【読書感想】無(最高の状態)
どうも、地方公務員のばたやんです。
今回は月末投稿ということで、読書感想となります。
🔷11月課題図書
無(最高の状態)
鈴木 祐 著
🔷なぜ本書を読もうと思ったのか
最近、SNSなどで他人の喜ばしい出来事やきらびやかな投稿を見ていると、どうしても相手と自分を比べてしまい、なんの成果も残せていない自分がひどく情けなく感じてしまいました。
とはいえ、他人は他人で、その人の積み上げてきたもの、置かれた環境、歩んできた道は私とは違うわけで、それに一喜一憂するのも意味のないことなのかもしれません。
そんなことを考えていた時に本書を見つけて、帯に書いてある「不安、怒り、孤独、虚無、自責から自らを解放する科学的メソッド」というコピーにすがる思いで読み始めました。
🔷本書の構成
本書は序章と1章〜6章、終章の8部構成となっており、それぞれの章にはテーマとなる言葉が当てられています。
おしながきみたいになってしまいました(笑)
🔷本書の感想
本書の冒頭でこの本の目的が次のように書かれています。
現代はストレス社会とも言われこころの病にかかってしまう人が増えています、本書は「セルフレスネス」とうたっているように、自信で無我に近づくトレーニング方法がたくさん紹介されています。
具体的なトレーニング方法については購入して読んでいただきたいので、ここではばたやんが本書から得た気づきをまとめていきます。
本書を読んで次のような気づきを得ました。
ヒトは生まれつきネガティブである
“二の矢”が刺さらないようにする
ヒトは物語から自己を認識している
結界を張るために「セット」と「セッティング」を整える
自分の行動を縛る悪法を把握し、対処する
苦しみ=痛み×抵抗
「停止」と「観察」で無我を導く
無我の先にある智慧とは
🔷序章 苦
いきなりこの1文からはじまる本書、この時点で学びある1冊だと確信しました。
ネガティビティバイアスという人間はポジティブな情報よりもネガティブな情報の影響を受けやすく、マイナスなことほど記憶に残りやすいという心理を表す用語からも科学的な研究で裏付けされ始めていることが分かります。
要は、ポジティブは長持ちせずネガティブは残りやすい、これは人間のデフォルト設定だということです。
序章でこのことを前提としておいて以降の章では、どうしたらこの「苦」から逃れるかを書いています。
🔷第1章 自己
人間の抱える、怒り・不安・悲しみ・恥・虚しさ、これらの「苦」に共通することは”自分のニーズが満たされない状態”があるということです。
言い換えると、「苦しみ」は”不足”を知らせるメッセンジャー的な役割を持っているとも言えます。
この章から得た気づきとして”二の矢”こそが真の苦しみの正体で、それを刺さらないようにすることが苦しみを避けることとなる、というものです。
今から約2,500年まえ古代インドでブッダが弟子たちに説いた教えで「一般の人と仏弟子の苦しみの感じ方は”二の矢”が刺さるか否かだ」というものがあります。
これは、生物が生きる過程ではある程度の苦難は逃れられない、ランダムに発生し、いかなる知性でも予測不可能である、これを”一の矢”とし、”一の矢”が刺さったことに対して、なぜ自分だけがこんな目に、この後どうすればいいのか、といったように考え始める、これが”二の矢”であり人間だけが自分に対して”二の矢”を放つと説明しています。
これを”一の矢”の苦しみだけで終えられたら、自分に"二の矢"を放つという負のスパイラルから抜け出し、最初の苦しみを消化してしまえば何事もなかったように過ごすことができます。
アンガーマネジメントで「”怒り”は6秒しか持たない」という考え方がありますが、これは怒りを感じることに対して前頭葉が起動しドーパミンを放出させる、このとき前頭葉が起動する時間が平均4~6秒程度でそこからドーパミンが持続する時間が10~15分程度となっているため、原因の事象から6秒間耐えることで怒りを抑えるというものです。
これを利用するならば”一の矢”が刺さってから、10分前後ほかのことに意識を向けるだけで”二の矢”を回避することができます。
🔷第2章 虚構
自己は”物語”で構成されている、そして人間の脳は0.1秒で物語を生み出す。
古代ギリシアの哲学者プラトンが、「人の目に映る現実の世界では影絵にすぎない」とイデア論をとなえたように、我々は現実をありのままに体験しているわけではなく、過去に体験した原因と結果を結ぶストーリーをデータセットのように脳に納め、そこから現在と過去の自分が同一な存在だと認識しているのです。
