みに行ったのだ。この時の思い出について今回は書こうと思う。


 海外旅行は魂の形が似ている奴としか行ってはいけない。私がその旅で学んだことだ。

 魂の形ってなんだよ? そうだなあ、たとえば目的地に向かうにあたって、経路を調べ、スケジュールをちゃんと組み、それに従うタイプと、ぼんやり向かって、日が暮れたら帰り、目的地に到達していないことにすら気がつかないタイプとがいる。私は後者だ。他には、日頃からよく活動し、体力があって、いろんなところに歩いていけるタイプと、日頃から部屋にいて、体力がなく、日差しを受けるだけで毎ターン固定ダメージが入るタイプとがいる。私は後者だ。友人のうちの、旅行を仕切ってくれたリーダー格の子は前者であった。

 私が日照の固定ダメージでウェルダンになり、歩き通しで足が棒になるたび(かなりの頻度だった)、少し休ませてくれと何度か頼んだが、その度にその子は納得がいかない顔をしていた。このくらいで休む意味がわからないといった雰囲気だった。しまいにはベンチに座ってたら置いて行かれた。

 ……書いていてつらくなってきたので、簡潔にまとめよう。旅行は魂の形が似ている奴と行け。特に海外に行くと、いつもより治安が悪いことや、はぐれたら溶けて死ぬことなどで皆ぴりぴりして、魂の形が浮き彫りになるのだ。その差を許容できる奴と行け。もしくは、ひとりで行け。


 これだとリーダー格の子と私との間の埋められない溝の話で終わってしまいそうなのだが、私がその旅の他の同行者とも決定的な断絶を感じてしまったのが、食料品店でのことだった。


 われわれはイタリアの食料品店、スーパーマーケットという規模ではなく商店といった趣の建物に寄った。オシャレなパンや缶詰や瓶詰めが並んでおり、あらまあ祖国への土産にしようかしらと、それぞれ棚を見て回っていたのだ。

 イタリアといったらパスタだ。それはもう色々な種類のパスタがあった。

 スパゲッティ(長いやつ)、ラビオリ(四角いやつ)、コンキリエ(タニシみたいなやつ)、ファルファッレ(リボンみたいなやつ)、たまごが入ったやつ、赤のやつ、緑のやつ、

 チンコだろこれ。

 ……これはどう見てもチンコだろう。絶対にそうだろ。私の考えすぎではないはずだ、ツイッターでアンケートを取ったら99%が「はい」と答えるだろうというレベルでチンコだ。イタリア語で言ったらpeneだし複数形だったらpeniだ。こんな形のパスタがあるなんてイタリア人はどういう感覚してるんだ!?!!?

 これを見つけて、私はとりあえず、人に伝えたかった。こんなものを見せられて一人で受け止めきれない。無理。だれか、一緒に笑ってくれ────


 だがその時の同行者たちは! そういうことを言える仲ではなかったのである!


 ……私だってそんな普段から男性器の話を頻繁にしているわけではない。会話で口にすることはまだ恥ずかしくて、言ってもなんやかんやぼかしている。

 しかしとにかく、その時一緒にいた子たちとは、そもそもチンコの話なんかしたこともなかったのだ! 言えない~! 言えるわけない! クラスメートぞ!? 気心の知れた友人ならともかく、ツイッターならともかく、こんなものを「ねえこんなパスタあんだけどwwwwww」などと言いながら見せつけるような間柄ではないんだ!! 


 私はとにかく孤独だった。今は日本にいる友人たちがどれほど私にとって貴重なのかをひしひしと感じた。ここにいるクラスメートらとはどうしたって埋まらない溝があるのだと痛感した。

 しかたなく、パスタの写真だけ撮って、店を後にした。



 その後、入る店にパスタコーナーがあると見るやこっそりと確かめたのだが、チンコ型パスタはかなり普及している。観光客が入るような店ばかりに行ったからなのかもしれないが、それにしたってある。

 チンコだこれ。しかも上の写真と違うメーカーじゃねえか。


 これを読んでいるあなたも、イタリアに旅行に行くことがあれば確かめてほしい。イタリアの食料品店にはチンコ型パスタ売ってる。本当なんだ。

 そして、一緒に行く友人は、それを共有して笑ってくれるような者を選べ。



 チンコだこれ。

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