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不公平を選ぶ、多数決という理不尽

多数決

この手法が人類に舞い降りたのは一体いつ頃の話なのだろうか。

きっと、古代文明のその前の、ずっとずっと昔まで遡るはずである。

私とて中間管理職、便宜上使うこともしばしばだが、決して好きな手法ではない。どちらかと言えば、嫌いだ。

一見公平に思えるかもしれないが、少し考えると非常にマズイ手法という事が分かるはずだ。

今回は、一例を記して考察を深める事にしてみよう。

多数決

ある日、恒例の親睦会を行うからと参加者集めが行われた。

久しぶりという事もあってか、サクッと10人が参加することになった。

幹事役は順番の回ってきたP子が務めることになり、グルメサイトで見つけて来たのが次の2チョイス(クーポン付き)だ。

1、ピザがお勧めイタリアン(5名様でお好きなPizza1枚プレゼント)

2、串揚げ居酒屋(ファーストドリンク全員無料)

クーポンに魅かれると言うよりは、イタリアンか居酒屋かという選択肢、私は迷わずイタリアンにした。

このグループでは、私が年長者なので多少負担が多くなるのは覚悟の上での参加希望だった。

この年になると若い方々に誘ってもらえるだけでありがたいのだから、割り増しは払いは当然となる。

ま、そのことは横に置くとして、問題は投票の結果だ。

P子は、既にアラサーの先輩格。主任の肩書にふさわしく真面目な性格できちんと仕事をこなすタイプだ。

しかし、前例のないものや、多様な意見を一つにまとめ上げる決めの作業は苦手中の苦手で、自分が攻められることを極度に嫌う性格でもあった。

そんな、P子に幹事を任せた奴もどうかしているが、幹事は順番というルールだから仕方がない。

結果は、イタリアンが5票、居酒屋が5票。

簡易的に作ったティッシュボックスの投票箱を眼下に、P子は項垂(うなだ)れている。

野上さん、ちょっと相談があるんですが、、5対5になってしまったんですが、、、

うぅ、それは大変だねぇ~。

で、どうしたいの?

、、あまり良い解決策が見つからなくて相談に来たんです。

私は、少し返答に迷った。

P子とは長年一緒に働いていて性格は熟知しているつもりだ。

常に、多数決こそ公平で正義の方法だと信じてやまない人なのだ。

もちろん、彼女も多数決が万能でないことぐらいは分かっている。

しかし、その他に心の拠り所にできる方法を知らないだけなのだろう。

嘘はつきたくないし、誰も悪者にしたくない。まして、自分が悪者、割を食うなどありえない事であった。

なんせ、真剣に真面目に働いているのだから。

私も、そのことを重々承知の上で聞いてみた。

どうして、参加者が偶数なのに投票できめる事にしたの?

P子さんらしくないじゃない。とフォローしながら聞いてみた。

すると、どうやら、うるさ型の部下にP子さんも絶対投票してくださいね。自分は選ばなくても良いからなんて要りませんからと念を押されたらしいのだ。

それでカチンときたのか、教育のつもりなのか知らないが、真に受けて最初に投票してしまったという事だった。

何とか、6対4に収まってくれればと賭けに出て、参加者の面々を考えた上でイタリアンと書いたそうだ。

そして、その結果が5対5だったらしいのだ。

読者の中の新人諸氏よ、君達が最近過ごし始めた社内という特殊環境では、このような決を迫られる事が日常的に発生する。

かといって、10人を超えるような決もまた稀なので、肝(きも)は少人数の決の取り方となるだろう。

2人の場合は、相手と自分のみだから問題はない。仮に、これで悩むんだったら行先は親睦会じゃない、病院へ直行だ。急げ。

従って、3人~10人ぐらいを想定して方法を準備して置けば良い事になる。

方法はいくつかある。

じゃんけん、あみだくじ、サイコロ、くじ引き、記名式及び無記名の投票、そして今回問題になっている多数決。

これらを適宜(てきぎ)使って、3人の場合、4人の場合、5人の場合と練習して置けは必ず役に立つだろう。

ただ間違っても、3人でランチの場所を決めるのにサイコロを使ってはいけない。

一体、あなたが何をしたいのかが相手に伝わらず、きっと2人が先に行ってしまう事になる。

次の出題は、頻繁に発生するから答えを探しておくと良いかもしれない。

問:出入りの営業マンから差し入れのケーキを4つ(プリンx2、モンブランx2)頂いたとする。同僚4人のスタッフで仲良く分ける場合、君ならどんな方法で分ける事ができますか?

問い自体は簡単なのに、実際に私が経験してきた答えは面白い。参考にしてくれ。

・どちらを食べたいか意見を出し合い、意見が重なればじゃんけんで決める。(正攻法だ)

・先輩からどうぞと、後輩が身を引き、先輩の力量を推し量る。(ほー、ならばお先に)

・あなた達からどぞと、先輩が身を引き、後輩の力量を推し量る。(えッ、信じてええんかなー)

・取り分けて、みんなで公平になる様に食べる。(つまらないやつだ)

・特段、誰も声を掛けずに、様子を伺う。(どうすんのよ、そのケーキ)

・私、残った方で良いと言い、相手のケーキの味を美味しいか?と聞いてくる。(どうかなー、美味しかも、ウザ)

・片方を食べた事があると嘘をつき、自分の好きな方を選ぶ。(私は、絶対こちらを食べるわ)

・私は食べないと、拒否権を発動する。(早く会社を辞めてくれ)

・同じもの4つ買って来いよと、営業マンの不出来さを罵る。(でも、食べるわ当然)

モンブラン

どうだろうか。

何かを決めるという作業。簡単に思えるが意外と奥が深いのだ。

まして、多数決で物事を決めるという事は、一見公平そうに見えるが、実はそうでもないのだ。

多数決とは、決して正しいものを選ぶ方法でない。こうなって欲しいと言う不公平を選ぶ作業であることを再認識して、今回の考察としておきたい。

★★★

【おまけ】

あれ、P子さんの5対5の結果、その後どうなったの?と気になる諸氏がいらっしゃるかもしれないから説明しておこう。

実は、あの、うつむき加減のP子の相談が、正に奇想天外のものであったのだ。

野上さん、お願いです。急な接待話かなんかを持ち出して辞退してくれませんか、とのことだった。

す、すごいね、P子ちゃん。これほどの不公平ってあるのだろうか。

私は、新人さんの横で飲みたかっただけなのに。。ぐすん。

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