雑文「キャラクターはシナリオ仕掛けの夢を見るか」
キャラクターから小説を書くのが苦手だ。
小説を書く人の話を聞くと、結構な割合で「キャラクター」から話を作る方がいらっしゃる。キャラクターがどう動くか作者にもわからない、というようなことも聞く。
僕には出来ないなぁ。と思う。
僕の小説は、基本「設定(シチュエーション)」と「シナリオ」が99%で、キャラクターはアドリブを許されない役者のようになってしまうことが多い。
これは僕自身の好みというところもあって、設定だけで、読む前に「面白い!」と思えるような作品が好きなのだ。
例えば思いつくものであれば、ずいぶん昔だが、乙一の「暗いところで待ち合わせ」とか。
「暗いところで待ち合わせ」の設定はこうだ。
盲目の女性の家に、殺人犯として追われる男が逃げ込む。女性は盲目のため、男の存在に気づかず、男は女性に悟られないように生活する。やがて女性は男の存在に勘づき始めるが、他人の気配があることを恐れて気づいていないフリをする…という奇妙な共同生活が始まる。
もう、設定だけで面白い。ダークに落としても、感動モノに落としてもいい。この設定を考えたら勝ちみたいなものだ。
最近の作品なら、映画だが、「大怪獣のあとしまつ」とかも気になっている。世界を震撼させた大怪獣を倒したはいいが、その死体をどう処理するか…という「そこに目をつけるか!」という設定だ。すごく面白そう。
(ただ、どうにも酷評ばかりが聞こえてくるが…)
話を戻すと、そのような魅了的な設定を思いつかないと、なかなか物語が進んでいかない。
僕の作品で一番読んでいただいている「灯りに向けて進め」なども、発光人間という存在がいたら、その世界でどのような立場だろうか、どんな性格のキャラクターだっ
たらストーリーが輝くだろうか、という方が先だ(この場合、設定自体がキャラクターと直結しているが)。
作者としては時々、キャラクター達に「悪いね」と思ったりもする。
僕が勝手に考えた設定やシナリオのために、苦労させたり、時は殺されてしまったり。これはもう、キャラクター達からしたら作者のエゴに付き合っているだけだ。
そんな想いもあって作ったショートショートが、「想像の街」と「想像の街・因果」だったりもする。ネタバレになるので詳しくは言わないが、キャラクター達への懺悔の気持ちもあって書いた作品だ。もしお暇があれば、ぜひ一読。
(了)