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ベトナム旅の予習には333と愛人と

誤解を恐れずに言えばフランス占領下インドシナ(現ベトナム)は当時世界で最も魅惑的な場所だったに違いない。

うろ覚えだけど、林真理子がananの巻末名物コラムでこういったニュアンスのことを書いていたと思う。

わたしも誤解を恐れずに言えば、そうだろうと。
それはそう、この映画の記憶のせい。

そして高浜寛によるコミカライズ!(2020年2月4日)

熱帯の蒸せ返るような空気の中、メコン川を渡る船にはフランス人の少女。ただほんの気持ちだけといった感じで身体を覆う頼りない白いワンピース、あどけない首すじはどう見ても10代のもので、そのそばで揺れるお下げ髮。薄い肌の色。何もかもが深い色彩のなかで彼女だけ異質。男たちの視線が絡みつくのを当たり前のように受け止め流しながら、ふと外れない視線に気付く。視線の辿った先には華僑の青年。白い麻のスーツ(たぶん)、一分の隙もない身なりの彼もまた異質。ゆっくりと彼が近いて来るのを感じながら彼女は一顧だにしない。隣に並ぶと彼は震える手で金色のケースを開き煙草を勧める…

これぞ理想的な恋の始まり。
植民地化された大地に持ち込まれた、歴史的背景を持たない異国の建物、言葉やファッション。集まる富とそこに群がる有象無象。そのちぐはぐさ、いつまでも続かないとどこか本能的に悟る人々のかりそめを楽しもうとする気分が生み出すその退廃感。

植民地でのフランス人と中国人の出会いだから、肌にまとわりつく暑さで溶けてしまいそうだから、ハッピーエンドに向かわない二人だから。その恋の舞台演出として最高のロケーションであり、最初に戻ると、それを魅惑的と表現することがよくわかる。

そして長くなりましたが…ベトナム旅行に行くんです、初ベトナム!
行き先は今注目のダナンとホイアン。映画はホーチミンが舞台なので正確とは言えないのだけど、ベトナム気分を盛り上げるための予習に数年ぶりに再鑑賞。

やはり人生にもで一度はこんな目に合ってもいいし、性的に目覚めてからすぐにこんな満たされかたをしてしまったらその後の人生はどうなってしまうのか、とか真剣にいろいろ考えてしまった…

そしてこの映画は、都内の女子校で性教育教材として鑑賞タイムがあっただとか、遊びにいった男の家にで観せられたとか(笑)私の周りにでもザワザワとした逸話を持つ。

これが自伝だという驚きと難解な文体を楽しめる原作も再読。

そして、ベトナムビールといえば333(バーバーバー)、ミス・サイゴンにキューバリブレ、コロニアル調のホテルサイゴン川を眺めながら飲む酒とそのうんちくを楽しめる本作もさらっと再読。

家の本棚にある限りなくベトナム気分を味わえる本と映画で頭を切り替えて。万全で行って来ようと思う。

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