そして、この物語の生成は絶え間なく行われており、それによってあたかも自己が絶対の存在であるかのような錯覚が生まれてくるのです。
もう一つ、人類の脳は現実よりも“物語”を重んじるという特性があります、例として「錯視」などがよい例で、図上には書かれていない線や図形が、状況によっては、存在するように見えるというもので、規則性や法則性があるものは次も規則的な現象が起こるだろうと思い込むことです。
頭の中に「ありあわせの現実」を構築するのです。
🔷第3章 結界
エビデンスベースドな結界を張る
薬物治療の世界において、メンタルをポジティブにするためには「セット」と「セッティング」が重要だと本書では書いています。
セット=個人の性格、感情、期待、意図などの状態
セッティング=物理的、社会的、文化的な環境の状態
これらを整えることで内面に結界を張り“二の矢”が刺さりにくい状態を作り出すことができます。
「セット」と「セッティング」を整える手法については本書に紹介されておりますので、詳しく知りたい方はぜひ手に取ってご覧ください。
🔷第4章 悪法
この章では、自身がどのような物語で構成されているのかを知る、その中で悪い影響を及ぼす物語つまり”悪法”を把握し対処する方法について書かれています。
それぞれの”悪法”は18つに分類され、それぞれ説明されていました。
対処法として、それぞれの悪法に点数をつけ、日誌をつけることでどの悪法がネガティブな物語を構成していくのか推測していくことが紹介されています。
🔷第5章 降伏
本書のいう“降伏"とは、自身が直面している現実を認め、それに正面から向き合うこと、としています。
ここでの気づきは「苦しみ=痛み×抵抗」という公式です、第1章でもあった通り、苦しみとは“二の矢"が刺さった状態であることから、この公式においては「痛み」が“一の矢”であり、その現実への「抵抗」が“二の矢”と言うことになります。
この公式の「苦しみ」を最小化するためには、「抵抗」せず「痛み」をありのまま受け入れるというのが最善の策だと書いています。
「痛み」を受け入れることは、“一の矢”である物事を科学者のような視点で観察し分析することとしており、自身が行っている「抵抗」を認識することをさしています。
「降伏」と洒落込む余裕ができたとき、我々は根拠の薄いことに揺るがない人間への一歩を踏み出すことがでいるでしょう。
🔷第6章 無我
「停止」と「観察」で無我を導く。
「停止」を説明するためにこの章では、禅問答はなぜ難しいのか?という問いだてをしています。
本書ではこの解答を次のように示しています。
つまり「停止」とは、ある事柄について考えさせまくることで自己を形成する物語の生成を「停止」させるということなのです。
もう一つの「観察」は、文字通り自身の脳内に浮かぶ物語をじっくりと見つめる作業を意味します。
例えば、次の単語を読みながら自分の脳内にどのようなイメージが浮かんでくるか観察してみてください。
レモン、海、イチジクのタルト、カブトムシ、紫陽花
レモンやカブトムシといったそのままのイメージが浮かんできた人もいれば、レモンの生った木や海べの街を連想した人もいたのではないでしょうか。
ここで重要になってくるのは、自身の内面がどう反応したかに気づくことです。
観察のトレーニングを積むことで脳の「わたし」に関わる領域に変化を起こしメンタルの向上や集中力と記憶力の向上に影響する様です。
🔷最終章 智慧
学問の世界でいう「智慧」とは、IQや知恵の量などを意味せず。定義はまだ明確でない部分もありますが、複数の専門家の意見をまとめると次のようなスキルの集合体だと考えられています。
人生経験から得た知識を正しく利用できる
困難に直面しても不安が少ないまま行動できる
自分や他人の精神状態を注意深く考察できる
このように考えていくと、無我とはあらゆる欲望を捨て去る悟りのようなものではないということがわかると思います。
最後に、無我がもたらす3つの世界観の変化について書いています。
無我はあなたを永遠の初心者にする
無我は変化への限りない受容力を生む
無我はあなたに圧倒的な自由をもたらす
さて、今回は無我の境地を知りたくて本書を読んできたのですが、私が読んできた本の中でも難しい本だと感じました。
科学的・医療的なお話しもそうなのですが、その根拠と仏教的なお話しがどう関係しているのかを理解するのに時間を要しまして、ただこうして理解することに集中している間は本書でも書いている「停止」の状態になっていたとも思います。
悩んでいる方のヒントになれれば幸いです。
この記事の内容が誰かの力や気づきになれれば幸いです。
それでは、地方公務員のばたやんでした。